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学校が終われば急いで明のお迎えにいき、仕事に出た母親の代わりに慣れない家事をしなくはならない。不安を募らせ、ぐずぐずと泣く弟を前に、癇癪を起こして手を出してしまったこともある。どうして自分だけがこんな思いをしなければいけないのだろう。同級生たちは授業が終わればバイトや遊び、部活動に楽しそうで、なのに自分だけがこんなに疲れている。不公平だ。
それでもある日、のぞちゃん、のぞちゃんと自分の服の裾をつかむ明を見ていたら、希は泣けてきた。いきなり兄が泣いたことに、驚いたように一緒になって泣く弟を前に、希は自分が変わらなければと決心した。留守がちな母の代わりに、自分がしっかり弟の面倒をみなければと。
「ときどき同期のやつには揶揄われたりしてさ、正直恥ずかしいんだけどさ」
「別にいいんじゃないのか。そんなことをバカにするようなやつは勝手にさせておけばいい」
びっくりして奎吾を見ると、男はグラスを傾けていた。目が合って、何だという顔をされる。
胸の中がじわっとうれしくなった。奎吾が本気で言っていることがわかったからだ。
希はえへへと笑って、グラスに口をつけた。気をつけていたのに、それでついつい飲み過ぎた。気がつけば頬のあたりが熱を持って、頭の中がふわふわする。なんだかすごく楽しい。おい、お前酔ってないかという奎吾の言葉も耳から素通りした。
「あんたは? あんたはどんならった?」
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