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掠れる声でどこか苦しそうに囁かれて、希は首をかしげた。
どうしてそんな苦しそうなの?
嫌なんて気持ちはこれっぽっちもなかった。まるで傷ついた子どものような奎吾を、希は慰めたくなる。大丈夫だからと。それでポンポンと奎吾の頭を軽く撫でると、きつく身体を抱きしめられた。
口の中で逃げ場を失った舌を奎吾の舌に絡め取られ、希は思わず縋りつくようにその手を彼の背中に回す。耳元で、くすりと奎吾が笑う気配がした。希はわずかに顔を赤くした。いったん身体を離し、むうっと奎吾を睨む。
「なんだ?」
眉を顰める奎吾の服の裾を引っ張り、希は自分のほうへと引き寄せた。驚いたような表情を浮かべる奎吾が目の端に映って、少しだけ小気味よく思った。柔らかなお菓子みたいな女の子とは違う奎吾の唇に自分の唇を押し当てると、その隙間からそっと舌を滑り込ませた。ぴちゃぴちゃと犬が舐めるようなキスをする。男相手にキスをしているのだということは忘れていた。ただ、ふわふわとした頭で、夢の中にいるみたいな心地よさを感じていた。希はくふふっと笑った。けれど希が余裕を持っていられたのはそこまでだった。
「うあ……?」
たちまち奎吾の舌に絡め取られるように、再びアドバンテージを奪われる。
奎吾のキスは巧みだった。もちろん希だってキスはおろかそれ以上の経験だってある。けれど、キスとはこんなに気持ちのいいものだっただろうかーー。
希は無我夢中で奎吾のキスに応えた。そのとき、奎吾の手がするりと希の服の裾から入ってきた。希は身体をよじった。
「ふはっ。それ、くすぐったいって……」
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