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頭を振る希を、奎吾は寂しそうな笑みを浮かべて見ていた。その顔を見た瞬間、希は気づいた。奎吾はもう決めてしまったのだ。希の意見など聞かず、たったひとりで。
奎吾の手が希の頭をぽんと叩く。それから男の気配が自分から離れていくのを、希はその場から動くこともできずにただ感じていた。
どれぐらいそうしていただろうか。背後から「……柏木」と、ためらいがちに呼ぶ金井の声がした。持ってきたコートを希の肩にかける。
「……頼むから泣かないでくれよ」
金井に言われて初めて、希は自分が泣いていることに気がついた。希はごしと目を擦った。
俺はどうして泣いているのだろう。胸がこんなに苦しいのだろう。まるで身体の中にぽっかりと空洞ができたようだ。
「……悪かったよ」
金井はどうして謝っているのだろう。普段の希だったら、「そうだよ、全部お前のせいだ」くらいは言っているのに、まるで頭が働かないのだ。
凍えるような夜の闇に、冴えた月が輝いている。
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