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「いらっしゃいませ」
「ど、どうも」
そのときだった。希は店内の奥のほうで、アツシと呼ばれていた青年と一緒にいる奎吾を見つけた。店が騒がしいせいだろうか、顔を寄せ合うようにして何かを話している彼らの姿に、胸がぎゅっと苦しくなる。その瞬間、希はようやく自分の気持ちを自覚した。
奎吾が好きだ。
それはもはや疑いようもない事実だった。
「お客さま?」
自分に呼びかける店員の声を耳にしながら、希はアツシと一緒にいる奎吾のほうへと近づいていく。それから、いま初めて希の存在に気がついた奎吾の腕をつかむと、自分のほうへ引き寄せるようにキスをした。
「あ、あんた何をっ!? あっ、この間の酔っぱらい……っ!」
目を開けると、奎吾が驚いたような表情を浮かべて、希を見ていた。
「……嫌だ。蒲生に会えないのも、蒲生が俺以外の誰かと一緒にいるのも、嫌だ……。俺以外の誰ともキスをしないで。……蒲生は? 俺のこと、もう嫌いになったのか……?」
心臓が壊れるかと思うくらいに鳴っている。それなのに、希の全身は恐怖で冷や汗をかいていた。
くっ、と呼吸を呑む音が聞こえて、次の瞬間希は奎吾にキスをされていた。キャーっという歓声が上がる。
そうだ、自分はずっとこれがほしかった。
まるで最後のピースがぴたりとはまるみたいに、ただあふれるばかりのうれしさと愛おしさが希の胸を満たす。なのに、ふいに拘束を解かれて、希は不満の声を漏らした。
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