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奎吾が希の肩にコテンと頭を乗せた。
「くそっ。せっかく人が苦労して逃がしてやろうと思ったのに。後で後悔したって言ったって聞かないぞ」
「後悔なんかしない」
希はぎゅっと唇を噛みしめた。どうしよう、うれしくて泣いてしまいそうだ。
そんな希を、奎吾は眩しそうに見ていた。
「……いくぞ」
奎吾は希の手をつかむと、店の出口へと向かった。
奎吾のマンションへ向かうタクシーの中で、希たちは無言だった。ただ、奎吾のジャケットのポケットの中でこっそりつながれた手だけが、二人の緊張を表していた。
部屋にたどり着いた瞬間、これ以上は一分だって待てないとでもいうかのように、奎吾の腕の中に閉じこめられる。昼間留守にしていた部屋は冷えているのに、希たちだけが発情したみたいに熱かった。
玄関の壁に背中を押しつけられるようにして、奎吾にキスをされる。
「はぁ……うあ……っ」
奎吾がもどかしげに脱いだジャケットが、バサリと床に落ちる音がした。その間も、キスが止むことはなかった。
「希……。希……」
切ない声で名前を呼ばれ、希はくらくらした。いつの間にかコートも脱がされ、希が身につけているのは中に着ていた薄手の長袖シャツ一枚と、デニムだけになっていた。
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