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SS 甘い休日 1-1
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蒲生奎吾が自身のマイノリティを自覚したのは早かった。
初恋は幼稚園の年中組で、相手は二十歳過ぎの保育士だった。いまではどんな顔をしていたのか覚えていないが、ふわりと笑ったときの笑顔がやさしくて、頭を撫でてもらうとドキドキした。相当なマセガキだったように思う。
高校二年のとき、放課後誰もいない教室で、当時つき合っていた同級生の男とキスしていたのを、偶然忘れ物を取りに戻ったクラスメイトに見つかった。その日の夜にはクラス全員が知ることとなり、翌朝登校した自分の机の上に嫌がらせのように使用済みコンドームが置かれているのを目にしたときは、なんてくだらないヤツラなんだろうと呆れた。蒲生は学年の中でも目立つ生徒だったが、手のひらを返したようなクラスメイトたちの態度に、やり場のない怒りをぐっと堪えた。
付き合っていた相手は蒲生を避けるようになり、夏休みが終わって新学期が始まるころには別の学校へと転校していった。受験などの鬱屈を抱えたクラスメイトたちにとって、蒲生はストレス解消の絶好のターゲットだった。
朝履いてきた靴は放課後にはどこかへ消えてなくなり、体操服は便所に捨てられた。それでも堪えたようすもなく、飄々と過ごす蒲生の態度は、一部の生徒の気に障ったらしい。どこからか引っ張ってきたゲイ雑誌に蒲生の顔を合成し、わざわざ自宅にまで送ってくる念のいれようだ。くだらない騒ぎは当然蒲生の親の知ることとなり、それまで自慢の息子だった蒲生は単なる厄介者に成り下がった。母はさめざめと泣き、兄ちゃん兄ちゃんと懐いていた弟からはゴミでも見るような冷たい目で見られた。父は問答無用で蒲生を殴ると、お前は異常だと吐き捨てた。
一見普段と変わらないように見えてはいても、蒲生はまだ十七歳で、高校生のガキにすぎなかった。本人も気づかないうちに、内心では深く傷ついていた蒲生に救いの手を差し伸べてくれたのは、向島に住む父方の祖父母だった。
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