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夕方のオレンジは一日の終わりの合図。ゆうくんはカーテンから差し込む西日を眺める。そろそろこの茶番も終わりかな。
お互い、やらなきゃいけないこともあるし。明日は来るし。
帰るね。僕は自分から切り出す。後腐れないのが一番だ。今日だけが特異点。そういうもんだよね、こんなの。
甘ったるい感情なんか求めてない。
「帰んの?」
「帰るよ。掃除しなきゃ」
「あそ。……………」
「ゆうくんも明日は早いんでしょ」
「うん」
「うん。じゃ、またね」
「あのさぁ、」
だるそうにベッドで横になったまま、ゆうくんは僕を見る。僕は笑うけど本当は話したくない。逃げたい。
「なに?」
「………………なんか。今日、一日一緒にいてさ」
「……うん」
「なんか…………お前のこと、よくわかんなくなった」
ゆうくんは言う。わかった試しあるの? 逆に聞きたくなる。勝手に理解したつもりになってるだけだったんじゃないの。
「どういう意味?」
優しいから僕はちゃんと聞く。自分の気持ちは無視してゆうくんに付き合う。
ゆうくんは考えてから、また僕を見る。
「……………難しいこと考えんの苦手だから言うけどさ、お前、俺のことどう思ってんだよ」
ああ、ほら。
聞きたくなかった。
「…………どうって何」
「そのまんまの意味」
「………………急に言われても」
好きだという言葉が簡単に出てこない。ビビってんなよ、自分。言ってしまえ。なのに、口に出したら嘘っぽくなりそうでためらってしまう。
「…………………………………………あっそ」
ゆうくんは寝てしまう。うーん。めんどくさい。だから、物わかりいい子が好きなんだよ。楽だもん。
「何言わせたいの?」
「今言ったろ。……馬鹿かよ」
「……………」
「俺は言ったけど。お前からは聞いてない」
「………………」
わかってる。わからない。わかりたくない。
諦めて僕はベッドに腰かける。
「…………………僕も言われてないと思うんですけど」
「言いましたー」
「いつー?」
「この前。………お前無視したけど」
「無視してないよ」
「しただろ。キスして誤魔化すとかほんと最低だかんな」
「…………今またちゃんと言ってよ。そしたら答えるよ」
「は? お前が言えよ」
「なんで僕が」
「……………俺言ったもん」
「今言えって」
「やだ」
「……………………じゃ、帰る」
「帰るんだ」
「帰りますとも」
なにこの会話。笑いたいけど、笑ったらよくないんだろうな。
たった二文字を、お互い言い出せないでいる。
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