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所詮α
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「代わりの人間ですか?」
「いや、その…茜が逃げてしまったから。」
「…それで、貴方は茜さんの弟だと?」
目の前の大きな男がコク…と太い首を揺らして頷く
どうやら嘘ではないらしい。
普段は凛々しいだろう眉毛が八の字に下がっている
まるで堅気の人間には見えない彼が子犬のようにしょぼくれる
姿を見て思わず笑ってしまう。
「ふはッ…なんで貴方がそんなに申し訳なさそうなんですか?逃げ出したのは貴方のお姉さんでしょ?」
「…見合いだろう?大事な席を抜け出すなんて…」
「律儀すぎますよ。それに僕もこの見合いは強制だったので…むしろ都合がいいです」
「強制、だったのか?」
「はい、親が取り付けた形だけの見合いです。婚約する気もありません。」
「そうか…」
どこかホッとしたように見える彼
(何だ、ただのシスコンか…)
その姿を見て自分も肩の力を抜くとネクタイを緩める。
もう会わなくていいのだから。
「それで、何故貴方が来たんですか?電話の1本よこせば済む話でしょうに…」
「…俺が、会いたかったんだ。君に」
え?…
その言葉に目を見開く。
なぜ?会ったこともないΩに?…
なんだ、そーいう事か…
その瞬間雪の頭に駆け巡るのは今まで自分の出会ってきたα達
少しβやΩより出来が良いからといって
他人を見下しひれ伏せさせようとする。
雪の周りにはそんなαがごまんと居たのだ。
(…この人も俺の容姿目当て、か…何だ、失望した)
何処か他のαとは違う謙虚さや優しい雰囲気を醸し出す彼に
この人は別のαと違うのではないか、と期待していた。
そんな雪の期待も直ぐに裏切られる。
す…と雪の顔から笑顔が消えて眉間に皺がよる
そんな雪の表情を見てか目の前の男が焦りを見せた。
雪が席を立とうとした瞬間、目の前の男はなにか決心した様子でこう言い放つ
「αとΩ、ではなくて…1人の人間として君に会いたかったんだ」
その言葉に雪の立とうとした動きがぴくりと止まる
(え…?)
この人はαでは無いんじゃないか、雪は即座にそう思った。
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