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ミルクティーとキッフェルン
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「どう?少しは調子戻った?」
俺たちは今、テーマパークの中のカフェブースにいた。
「・・・ごめん、」と俺は言った。せっかく楽しみにしてくれていたのに、俺のよくわからん発作で台無しにしてしまったことが申し訳ない。
ルカは、「飲むといい。」と、紅茶が入った紙コップを差し出してくれた。
アトラクションの中は真っ暗で、隣のルカすら見えなかった。
その中で、深海の中みたいな宇宙が展開される。その中で俺たちは宇宙船の乗組員であって、イカに似た巨大生物に襲撃されるというのがアトラクションのあらすじらしかった。
途中でルカが怖くなったらしく、そーっと手を握ってきた。
「怖いからこのまま・・・」と耳打ちされて、振りほどくのががかわいそうな気もしてしまい、逆に手を握り返してあげた。
ルカの手は温かくて、滑らかで、俺はどきどきしてしまった。自分の鼓動が手を通してルカに伝わっていそうで、ひやひやした。
アトラクションの内容なんかもう入ってこない。正直、なんでこんな風に感じてしまうのか、戸惑いがあった。人とのふれあいがなさ過ぎて、俺はちょっとおかしくなってるのか?やばい、やばい。どうしよう。それだけが頭の中であふれかえっていた。
アトラクションが終わってから、俺は暫く立ち上がれなかった。
へたばってしまった俺を見て、ルカは不思議そうな様子で話しかけてくる。
「大丈夫?映像酔いした?」
違うんだ、ルカ。ごめん、お前の手を握ってたら、ドキドキしちゃって。昔好きな子に告白したことがあったけど、まるでその時みたいだった。・・・なんていうわけにもいかず、
「へいき。」と言ってふらふらと立ち上がった。それからルカの顔が、直視できない。まだ、ドキドキする。
「少し休む?」とルカは俺の顔を覗き込んでくる。
「ありがとう。あと、ごめん、つきあわせちゃって。」
俺は紅茶をすすった。冷たいものが喉を流れ込んできて、少しは動悸が収まった。
「何かゆったりしたものに乗りたい。」と俺が言うと、
「観覧車なんてどう?」とルカが言った。
「いいな。それ。」
「あとこれ、ちゃんと食べて。」
ルカが差し出したのは甘そうな菓子だった。
「これなに。」と聞くと、ルカは
「キッフェルン。」と答えた。
食べてみると、甘そうな匂いの中に、アーモンドのようなフレーバーを感じる。さくさくしていて旨い。
どうやらルカは、俺の異常事態の原因を貧血だと思っているみたいだった。
「ルカも。」と半分差し出すと、ルカはぱくッと食べた。
「おいしいね、これ。」
「だろ?」
ルカの柔らかい笑みに釣られて、俺も笑った。
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