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ラーメン
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結局その日は、二人で本屋へ行った。ビル全部が本屋というとてつもない店に行き、俺は大興奮していた。
SFゾーンへ行ったときには、俺は気持ちが昂ぶりすぎてルカに苦笑された。
「ドッグランに来た犬みたいだね。」と言われ、ちょっと恥ずかしかった。
帰りにルカが寄りたいと言うから、調理器具の専門店に寄ったが、そのときは苦笑する側とされる側が逆転した。
最終的に、放っておいたらその場にずっといそうなルカの襟首を掴んで店から引きずり出した。
「昼、何食べる?」
しれっと正気に返ったルカに聞かれ、俺は答える。
「ルカの作ったもの。」
「え~、・・・じゃあ、作るの手伝って。」
ルカのアパートの近くにあるスーパーで、俺たちは買い物をした。ルカの買い物は合理的で、無駄がなかった。
「あ、これ安い・・・今日はラーメンにするけど、いい?」
「作ってもらうのに文句とか言わないよ。」
買い物をしている間、俺は思った・・・こうやって、いつか、一緒に暮らしたり、とか。できるだろうか。できたなら、いいな、なんて。
家に帰ってから、遅い昼食になった。茹でるタイプのインスタント麺に、ルカの作り置きの野菜をたっぷり入れ、高そうなチャーシューを載せていただく。
どこにでも売っている普通の麺が、一工夫で栄養満点のラーメンに早変わりだ。
「うわ、うまそう。」
「なんと、味玉もいれちゃいます。」
これ自分で味付けしたんだ、と、ルカが茶色の味玉を割って入れる。
黄身の色が、食欲をそそった。
「「いただきます。」」
湯気を立てているラーメンは、ちゅっるっと喉を通って腹を満たしていく。
麺と絡めて、野菜も食べる。しゃきしゃきとした食感に、あのなんともいえないスープの味が混ざる。
半分くらい食べたところで、チャーシューに噛み付いた。口の中でとろける肉と脂肪。うますぎる。味玉の黄身がとろっとしていたので、スープに溶かした。白身の弾力を楽しみながら、最後に麺と絡めて一口、二口。
あっという間に食べ終わってしまい、名残惜しくてスープも飲む。
「あー、終わっちゃった・・・もっと食べたい。」
そんなことを言う俺に
「太るぞ。」とルカは言いながらまだラーメンを食べている。
その口元を、箸を扱う手を見ていたら、昨夜の色々が蘇って来そうだったので、俺はさっき買った本を読み始めた。
ルカもやがて食べ終わり、暫く洗い物やら風呂洗いやら、家事をしていたが、全部終わると俺に抱きついてきた。
「ハルー、家事終わった、誉めてー。」
「はいはいはい、よしよしよし、」
恥ずかしいと思いつつも相手する。
背中に手を回して、ルカの頭を撫でてみた。
「もっとしてー。」
と、ルカは頭を俺の胸にぐりぐり押し付けてくる。俺より高いはずの背を縮めるみたいにして、ぎゅうぎゅうと懐に入り込んでくるルカは猫みたいだ。
「もっと撫でてー。僕、ハルさんの手、好き。」
ルカは頭を撫でられるのが好きだ。俺もルカの髪がさらさらしていて触り心地がいいので、ぼんやりと頭を撫でながらまた本を読みはじめた。
「ハルさんあったかいね、手。」
ルカの声が眠そうだ。時々俺をさん付けで呼ぶのは、何なんだろうか。
「ルカは全身があったかいな。子供みたいだ。」
さっきからルカは、俺が本を持ってない方の手を握って、肉付きや骨格を確認するみたいにぐにぐにしてきていた。
俺はベッドにもたれかかっている。俺の伸ばした足に体を乗せてきているルカの体は温かい。梅雨に向けて少しずつ崩れてきた天気の中で、ちょうどいい湯たんぽだった。
「結局なんの本買ったの?」
「やっぱSF。」
「ハルは一生SFしか読まなそうだよね。」
「そんなことないよ、推理小説とかも読む。」
「へぇー。犯人わかる人?」
「いや、わかんない。」
今日ぐらいルカとゆっくりしたかったのだけれど、どうしても読みたい本を見つけてしまったのだった。ルカは俺の性格をよく知っているからか、あまり邪魔になる干渉はしてこない。
「・・・眠いのか?」
「昨日、ハルさんが寝た後も僕は寝れなかったの。興奮して。」
「・・・人が横にいると寝れないのか?」
「ちがうよ、・・・好きな人が隣で寝てたから寝れなかったの。」
「・・・こじらせてるな。」
「うん・・・でも、今は寝れる気がする・・・」
会話しているうちにルカは寝てしまった。俺はルカを結構苦労してベッドへ運び、読書を続けた。
暫くすると、少し肌寒くなってきた。
天気予報の情報よりも早くやってきた雨の音がする。
俺は、干してあった洗濯物を慌てて取り込んだ。
ルカの私服、店の制服に、下着。丁寧にたたんで積み重ねる。
雨の音があたりの音をかき消して、まるで二人しか世界にいないみたいにい、静かだ。
ルカの寝顔を見る。
・・・ああ、このまま一緒にいたいな、と思った。
このまま、ずっと一緒にいたい。
ベッドに入って、ルカの体温を感じていた。
どくん、どくんとルカの鼓動が規則正しく脈打つ。
ルカが起きたら、俺はこの部屋を出なくてはいけない。
明日は大学で授業があるし、バイトだってある。
でも、もう少しこのままでいたかった。
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