アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
レモンアイスクリーム
-
じゃあね、と笑って分かれて帰宅したけれど、俺は心中穏やかじゃなかった。こんなにも強く感情が動いたのは、久しぶりだった。
俺は、自分の感情とは思えないそれに、戸惑った。
こんな気持ちのまま、ルカに会えない。会ったら何をしてしまうかわからない。そう思った俺は、もうルカと会うのはやめようと思った。
こうして再び、ルカと会う前の生活が始まった。
生活は単調だ。
起きる、大学に行く、バイトをする、小説を描く、寝る、その繰り返し。
日常からルカを締め出しても、あいつは時折夢に出てきた。俺は、そういう夢を見た日は、寝起きにルカのことを思い出したりした。
もうここまで来ると、誤魔化しようがない。なぜかわからないが俺はルカのことが好きなのだ。いや、よく考えたら、好きな理由とかは結構思い当たった。ただ、それは友人として敬愛に値する理由として考えていた。
でも、ルカが誰かと恋愛をすると想像したら、湧いてきた感情はルカに対する羨望と言うよりは、ルカに愛情を注がれる人間への嫉妬に近かった。だめだ、想像しただけで胃が焦げ付きそうになる。ふとした瞬間に、ルカとの思い出が浮かんできて泣きたくなる。あの笑顔が他の人間に向けられることが、嫌だった。
ある日、ルカからSNSで連絡が来た。
「新作のアイスクリームが出来たから食べにおいで。」
約束の日が来た。
俺は、嬉しさと恐さが混ざったような気持ちで店のドアを開ける。
嬉しさはルカと話が出来るところから、恐さは、もしルカの恋愛が成就していたら、俺は落ち込むような気がしたからだ。
ドアを開けるなり目がルカの姿を探した。そして、その隣にいるかもしれない女の子の姿も。
「ハル、」
自分の死角から飛んできた声にびっくりした。ルカは、俺のすぐ横にいた。
「ル、カ、・・・」
「どうしたの、びっくりしてる?」
「うん。・・・」
上手く喋れない。顔の温度が上がるのを感じる。
「今日はありがとう。」
「ああ・・・」
ルカは穏やかに微笑む。対して、俺はまるで今日始めて自分以外の人間に出会った人間か何かのように、果てしなくぎこちなかった。
「今日、なんか忙しかった?」
ルカは、俺の心の中などわかるはずもなく自然に話す。俺は何を話せば良いかわからなくなって、ルカの顔を黙って見ているだけだった。
「別に・・」
沈黙が続く。ルカは俺の顔を見て、へにゃっと笑った。
「わかった、小説書くのに徹夜でもしたんでしょ。」
徹夜したって名作は出来ないぞ、と言い残し、軽やかにキッチンへ行ってしまうルカ。違う。俺は、・・・確かに最近、ろくに寝れてないけれど。
もっとちゃんと話がしたかった。
最近会ってなかったせいか、本当に話し足りない。
でも、ルカの顔を見るたびに言葉が頭の中でぐるぐると渦になり、しっかりした日本語にならない。
しかも出されたレモンアイスクリームは美味しくて、語彙力が更に削がれた。
結局、ルカの恋愛については何も聞けなかった。他愛ない話をして、それで終わり。
嫌だ、このままは、嫌だ。
俺は、気付いたら思い切ったことを言っていた。
「今日、家に泊めて。俺、話し足りない。」
ルカはちょっと考えたが、
「僕もそう思ってた。明日休みだし、おいで。」
と言ってくれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 15