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家に帰って、鞄からさっきのリストバンドを出す。
開けてもいいのかな?一応、誕生日まで開けない方がいいのか、なんなのか。
「くろこー」
ラッピングされた袋を睨みつけているとどこかから声がした。ぐるりと部屋を見渡す。
「え?」
空耳、空耳。じゃなかったら、怖い。
「くーろーこー」
え、嫌ですよ。こんな季節に怪談とか、え?ええ!?もう、どこも見れないじゃないですか!ぎゅっと、光も入らないように目をつぶる。
「……」
「くろこ、くろこっ!!」
「……あれ、たかおくん?」
聞き慣れた声のような気がする。というか、真横から聞こえてる?
ぱっと右を見る。
「高尾くん?!」
えへへ、と笑った高尾くんがすぐ真横にいた。
「やっと、気付いてくれたぁー。もー、オレ、疲れちゃった」
「お久しぶりです」
「えー?この間、遊んだばっかじゃん!」
「そうでしたね」
いや、おい、そうじゃないだろ。
「あ、気付いた?そう、オレ、死んだんだよね!」
おいおいおい、じゃあ、何?
「幽霊だよ☆」
「は?」
ボク、頭おかしくなったかな。多分、そうなんだな。よし、寝よう。
「だーめっ!」
目の前に高尾くんの顔が迫る。
「え?ええ??!」
「いったん、落ちつこーか?」
「はい」
高尾くんの笑顔を見ると落ち着く。
「照れるなぁ」
「え?あのー、考えたこと筒抜け、みたいな?」
「みたいな、みたいな!」
彼はさっきなんて言った?いい笑顔で幽霊とか言い放ってなかったか?
足!足ある?!
「足ね、普通にあった」
「え。…………すみません。いろいろ説明してもらっていいですか?」
「うん、いいよ!むしろ、聞いてもらえなかったら困るし!」
彼の話をまとめると、成仏できなくて、いろいろあってボクにだけ見えるし、ボクの思ったことが聞こえる。それだけらしい。いろいろっていう部分は詳しく教えてくれなかったけれど、よくある話のように未練があるらい。(よくあるって、小説とかの話だけど)
「その未練をどうにかすればいいんですか?」
よくある話なら、ボクは高尾くんの未練をなくすために手伝うのが筋だろう。
「うん、そゆこと!……のはず」
「はっきりしてくださいよ」
「だって、分かんねーんだもん」
ぷうと頬を膨らませた高尾くん。
「いいでしょう。未練ってなんなんですか?話はそれからです」
「…………言わなきゃダメ?」
(ボクよりも身長高いくせに)下から覗きこむようにして上目遣いで言ってきた。
「それは、構わないですけど。キミが成仏できるというなら」
「成仏って、しなきゃダメなの?」
高尾くんは真剣な表情をした。あと、どこか不機嫌そうでもある。
「ダメではないだろうと思いますよ。よく分からないけど。でも、分かって言ってるんですか?キミは成仏しなければ、キミはボクとしか会話できないし、ボクにしか見えないんですよ?」
それは、相当、悲しくて寂しいことだと思うのだが。彼は、あんな姿の緑間くんを黙って見ていることしかできなくて、言葉も交わせない。緑間くんの思いを受け止めることしかできないのだ。緑間くんだけじゃない。彼の家族も同様だろう。自分の死を悲しんでもらえることはそれだけ、生きていた時に愛されていた証拠ではある。
でも、それは本当に嬉しいことか?自分の所為で涙を流している人が一人でもいることは何一つ嬉しくはないだろう。自分にとっても大事な人なのだから、尚更。
「分かってるよ、そんなこと」
「成仏したくない理由でもあるんですか?」
「あるって言ったら、どうするの」
「仕方ないですから、飽きるまで付き合うまでですよ」
拗ねたように言った。拗ねている高尾くんなんて珍しい。思わず苦笑が漏れる。
今、彼と彼の世界は一方通行で、唯一、一方通行でないのはボクだけなのだ。
ボクしかいない。
「そっか。オレ、黒子としかしゃべれないんだな」
「……!!そうでした……。ボクの思考は全部、聞こえるんでしたね」
「全部じゃ、ねーよ。オレに関することだけ」
彼には隠し事ができないらしい。
「そういうことだね☆」
「じゃあ、こうやって言葉に出さなくてもいいんですね?そろそろ独り言と言い張れる域ではないので。親に怪しまれます。
「できるよ。やってみ」
えーと、高尾くん?
「ん?」
「ほんとだ」
「でしょ?」
にこっ、とどこか人を挑発しているようなのに、安心する笑顔。
その笑顔に思わずボクも釣られて笑ってしまう。
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