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「ねぇ、黒子」
「あ、おかえりなさい。どうかしました?」
部屋で読書をしていた。高尾くんはさっきまでいなかったはずだが、いつの間にか帰って来ていたらしい。まわりに人がいる時は、声に出さずに会話をするが、二人の時は普通に声に出して会話をする。
「あ、うん。ただいま。あのさー、オレの未練、聞きたい?」
彼は、気まずそうにそう切り出した。
彼との生活にも随分慣れた。元より人付き合いの上手い彼だ。一緒にいて相手を疲れさせるようなことはないだろう。ボクは一人の時間は何がなんでも確保したい派な訳だが、彼はそういう時にはどこかへ行っていることが多くて、本当によくできた人だと思う。勉強で困っている時は教えてくれるし、彼に迷惑をかけられているなんてことは一切ない。むしろ、彼が可哀相だと思う。ボクしか相手できる人間がいないなんて。ボクは彼に助けられているが、ボクは彼に何もしてあげられないのだ。
「どうしたんです、急に」
「いやぁ、ねぇー」
「いいですよ、言いたくなければ言わなくても」
うじうじとしている彼が微笑ましい。
「いいの?」
「ボクのことでしたら、気にしなくていいですよ?」
「言いたいって言ったら、聞いてくれる?」
幽霊になった高尾くんは昔に比べて少し、しおらしい。あと、静かだ。遠慮がちでもある。それは、やはり、ボクの所為なのだろうか。
「ええ」
彼は気を遣いすぎる。たかがボクしか彼を見ていないのだから、もう少し肩の力を抜いて欲しい。ああ、ボクしかいないから念入りに気を遣うのかもしれない。そう考えるとボクと彼の関係はひどく窮屈なものだ。
「あのさ」
「はい」
「……やっぱ、まだ言えないや。でも、ひとつだけ聞いてもいい?」
俯かせていた顔を上げて、いつもの笑み。
「オレのこと、好き?」
「え?はい、好きですよ」
今更、何を聞くんだろうか。ボクが高尾くんを嫌いな訳がないのに。それは彼自身にも少なからず伝わっていると思っていたんだけど。
「うん、伝わってる。ちょっとした確認っていうか、背中押してもらいたかっていうのかな、そんな感じ」
「? キミの助けに少しでもなれたら嬉しいです」
「黒子……。笑顔、かわいい」
「どうしたんですか?!」
「ん?思ったこと言っただけだよ?いつも言ってんじゃん」
確かにしょっちゅう、可愛いだとか男前だとか容赦なく褒めてくるけど。久しぶりだったから、驚いた。早い話、彼が幽霊になってから、言われたのは初めてだと思う。
「キミに言われるとどんな褒め言葉も嫌味に聞こえるんですよ」
「黒子、ひねくれてるぅ~。オレ、嘘つかないよー?」
「もう、それが嘘ですよ。キミは悪意のない嘘であればいくらでも吐くでしょうが」
「嘘も方便って、やつ☆あ、黒子が可愛いのはホントね?」
「はいはい。ありがとうございます」
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