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彼を幽霊なんていうものにしたのが神様ならば、ボクはその神様を問い詰めたい。
彼の死はあれだけの人を悲しませた。それなのに、尚、彼を悲しませる。彼は死んでもボクのために悲しんでくれるのだ。彼は自分が悪い、と言った。彼は悪くない。
彼の未練は、ボクに告白できなかったこと。その未練が晴れる時には、どう転んだって彼にとっての幸せは待っていない。例え、振られたとしても、彼はそれでもいいと言うはずだけど、ボクに告白したことを心のどこかで後悔したはずだ。
そして、相思相愛になった今。ボクはもう死んだ彼に。彼はまだ生きているボクに。ボク等は思いを募らせれば、募らせるだけ、悲しい思いをする。その思いは相手に届くことはないに決まってる。
彼と過ごした長いようで短い一カ月と半月。
ボクにとってとても大切な日々だった。
でも、ボクはすでに自信がない。
彼は、ここにいたのに。
ここにいるって、胸を張って言えないのだ。
朧げで不確かで曖昧で。
彼が、ここにいたっていう証は何もない。
ボクの妄想、だったかもしれない。そんな類のことを言い始めればキリがない。
「高尾くんは確かにいたんです」
水色のリストバンドをはめた手首をぎゅっと掴む。
ボクは、また、泣いた。
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