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第一章 生い立ち
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僕の心の中には、いつも孤独が渦巻いていた。
それはきっと、幼少期の経験
のせいだと思う。
小児喘息を患っていた僕は、入退院を繰り返していたらしい。
僕が入院していた病院は完全看護だったらしく、お見舞いだけで親が付き添う事が出来ず、僕は置いて行かれる度に悲鳴のような泣き声を上げていたという。
なので、両親はお見舞いに行く度、帰る時に身を切られる思いをしていたんだそうだ。
言葉もまともに喋れない幼子の悲鳴は、当時の母にはきつかったのだろう。
そして僕が二歳になった時、弟が生まれた。
はっきりとした記憶は無いけれど、弟が生まれたばかりの頃、子育てと僕の看病に疲れた母を見かねて、母方の祖父母が僕を半年程だけ預かっていたらしい。
その頃から僕は、我儘を一切言わなくなったと両親が言う。
きっと、子供ながらに捨てられたと思ったのかもしれない。
僕は身体が弱かったから、すぐに熱や喘息の発作が出てしまう。
だから、二度と捨てられない為に子供ながらに必死に隠していたらしい。
見つかって、再び痛くて冷たい病院に行くのが怖かったんだろうと母が語っていた。
僕の両親は、子供を一軒家に住まわせたいと無理して家を買い共働きをしていた。
母はフルタイムで仕事をしている。
弟の章三は風邪一つひかない健康優良児だったので保育園で預かってくれたが、身体の弱かった僕はすぐに熱を出してはお迎えに来てもらっていた為、母は職を失いそうになってしまった。
又、祖父母に預けられると不安に思っていた時、僕の家の前のマンションに、神崎京子さんとあおちゃんこと、神崎葵が引っ越して来た。
京子さんはご主人を病気で亡くし、ご主人のご家族の庇護のもとであおちゃんを育てていた。なので、ほとんど家に居るという事で、僕は昼間のあいだは京子さんの家に預けられる事になった。
京子さんの息子、あおちゃんは京子さんにそっくりな可愛らしい男の子。
章三と同じ年というのもあり、僕はあおちゃんを本当の弟のように可愛がった。
あおちゃんも僕に懐いてくれて、どんな時も僕の傍に居てくれた。
「そ~ちゃ」
蒼ちゃんと呼べず、小さなあおちゃんが僕をそう呼んでは抱き付いてくれた。
京子さんもとてもスキンシップの多い人で、ことあるごとに頬擦りしたりキスをしてきた。
今思えば…熱があっても隠してしまう僕の体調を確認していたんだと思う。
京子さんは、僕と自分の息子のあおちゃんを分け隔て無く同じように接してくれた。
僕は小学校に上がるまでは、京子さんの庇護の中で生活していた。
小学校に上がると、幼稚園や保育園からの友達と仲良くしているクラスメイト達の中に、幼稚園や保育園に行っていない僕は入れなかった。
馴染めない中でも、僕は本があれば平気だった。
孤独感には慣れていて、寂しいとかも思わなくなっていた。
そんな日々を変えたのは、いつも男子から「女男」と虐められていた僕に
「お前等、こいつが可愛いのに男だからって虐めんなよ!」
そう言って助けてくれた結城大地との出会いだった。
結城はスポーツ万能で頭が良く、クラスの人気者だった。
そんな結城は、この日から僕をずっと護ってくれて、変質者に追い掛けられたり、クラスメイトから虐められる事は無くなった。
僕の中で、いつしか結城が大切な親友になっていった。
そう、あの日までは……。
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