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裏切り④
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もう逃げられないと諦めて、僕は結城の好きなようにさせるしかないと目を閉じた。
結城は僕の上半身の至る所を舐め回し、跡を着けるように時折吸い上げながら甘噛みを繰り返す。
「蒼介の白い肌に、俺の跡が綺麗に花が咲いてるみたいだ」
うっとりと結城が自分の着けた跡を指でなぞる。
そして結城の手は僕のズボンへと伸び、一気に下着事脱がされる。
慌てて逃げようと身を翻すと、結城に腰を抑え込まれた。
結城は僕の腰を軽々と引き寄せ、背中にキスを落とす。
背骨に沿って舌を這わぜ、音を立てて跡を残していく。
僕は嫌悪感にシーツを必死に掴み、早く結城が満足して終わる事を祈っていた。
すると、本来は排泄する為の部分に結城が舌を這わせた。
「え!な…何?」
慌てて振り向いた僕に
「蒼介、じっとしてて。濡らさないと怪我するから」
結城の言葉で、僕は結城が自分の身体を舐め回しただけでは満足しない事を悟った。
小さく縮こまった僕自身に結城が手を回し、やわやわと撫でまわす。
気持ち悪い行為でしか無いので、反応するはずも無く…。
結城は僕の本来なら排泄する場所に舌を這わせたまま、ずっと僕自身を刺激し続けるが、固いままの僕の身体に諦めたようだった。
すると後ろから僕を抱き締めてから、ベッドマットの間に手を入れた。
「?」
お尻に当たっている結城のガチガチに怒張したモノに怯えながら、この先がどうなるのか怯えていた。
すると手に何かを持っていて、ゆっくり僕から身体を起こしたのでほっとしたのも束の間。
再び腰を引き寄せられ、お尻にひんやりとした液体を掛けられた。
「ひゃっ!」
冷たさに声を出すと、結城は小さく喉で笑っているようだった。
「やっと声を出した」
そう言って、僕の窄まりに指をねじ込んで来た。
「結城、何?やだ!止めて」
必死に懇願したが、結城は指を止めない。
普段、異物が入らない場所にゴツゴツとした結城の指の感触に吐き気がする。
指が一本から二本と増えて行き、その都度液体を掛けられる。
ぐちゃぐちゃと卑猥な音が鳴り響く部屋で、僕のすすり泣く声が混じる。
「嫌…だ、止めて。結城、お願いだから…」
必死に訴えても、結城の耳には届いていないようだった。
やっと指が引き抜かれた時、結城が上着を脱いでいる気配を感じた。
その時、逃げるのは今しか無いと思った。
僕は恐怖で震える声を押え、甘えるように
「お願い、顔が見えないのは怖いから…」
下半身を押えられている状況で、必死に訴えた。
すると結城は嬉しそうに笑顔を浮かべ、軽々と僕の身体を翻す。
しかし、僕が逃げないようにすぐに上に覆い被さり、キスをして来た。
僕は頭をフル回転させて
結城の首に手を回しキスに応えるフリをした。
「蒼介、俺…もう…」
荒い息を吐きながら呟いた結城に、僕は小さく頷く(フリをした)。
すると結城がズボンを脱ぐ為に、自分のズボンに手を掛けた瞬間、僕は全力で結城の腹にケリを入れた。
完全に油断していた結城のみぞおちに見事入り、僕は必死にベッドの下に落とされていたパジャマのズボンをはき、着て来た私服と荷物を手に結城の家を後にした。
どうやって帰宅したのかは覚えていない。
ただ、結城の部屋を飛び出す時に、苦しみながら
「蒼介!」
と叫んだ結城の声が耳に残っている。
自宅に戻り、震える手で鍵を開けて中に入った。
その瞬間、胸の中は絶望でいっぱいになった。
(やっぱり、僕を友達として見てくれる人なんかいないんだ…)
玄関で茫然としていると
「兄貴?」
聞き慣れた章三の声に視線を上げる。
すると2Fから心配そうなあおちゃんが顔を出している。
(そうか…。今日、父さんと母さんは旅行に行ってるんだった。だから、僕が泊まることになって、急遽、あおちゃんが泊まってくれたんだ)
僕がぼんやりと考えていると、章三が上着を掛けてくれた。
「兄貴、風呂わいてるから…」
そう言って、そっと肩を抱いて浴室へと連れて行ってくれる。
浴室に入ってシャワーを浴びた瞬間、悔しさと情けなさが込み上げて来た。
浴室の鏡に映る僕の身体には、結城が着けた跡がいくつも赤黒く残っている。
信じていたのに…。
湯舟に入り、頭まで湯舟に沈める。
涙が後から後から溢れ出し、声を殺して泣いた。
落ち着いた頃に部屋に戻るが、瞼を閉じると悍ましい感触と状況が思い出されて怖くて眠れない。身体は震え、再び涙が溢れて来る。
もし、結城が油断せずに逃げられなかったら…。
もし、逃げる計画が失敗していたら…そう思うだけで、ゾっとして吐き気が込み上げる。
そんな状態で居ると、部屋のドアが小さくノックされる。
僕の返事を待たずにドアが開くと、あおちゃんが顔を出した。
幼馴染のあおちゃんは、僕とは違った可愛らしい男の子だ。
母親の京子さんにそっくりで、純粋無垢な可愛らしい天使のような幼馴染。
僕と同じように、心無い奴らに性の対象として見られがちだが、あおちゃんには章三が常に着いているから僕と同じような経験は全くない。
章三は小学校に上がる頃から空手を習い始めたのだが、それはきっと僕とあおちゃんを守る為なんだと思う。あいつは言わないけど、なんとなく分かる。
そんな事を考えていると、あおちゃんが僕のベッドの中に潜り込んで来た。
「あおちゃん?」
不思議に思って見ると、あおちゃんはクリクリの大きな目で僕を見つめて
「久しぶりに蒼ちゃんと一緒に寝たいんだ、良い?」
そう言って、僕の手を握り締めた。
僕を労わる温かい手。
それはさっき経験したモノとは遥かに違う、温かさを僕の心に運んでくれた。
「もちろん」
微笑んで答える僕に、あおちゃんはギュッと抱き付いて
「蒼ちゃん、大好き」
そう呟いた。
僕より小さな二つ年下の男の子。
温もりが優しくて温かくて…安心する。
僕はいつの間にか、あおちゃんを抱き締めたまま眠りに着いていた。
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