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戸惑う感情⑥
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「きみは僕の天使なんだ…」
薄暗い陰湿な瞳。
肌に触れる不快な手の感触。
それなのに、身体は意識と反して快楽を求める。
「赤地…きみは俺の天使なんだよ」
永田先生の声と同時に、牡の匂いと悍しい記憶の数々。
無理矢理こじ開けられ、ねじ込まれた牡の塊。
頭を掴まれ、喉の奥まで突かれ
「抵抗したら殺すよ」
永田先生の声がこだまする。
「いやぁぁぁぁぁ!」
目を開けると、そこは布団の中だった。
吐き気がして、ヨロヨロしながらトイレに駆け込む。トイレに座り込み、何度も襲う吐き気に動けなくなる。
僕はもう、汚れた身体なんだと思い出す。
全身が震えて、カチカチと歯が鳴る。
「赤地さん、大丈夫ですか?」
トイレに田中さんが駆け込んで来た。
「田中…さん…?」
混乱した意識の中で、田中さんの顔を見た。
そして再び襲う吐き気。
「僕…、もう…汚れた身体なんだ…」
涙が止まらなくて、身体がガタガタと震え続ける。すると田中さんがゆっくりと僕を抱き締めて
「汚れてなんていません。誰も、あなたを汚す事なんて出来ないんですよ」
そう優しく囁いて、僕の背中を優しく撫でる。
広い田中さんの腕の中で
「殺すって…」
「え?」
「殺すって言われたんだ…。その時は怖かったけど…、死んでしまえば良かった…」
泣きながら呟く僕を、田中さんが強く抱き締めた。
「赤地さん、しっかりして下さい」
田中さんの声が遠くに聞こえる。
きっとこの先、僕にまともな恋愛なんて出来る筈が無い。
心が暗闇へと沈んで行くのがわかる。
「ぶっ殺してやれば良かった…」
その時、田中さんの低い声が聞こえた。
「あの男を、この手でぶっ殺してやれば良かった」
田中さんの吐き出す言葉に、憎悪と怒りがこもっていた。
そして僕の頬に両手で触れると
「赤地さん、ダメです。あなたがあなたを諦めたらダメです。汚れたりなんかしていません。あなたはまだ、とても綺麗です」
田中さんの涙が、僕の頬に落ちる。
どうして田中さんが泣いているんだろう?
ぼんやりと見つめていると
「すみません…、あなたを守れなかった。こんな目に…こんな酷い目には、もう二度と誰も遭わせたく無かったのに…」
悲しそうな田中さんの目から、幾つも綺麗な涙が流れて落ちる。
「どうして…泣くの?」
朦朧とした意識の中、僕は田中さんの頬に触れる。
温かい涙が僕の手を濡らしてく。
「赤地さん、あなたが泣かないから…。あなたが泣けないから、私は泣いているんです」
田中さんの声に、ジワジワと感覚が戻って来る。
「怖かった…」
ぽつりと呟くと、田中さんは僕を強く抱き締めて
「はい」
と返事をした。
「怖かった…怖かったよ…。寝るのが怖い。思い出すのが怖いよ…。助けて…、田中さん!」
しがみ付いて泣き出した僕を、田中さんがきつく抱き締める。
「もう、大丈夫です。俺が…あなたを守ります。二度と、こんな思いはさせません」
声を上げて泣きじゃくる僕を、田中さんは黙って抱き締めてくれていた。
泣いて泣いて…泣き疲れて、僕はトイレの中で田中さんに抱き抱えられていた。
「落ち着きましたか?」
そう言われて、抱き上げられて布団へと運ばれる。そっと布団に下ろされても、僕は田中さんの首に抱き付いたまま離れなかった。
「大丈夫ですよ、そばにいますから」
背中を優しく撫でられて、そっと頭に田中さんの頬を寄せられる。
僕は田中さんを見上げて、そっと瞼を閉じた。
「赤地さん…」
戸惑う声に
「お願い…全部忘れさせて…」
そう囁いた。
田中さんの手が頬に触れ、そっと唇が重なる。あんなに永田先生の時は嫌だったのに、田中さんのキスは暖かくて優しい。
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