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「一誠とは、セフレだと思ってたんだ。」
簡単に言っちゃうとね。と、笑いながら、付け加えられた。
「そんな軽いものじゃなかったはずだ,」
「一誠モテるしうまいから、俺以外にもやってる女も男もいるんだろなー。っていろいろな噂からも思い込んでいた。」
「それは違うって言っただろ。」
「うん…違うよな。」
言葉とは裏腹に颯人が俺から視線を外す。
「俺も割り切ろうと思ってたんだよ。一誠とやるの気持ちいいし、性欲も解消されてラッキーくらいに思おうとしたんだ。でもさ…」
別荘にて帰りの車が来る前に見せた表情と同じ顔をした。
「マジだったじゃん…。」
今にも泣きそうで、辛そうな―
俺の好きな颯人の顔を、直視できなくなっていく。
「マジだったらダメなのかよ…」
やるだけのセフレの方がよかったっていうのかよ…。
最初こそどうしたらいいかと思ったけれども、今は颯人を思う気持ちにもう嘘はつけない。
それは別荘で颯人と過ごしたことで確信がもてた。
颯人も同じだと思っていたのに…。
「医者になって、あの家継ぐんだろ。」
思わぬことを言われて、一瞬止まる。
そんなことが颯人との部屋解消に関係してくるほどのことだということにまだ頭が追い付かない。
「いや…医者になるかどうかは…まだわからない。」
本当のことだ。
別荘での回顧や、今回の帰省で悪いイメージこそなかったけれども、実際俺自身はっきりと決めたわけじゃない。
だから…颯人と一緒にどうするか決めたかったのに…。
「一誠、医者になった方がいいよ。首席になるって努力だけじゃどうにもならねーこともあるじゃん。お前がその気になれば、多くの人の命が救える。」
「綺麗ごと言うなって!本当によくわからないんだってば!」
淡々という颯人につい声をあげてしまう。
そんな俺とは違って、颯人は冷静に話し続ける。
「医者になったら、男となんて付き合ってる場合じゃないじゃん。跡継ぎやお前んちのことを考えたら、見合い話とかもでてくるだろ。」
颯人がそんな先のことまで考えていたことに驚かされる。
そして、なぜ俺は医者になることを無意識のうちに考えないようにしていたのか気づかされる。
「そんな親の言いなりになるくらいだったら…医者にはならない…」
そうは言ったものの、俺自身、混乱している。
颯人の目をみることもできず、自信をもって言えないでいるこの言葉に意味はあるのだろうか…。
何を言ったらいいかわからなくなり、項垂れてしまう。
「俺、この先、一誠のこと嫌いになる気がしないんだよ……」
颯人の顔は悲しいくらい愛に満ちていた。
その顔を見ただけで、別荘で通じ合った気持ちに嘘はないと思えた。
「たった数か月しか一緒にいないし、こんなことになるとは思ってなかったけどな…。」
少し照れる颯人を前に、ここがどこであれ、周りに人がいたとしても、今すぐ抱き締めたくなり手を伸ばした。
けれども、即、颯人に振り払われる。
「一誠が医者になるかどうか迷ってる間、俺はずっと不安なままだと思う。それで結局いつか女と結婚するってなったらさ…。」
颯人は先のことを見透かしたように悲し気に笑う。
「それこそ俺、立ち直れなくなる。」
それを言うと、颯人はじゃあな。と、軽くいって俺の前から去っていった。
俺は、そんな颯人を追いかけることができなかった。
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