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ありきたりではない出会い
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「じゃね」
軽く手を振り、振り向きもせず部屋を出て行く
その瞬間もすでに過去の出来事
呼吸をしながら錆びついた階段を降りた3秒前も過去
その過去に戻りたいとは思わない
未来も想像がつかなすぎて何となく笑える
「寒い」
ふと、足を止め枯れた木を見つめた
夏はあんなに生い茂っていた緑色の木々も寒そう
「俺もすごく寒い・・・かも」
体も何となく熱っぽいけどよくある事だしどうでもいい
「・・・・・・まぁ、そうだよね」
朝まで裸でいれば風邪もひくかもね
昨日の奴はかなりしつこくてうざかった
だけど、こんな真冬に外で寝たら風邪どころか息が止まってしまうかもね
でも、それでもいいかな・・・
そう、どうでもいいや
生きていても地獄
死ねば天国が待っているかも知れないしね
「最悪」
寒い上に雨とか有り得ない
俺、何か悪い事でもしたかな?
昨日だって、殴りたい気持ちを押し殺して好きなだけやらせてあげたのに
ギターが濡れないように薄いコートをかけ、震えながら信号の色が変わるのを待った
「赤・・・赤・・・赤がぼやけて見えるけど」
信号が変わる気配を感じながらその場に佇んだ
足が動かない
寒くて体も動かない
周りの景色がよく見えない
でも、音だけははっきり聞こえる
悲しいけど音だけはわかる
雨が地面に落ちる音
雨が屋根に落ちる音
車のクラクション
見知らぬ人たちの笑い声
全て頭の中でギターコードに変換されてぐるぐる駆け巡る
俺、これからどうしよう
家も無いし友達もいない
さすがにさっきまで一緒だった行きずりの男に二連荘で体を差し出すつもりはない
だけど、チケをさばかないとかなりヤバい
バンドはどうでもいい、だけどギターは好き
でも、好きなだけでは生きてはいけない事を知った
むしろ、マイナスの方が大きい
来週までに何とかしないとまたメンバーにやられてしまう
別にいいけどタダで体を弄ばれるのは嫌だ
「疲れた」
シャワーを浴びたままの体は冷え切っていた
髪も雨で濡れてしまった
ピアスが氷のように冷たい
「また赤・・・赤・・・大きな花みたいな赤」
何度信号が変わったのかな
周りの奴らはずぶ濡れの俺を避けながら信号を渡っていた
そろそろ足を前に出さないとやばいかもね
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