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俺の好きな人
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俺の好きな人が見てる先に俺はいない。この想いを伝えてはいけない。叶わない恋をしている。
「おーい隼人!夏樹〜!いってら!」
そう言ったのは近所のお兄さん、伊月さんだ。俺と夏樹は今から学校に行く所だ。
「いってきま〜す!」
夏樹は笑顔で、とても嬉しそうに返事をした。
「夏樹くんは元気ね」
物陰に隠れていた女性がひょこっと顔をだす。この人は伊月さんの恋人の春香さん。美人で優しい。ふと横を見ると、夏樹の笑顔はぎこちなくなっていた。分かりやすい。
「夏樹、さっさと行くぞ。遅刻する」
俺は夏樹を早くこの場から離してやりたいと、夏樹を急かす。
「そうだな、、じゃあな〜!」
夏樹は笑顔でそう言ったが、やっぱりどこかぎこちなかった。俺たちは二人と別れ、学校に向かった。
「しんどい、、」
「仕方ねぇだろ、確かあの二人、今一緒に住んでんだろ」
そう言ってから夏樹に追い討ちをかけてしまったことに気づく。夏樹は自分の机に項垂れていた。
「悪い」
俺の言葉はもう手遅れで、夏樹は起き上がったかと思うと拗ねたように俺を睨みつけている。迫力はない。
「いいんだよ、どうせ、叶わないなんて最初から分かってる」
そう言って夏樹は窓の外を見た。まるでそこに何かあるみたいに何かを見つめていた。夏樹には何が見えているのだろうか、鳥か、運動部の連中か、道行くカップルでも居たのだろうか。何かを見つめていた夏樹の顔は、嬉しそうで幸せそうな笑顔に変わった。俺は窓の外を見なかった。
授業の終わるチャイムがなった。次は昼休みだ。
「腹減った、早く飯食おうぜ」
前の席の夏樹はそう言うと、弁当を俺の机に置いて後ろ向きに座った。
「お前の弁当、いつも美味そうだな」
夏樹の弁当は栄養バランスもしっかりしてそうで色彩も豊かだ。めちゃ美味そう。
「別に普通だろ」
この弁当を夏樹が作ったと聞いたら、どれだけの人が驚くだろう。夏樹の見た目はというと、金髪でピアスバチバチのヤンキーみたいな見た目だ。
「人は見た目じゃ分かんねぇな」
「どういう意味だよ」
夏樹がキョトンとした顔をする。ヤンキーみたいな見た目もあいまって、アホっぽい。こいつのこういう顔を見るのが俺は面白くて仕方がない。
「何ニヤニヤしてんだよ」
夏樹が怪訝そうな顔をして言う。
「別に」
俺はそう返事をすると、夏樹のほっぺを摘んで横に引っ張った。
「ぷっ」
ついつい、笑ってしまう。
「お前なあ人の顔で遊ぶなよな」
ペチッ
夏樹が手を伸ばしたかと思うと俺に全く痛くないデコピンをした。
「仕返し」
悪戯した子供みたいにひひっと笑って、楽しそうに言うものだから
「お前うざい」
俺はそう言って目を逸らした。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「ねぇ〜夏樹くん〜!ちょっと話があるんだけど!」
放課後、夏樹は女子に呼び出されたみたいで、どこかに行ってしまった。帰るか、別に待つ必要ねぇだろ。俺は身支度を整えて帰ろうとする。
「ちょっとちょっと!まだ帰っちゃ駄目だよ、今日掃除当番!」
忘れてた、あーめんどくせえな。
「はい、ゴミ捨て行ってきて!」
さっさと捨てて帰ろう。
「こんなもんだろ」
俺は適当にゴミを捨てて、校門に向かう。さすがに、夏樹も帰ってるだろうな。
「あっ隼人やっときた!」
校門に行くと夏樹が居た。
「何でまだ居んだよ」
「何でって、待ってたに決まってるだろ」
夏樹が不思議そうに答える。こいつにとっては当たり前なのか。
「俺は普通に先に帰ろうとしたけどな」
正直に言ってみると、怒るかと思ったが全くそんな様子はなく、
「いいよ、別に。俺が一緒に帰りたかっただけだから」
何なんだこいつは、平然と言うなよ。
「馬鹿が」
「はっ!?何で馬鹿なんだよ...って何で顔背けてんだ?」
嬉しいだなんて思ってはいけない。バレるわけにはいかない。
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