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「ふわぁ〜っ、美味かったな」
のんびりと呑気に、部屋に戻ってきた男が、ソファにドッサリと身体を埋めながら伸びをした。
「………」
なんとまぁ、無防備な姿を晒すものだ。
部屋に1歩入ったところで足を止めた私は、そのだらしのない姿を睨め付けた。
「どうした?こっちへ来い」
突っ立っていないで、と手を差し出してくる男に、私はゆったりと近づく。
「んっ…?」
「覚悟っ!」
すぐ間近、男の間合いに入った瞬間に、私は隠し持っていたナイフを取り出し身を躍らせた。
「っ、っ…」
ドスッとナイフの切先が突き刺さったのは、男がするりと身を避けてしまった後に残されたクッションの綿の中で。
「ほぉぉ、中々やってくれるねぇ。食堂からくすねてきたのか」
王子様にしては手癖が悪い、と笑う男にナイフを持った手を掴まれて、悔しさに歯噛みした。
「もう王子ではないっ…」
何度言わせれば気が済むのか。
それを奪ったのはきさまだ!
「ふははっ、そうか、そうか、じゃじゃ馬だったか」
「は、なせっ…」
何という馬鹿力か。ギリギリと掴まれた手首が痛む。
「まぁ確かに恨んでいいと言ったのは俺だけどな」
「っ〜!」
「さすがにこれはやり過ぎじゃないか?」
いくら食事用のナイフでも、殺傷力は侮れない、と男は言う。
だけどそんなのは当たり前だ。こちらは殺すつもりでやっている。
「くははっ、その目。その目だ。俺が気に入った」
「きさまっ…」
「だから悠牙だってば。さぁて、これは、そろそろお咎めといくかぁ〜?」
「なっ…?」
「いい加減にその呼び方もどうにかしたいし。ナイフはさすがにヤンチャが過ぎたしな」
「な、にを…」
掴まれた手首を徐にグイと引かれ、ソファーに座った男の身体の方に引き寄せられた。
「恨んでいいし、仇討ちに励んでもいいとは言ったけどな、そう毎日毎日四六時中だと、さすがに俺も休まる暇がない」
「離せっ…何をするっ」
「ん〜?まぁ軽〜くお仕置きだな」
「なに…っ?」
「ちょ〜っと反省してもらおうな」
力に引かれるままにドサリと男の足の上に倒れてしまった身体が、グイと上から押さえつけられる。
「くははっ、王子様だもんなぁ。人様に手を上げられる経験なんてなかったよな」
「手…?」
「悪さをした子はな、ここをた〜っぷりとぶたれて反省するんだぞ」
「は…?」
尻を?
打たれる?
私が…?
「っ…」
怖い、という思いが真っ先に頭を覆った。
カラーンと手から落とされたナイフが、床に音を立てて転がる。
嫌だ…。
そんな屈辱。苦痛も怖い。
「くははっ、震えてる」
さすがの王子様も怖いのか?と、揶揄う男の声に苛立ちが勝った。
「そんなことはっ…。いいだろう!煮るなり焼くなり好きにしろ!」
カタカタと震える身体は意思の下に抑えつけた。
「っ…」
だけど、初めて受けさせられる未知の仕置きへの恐怖から、身体は勝手に強張っていく。
「ふはっ、そう力を入れなさんな。余計に痛く感じるぞ?」
ヨシヨシと頭を撫でながら、もう片方の手が上着の裾をまくっていく。
「っ…く」
まさか、衣服を剥ぎ取り、素肌を叩くつもりでいるのか。
次にはするりと緩められた下穿きのホックにギクリとする。
嫌だ…っ。
反射的に湧き上がった拒絶の言葉は、すんでのところで飲み込んだ。
「は、ぁっ、綺麗な肌だな」
絹のようだ、と呟かれ、撫でられた尻の表面に鳥肌が立つ。
「打つなら、早く打て…っ」
このように湯浴みでもなしに、他人に剥き出しの尻を晒していることなど耐えがたい屈辱だ。
それだけでももう十分な仕置きとなっているのに、これを今からさらに打たれるという。
「っ、ぅ…」
さすがは王宮中の人間を、情け容赦なく殺していっただけのことはある男だな。
その冷酷さが、こんなことを成し得るのか。
「ふっ、俺は俺に罪がないとは言わないよ」
「な…?」
「必要な犠牲だったとは思っている。だけど己の都合で他者の命を奪い去ったというのは罪以外の何物でもない」
「き、さまは…」
するりと尻を撫でる男の手が、何度もそこを往復する。
「だからおまえに恨まれることは享受する。俺が奪った命はおまえの肉親のものだ」
「きさまはっ…」
「だけどだからとみすみすおまえに殺されてやることもしないと言った」
「っ、くっ…」
「おまえが狙った命はな、新王国、国王の命だ」
「っ〜!」
それをっ、きさまが、言うのかっ…。
「確かに俺も前国王の命を狙ったな。だが当然だけど、もし失敗して捕まれば、拷問の上処刑されることを覚悟の上でだ」
「っ…」
「それだけの覚悟を持って、それでも俺たちは立ち上がったんだ。成し得たいことが、そこにあったから」
「っ、っ…」
「おまえにも、その覚悟が必要だな」
「きさまはっ…」
どうしていつも正しい。憎いのに、憎いほどにきさまが言う言葉はいつも正しい。
ぎゅっと握りしめた拳が、ブルブルと震えた。
「国王の命を狙うんだ。本来ならしくじれば極刑だぞ」
「っ…」
「まぁそれを尻叩き程度で許してやるんだ。俺ってば寛大だなぁ」
ふははっ、と笑いながら尻を撫でる男に、噛み締めた唇を震わせることしか出来なかった。
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