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妃…。妃。妃…。
「はっ?」
ポンッとようやく飛び出した言葉は、結局なんの意味もなさない疑問符だった。
「妃?」
この男は、今、そう言ったか?
ならば随分な痴れ者か、いっそ気でもふれたのか。
「私は、男だ」
たとえどんなに非力でも、前王妃似だと言われていた中性的な貌立ちをしていても。
「知っているさ」
王子様、と言われて、カッと頭に血が上った。
「だからっ、私はもう王子ではっ…」
「あぁ。だからこれからは王妃にならないか?」
「………」
だから、この男は一体全体何を考えているのか。
その意図も意味もさっぱり分からない。
「私を娶る、と、いう…の、か?」
「そうだな」
「私を…」
あぁ、だけど、にこにこと笑って頷く悠牙を見て分かってしまった。
そうか、堕ちた王国の元王子。
それを我が物に、その手の中に入れたなら、この男の力の誇示になるわけか。
堕とし辱め慰み者とすることで、男の求心力はさらに上がる…。
「政治の道具にということか」
昔、勉強中に書物で読んだことがある。
権力者がその地位を誇示するために、やんごとない身分の者を堕として手にしてみせた話を。
「はぁっ?だから、おまえはな。どうしてそんなにひん曲がって捉えるんだよ」
純粋培養かと思えば、汚い政治の世界を知っていてみせる…と言われてもな。
「私を妃になどと望む理由など」
利用価値があるから以外に何があるというのだ。
堕ちた王族を踏み潰し、従属させることで新国王の力を見せつけること以外の何の価値が。
「はぁっ。わっかんないかな。もっと単純明快よ?」
「………」
「まぁゆっくりじっくり教えていってやるか」
「何を…」
「それが分かるように、長期戦でいってやる。とにかく、王宮が復旧次第向こうに移る。そしておまえには妃になる心構えをしてもらう」
「っ、っ…」
どうせ私には拒む権利も抗う力もありはしない。決定事項の男の言葉だ。
「きさまは…っ」
我が仇の男なのだ。
そんな男のものになる。
「っ…」
悔しさと屈辱で、唇を強く噛み締めながら、それでも返事だけは決してしてやらないと、私は男をきつく睨みつけた。
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