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「ふっ、相変わらずのその目だ」
勇ましい、と笑う男は何が愉快なのか、目を弧にしてにこにこと笑う。
「まぁいい。今はちょっとおまえの様子を見に来ただけだ。何か不自由はないか?腹は空かないか?」
昼飯はもう終わったと言う悠牙に、そういえば朝からの仕置き後、すっかり寝入ってしまっていたことに気がついた。
気づいたところで『ぐぅ〜っ』と派手に腹の虫がなく。
「っ…」
「ふははっ。そうだよなぁ?分かった。すぐに昼飯を持って来させるから」
ポンッと頭を軽く撫でた悠牙が、くしゃりと破顔した。
「っ、いい。私に食事など…」
「だから、俺はおまえを飢え死にさせるつもりはないし、おまえは次期王妃になる者なんだぞ」
「そんなものはきさまが勝手に…」
「はいはい、分かったから。とりあえずここで大人しく待ってろな」
って、何がポンポンだ!
侮り子ども扱いをして!
「きさまは…」
「あ〜、俺はまだちょっと仕事があるから。悪いけど、1人で飯食っていい子にしていろよ」
「っ、触るなっ」
「くくっ、そんなに毛を逆立てて」
子猫がじゃれても可愛いだけだぞ、とは何事か。
「出て行けっ…。出て行け〜っ!」
「ふははっ、はいはい、分かった、分かったから」
降参だ、と両手を上げて笑う男をゲシゲシと足蹴にしながら、私はとうとう男を部屋から追い出していた。
「はぁっ…」
本当に、あの男はなんなのか。
イライラして腹立たしくて仕方がない。
「ふんっ…」
苛立ちまぎれに手近にあったクッションをボスッと殴りつけたとき、コンコンとノックの音が響いた。
「っ…」
途端にビクッと飛び上がってしまう身体が情け無い。
1人、そのドキドキした心臓を落ち着かせてから、私は静かに扉に向かった。
「は、い…」
そろりと扉を開け、チラリと顔を覗かせれば、トレイに食事と思わしきものを乗せた男が立っていた。
「食事だ。入るぞ」
言うが早いか、ぐいと身体を割り込ませてきた大柄な男が、ズカズカと室内に足を進めてきた。
「おっじゃましま〜すっ」
続いてこちらは飲み物か。ポットを持った軽薄そうな男が後から入ってくる。
「どこに置く?」
「っ…」
ぐるりと室内を見回した大柄な男の方が、私に視線を合わせてにやりと顔を歪ませた。
「あぁ、ここでよかったか」
ふっ、と嘲るように笑った男が、ポトリ、とトレイの上からパンを1つ床に落とす。
「うわ。いっじわるぅ〜」
軽薄そうな男の方は、それを見てクスクスと笑っていた。
「っ…」
私はギリギリと唇を噛み締めながらも、その嫌がらせと屈辱に耐える。
「ほら、食べろよ」
元王子様?と、嫌味ったらしく呼んでくる男の声が、目の前をカッと赤く染めた。
「っ…」
分かっている。私はこの者たち民衆を虐げ続けて来た悪王の息子。恨まれていて当然だ。
だからこんな仕打ちも、甘んじて受けなければならない。
「っ、いただき、ます…」
『食事を頂くときは感謝と敬意をはらうのですよ』
そう、父たちに隠れて教えてくれた尊い人は、父たちの悪行の責任を共に背負って自害したと聞かされた。
ぎゅっと唇を噛み締めて、頭を軽く下げて大人しく膝を床についた私に、男たちの下卑た笑い声が上がった。
「うわぁ、いい気味。ふふふ」
「元王子のこんな姿はスカッとするな。ほら、這いつくばって、犬のように食べろ」
ガッと頭が上から押さえつけられ、床に置かれたパンに顔が押し付けられた。
「っ…」
泣くな、泣くな、泣くな。
私はこういう扱いを受けて当然の者なのだ。
前王族唯一の生き残り。
恨みつらみを一身に引き受けて当然の身だ。
「っ、ん…」
悔しさで、流れてしまう涙をそのままに、私は必死で舌を伸ばして、この者たちが望むように、獣のようにパンを食んだ。
「あ〜あ、まったく、悠牙様は何でこんなやつを生かしたのかねぇ?」
「さてな。あの方のお考えは時々よく分からない。だけど何か理由があるんだろ」
床に這う私を頭上から見下ろしながら男たちが何やら会話を始めていた。
「理由。理由かぁ。あれか、よっぽどそっちの具合がいいとか?」
「ふっ、下品だな。まぁでも確かに顔だけはいい。中性的なこの美貌なら、いけるな」
「元王族の身体かぁ。興味はあるね」
「さすがにやめておけ。悠牙様の不興を買うと厄介だぞ」
ぐたぐた、やいやい、男たちが何やら訳の分からない話で盛り上がっている。
「でもさ〜、ほら、ちょっとだけ。どうせもう悠牙様には食われて貫通済みなんだろう?どんな具合か、少し見せてもらうだけさ」
にやり、と笑った軽薄そうな男の目が、ゾクッと嫌な予感を湧き立たせるような視線でこちらを見下ろしてきて、私は慌ててパンから口を離して後退った。
「ふふ、その怯えたような目はそそるね」
「このサディストが。悠牙様のお怒りに触れても知らないぞ」
「そう言いながら、興味あるでしょ?」
にやり、下卑た笑いを浮かべて近づいてくる男から、私は反射的に身を翻して逃げていた。
「っ、触るなっ…」
ガシッと掴まれた上着のせいで、ドタンと床に突っ伏した。
「やめろっ!離せっ…」
何がなんだか分からないが、このままされるままになっていたらまずいような気がして、私は必死で暴れていた。
「ふふ、逃げる兎を狩るのも楽しいよね」
「何をっ…離せっ、無礼者っ!」
ズルズルとズボンを引っ張られ、足の半ばまでそれが脱げてしまったところで、あまりの屈辱に目の前が赤く染まった。
「貴様らっ…」
「おやおや〜?もしかして、まだ王子様気取りでいるつもりですか〜?」
とっくに堕ちた元王族のくせに、と笑う声が耳に突き刺さる。
「離せっ!私は…」
「さてさて、ご開帳〜」
「っ…」
何故か、いつの間にか下着までもを剥ぎ取られ、両足首を掴まれて、両側に大きく開かれそうになったところで、私はこの身にどんな屈辱が降りかかるのかに気がついた。
そんな場所を晒され、そんな姿を見られるというのか…?
ぎゅぅと固く閉じた目と、絶望に丸く縮めた身体が、その瞬間が訪れる恐怖に震える。
そんなものを見て何が楽しいのかは知らないが、急所を晒すことを強いて、尊厳を奪うことは、己の優位性を示すにはいい手段だろう。
「っ…」
嫌だっ…。
たまらない屈辱と、とうとう暴かれる、という絶望が全身を包んだ瞬間。
「何をしている」
「っ!」
「っ…?」
不意に、不機嫌で冷たい声が割り込んできて、男たちの暴挙が止まった。
「弥景(みかげ)様っ!」
ハッとしたような男たちの叫びと共に、今しがたまで私を押さえつけていたはずの手が素早く離れていく。
「ふん。この惨状は…」
恐る恐る目を開いていけば、男たちは何故か床に額を擦り付ける勢いで土下座をしていて、私の方へは、冷たい美貌を冷たく研ぎ澄ませた新たな男が歩いてきていた。
「っ…」
あの、食堂にいた男の人だ…。
確か悠牙の1番側に付き従っていて、悠牙が元同志と呼んでいた男。
「お怪我はございませんか」
「っ、っ…」
下半身に纏う衣をすべて剥ぎ取られた私を一瞥してから、その男はバサリと自分の上着を掛けてきた。
「2人は出て行け。追って沙汰する。それまで悔やんで待っていろ」
「っ!申し訳ありませんでしたっ!弥景様っ」
ガバッと再び床に頭を擦り付けた男たちが、次には転がる勢いで部屋を飛び出していく。
「みかげ…?」
呆けたようにその男を見上げてしまった私に、その冷たい美貌が面倒そうに向けられた。
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