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それから、悠牙に強引に夕食に誘われて、嫌だ嫌だと喚いたら、部屋で2人で食事をとれることになって。
それはそれで嫌だった、と後悔したのも束の間に、もう寝るぞと悠牙の寝台に引き摺り込まれた。
「はぁっ…」
この男は一体どこまで豪胆なのか。
はたまた一体何を考えているのか。
「私がきさまの命を狙う者だと、ちゃんと覚えているのか?」
その私を腕に抱き込んだまま、よくスヤスヤと眠れるものだ。
「重い…」
ぎゅぅ、と抱きつくように回された腕が重くて、私の方は眠るどころではなかった。
「………」
私は巻きつく腕を無理矢理外し、悠牙が起きてこないことを確認してから寝台を抜け出す。
遠く窓の向こうに見える王宮は、夜通し作業でもしているのか、かがり火が煌々と焚かれ、明るく建物が照らし出されていた。
「明日か…」
あそこに再びこの身が移される。
「弔うことは許されるだろうか…」
黒い喪服で向かいたいと言ったら、悠牙は怒るだろうか。
「国王陛下のご帰城だものな…」
きっと華々しく向かわなければなるまい。
「はぁっ…」
気が重い、と思いながら、窓の外をぼんやりと眺めていたら、両脇からヌッと手が差し出された。
「っ?!」
「眠れないのか?」
「っ、きさま…」
ぎゅぅっとそのまま後ろから抱きつかれて、伸し掛かるように体重を掛けられたから堪らない。
「っ…」
身動きが取れなくなり、私は重い身体を支えながら必死で足を踏ん張った。
「くすくすくす、俺が子守唄でも歌ってやろうか?」
楽しそうに笑いながら、耳元に吹き込まれる声にゾワゾワとする。
「必要ないっ」
「まぁそう言わず」
抱きつかれた身体がそのまま、今度はズルズルと寝台の方へと引き摺り戻されていった。
「っ〜〜!」
本当に、この男、どうしてくれようか。
今度は今度こそ本当に、寝首を掻いてやるぞと睨みつける。
「ふわぁぁっ、明日は、朝、早いぞ…」
「………?」
「だから……ねむ…」
「はぁっ?おい。きさまっ。おい、悠牙!」
ボスンッと寝台の上に、私を抱えたまま倒れたかと思ったら、悠牙が再びスヤスヤと寝息を立て始めた。
「何なのだ…」
まさか今の一連の行動は、寝ぼけたまま行われたとでもいうのか。
「きさまは…」
人を勇ましいだなんだと言うけれど、きさまの豪胆さと呑気さはなんなのか。
「これが近衛隊長さえ秒殺する男だと?」
とても見えない、と思うのと同時に、そっと触れてみた手は確かに硬く厚く、相当な鍛錬を積んできた者の証だとも思う。
「あの見事な剣さばきは、やはり」
大量の返り血を浴びて、綺麗な黒髪さえもどす黒い血で染めて、それでも凛と立っていたこの男の振るう刃は、どこか美しかった。
躊躇いを見せなかった男の刃はきっと、私の両親の命を一瞬にして奪ったのだろう。
「それが優しさだとは思わない…。思いたくはない…」
だけどそれほどの剣の腕前を持つ人間が、楽に殺すも苦しませるも、剣の振り方1つで自由自在だということも分かるのだ。
「本当に、何なのだ…」
きさまが分からぬ。
分からぬことばかりで、苛々する。
そしてそれを分かりたくない。
「父上…。母上…」
はらりと溢れた涙は頬を伝い、寝具の布に吸い込まれていった。
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