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「彩貴っ!」
キンッと弾かれた剣が飛ぶ。
「ゆ、うが…?」
ひらりと華麗に馬を乗りこなし、私を囲んだ男たちの間に突っ込んできた悠牙の鮮やかな太刀が舞った。
「っな!何だこいつっ…うわぁっ!」
「こいつっ!うがっ…」
「だぁぁっ!ぐぇっ…」
突然の闖入者に向き直った男たちが、斬りかかっていっては次々と返り討ちにされていく。
「クソッ、かかれっ。かかれぇっ…うぐっ」
「つよ…」
ドスッ、バキッと男たちに確実な一撃を加えていきながら、悠牙は息ひとつ上げずにそこにいた。
「っ、クソッ…」
とうとう立っているのは悠牙と男たちの頭らしい者の2人きりになった。
「さて、どうする?」
ニィッと口角を上げた悠牙が、剣先を真っ直ぐに男に向けていた。
「ッ、ッ…」
一分の隙もない構えに、男がなんの手出しも出来ずにジリジリと後退っていくのが見える。
「投降しろ」
纏う空気からして圧倒的に勝っている悠牙の、凛とした声が響く。
それを受けて、男がジリジリと後退しながら、不意にチラリとこちらに視線を流した。
「っ…」
まずい、と思ったのは一瞬だった。
「彩貴っ!」
人質にされる、と察したのは私だけではなかったようで。
瞬間的に焦りを浮かべた悠牙の顔と、男の手から逃れようと膝に力を入れた私の目が合う。
「っ…」
あぁ、すまない…。
だけど私の疲れ果てた足での瞬発力では、男の動きに対してあまりに鈍い。
「ふっ、愚かな」
ザンッ、と不意に視界に銀色の光が煌いて、今まさに私を捕らえようと伸びていた男の手から血飛沫が散った。
「え…?」
「うぐぁぁぁっ!」
ピッと剣に伝う血を振り払った弥景が、呆れを含んだ冷淡な顔をしてそれを見ている。
「っあ…」
「ご無事ですか、彩貴様」
剣を収めた弥景に問われ、私は引かれるように頭を上下させた。
「それは何よりです」
「あぁ、弥景、間に合ったか」
良くやった、と笑う悠牙が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「うぁぁぁっ、手がっ、俺の手がぁっ…」
手首から先をあっさりと斬り落とされてしまった男が、噴き出る血を滴らせながら喚いている。
「うるさいなぁ。ちゃんと止血をすれば死なないよ」
弥景、と呼びかける悠牙の声に、スッと動いた弥景が男の首にストンと手刀を入れた。
「ぐ、は…」
途端に白目を剥いてドタッと倒れていった男の腕を、シュルリと持ち出した布でキツく縛っていった。
「彩貴。大丈夫か?」
ふわり、と頭に触れてくる悠牙に、コクリと機械的に頷く。
「はっ、はっ、はっ、悠牙様ぁぁっ、弥景様ぁぁっ、待って下さいよぉっ、全然追いつけな…って、え?もう終わってる?」
バタバタと、また何人かの男が馬から降りて駆けてきて、私はぼんやりとそちらに目を向けた。
「おまえらな…遅いよ」
「いや、悠牙様たちが早すぎるんです」
「こんなんでウチの近衛隊は大丈夫かぁ?」
「そうおっしゃる悠牙様こそ、国王陛下が最前線で、単身敵に突っ込んで行かないで下さい!」
「こんな雑魚、寝てても勝てるわ」
シッシッ、と煩そうに後から来た部下たちらしい男たちを追い払い、ひょいっと私を抱き上げた。
「っ、自分で立てる!歩ける!」
その扱いが恥ずかしく腹立たしくて、ジタバタと暴れた私に悠牙の鋭い目が向いた。
「こンのじゃじゃ馬が!大人しくしていろ」
「っ…」
ガツンと怒鳴られて、思わずびくりと抵抗を止めてしまう。
「ったく、勝手に王宮を抜け出して、こんなところで盗賊に絡まれていやがって…」
「それはっ、私のせいではなくて…」
「おまえ、王宮に帰ったら、覚悟しておけよ?」
「っ!私が、何故っ…」
理不尽だ。これは不可抗力なのだ。
文句を言おうとした口は、悠牙がひょいと私を自分の馬の上に抱え上げてしまったことで、閉じざるを得なかった。
「おい、待て。私の馬は…」
自分で乗って来たのだ。
自分で乗って帰る。
「ふっ、鞍も乗せていない裸馬に?その疲労した身体で乗って帰るだと?」
却下だ、と冷たく告げた悠牙が、私の後ろにヒラリと跨ってきた。
「っ〜!」
この男は…。
こんなに独善的で、偉そうな男だっただろうか。
「弥景。彩貴の馬と、この者たちの捕縛と連行は任せたぞ」
「分かりました」
スッと頭を下げた弥景が返事をするのが早いか否か、悠牙は馬の腹を蹴って、パカパカと足を進ませ始めた。
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