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そうして食事を済ませ、湯浴みも終えた私は、月明かりが差し込む居室に戻り、寝台の側へ寄った。
キシ…と乗り上げる寝台の右側半分には、すでに悠牙がごろりと寝転がっている。
「はぁっ。何故、私がきさまと同じ寝台で休まねばならないのだ」
ここは、私『たち』の居室で、決して私の自室ではないとは言われていたが、1つの寝台に2人で寝るというのがどうにも心地が悪い。
「あん?……別に、夫夫(ふうふ)なんだから構わないだろう?」
「夫夫なぁ…」
まだ立后の儀も婚儀もしていないがな。
「ぷくくっ、それとも何だ?俺と同衾だと、意識しちゃって眠れないのか?」
ニヨニヨと、揶揄い顔の悠牙がこちらを向いた。
「どっ…わ、私は別に意識などっ!ただ、狭いし休まらぬのではないかと…っ」
「狭い?」
どこが、と呆れた目をする悠牙には、確かに。小柄な自覚がある私なら3人分、悠牙のようながたいのいい成人男性でも余裕で2人は寝転がれるサイズの寝台に、使う発言ではなかった。
「それは、その…」
ちょっと間違えたが、と言う前に、悠牙が「ふぁぁっ」と大きな欠伸をした。
「悠牙?」
「あぁ、悪い。さすがに眠いわ…。ほら、早く入ってこい」
言いながら、すでに私の腕を引いているのは誰だ。
ぐいっと引き寄せられる力そのままに、私はコロンと悠牙の腕の中に閉じ込められてしまう。
「おいっ…」
「暴れるなって」
「ならば離せ…っ」
「酷いなぁ。疲れている夫に向かって」
「夫って…。しかも何が疲れているなどと…」
「ん〜?まぁね」
「悠牙?」
らしくない小さな呟きが、ぽつりと悠牙の口から溢れたのを聞き、私はストンと抵抗をやめた。
「俺さ…」
「なんだ?」
「俺は、元々文官には向かないんだ。身体を動かしている方が性に合う」
「きさま?」
ぽつりと呟きを落とす悠牙は、まぁそんな感じではあるが…。
「王と、されてしまったからには、机上のお仕事もしなくちゃならないのは分かっているけど…」
話の途中でも、ふぁぁっと堪えきれないらしい欠伸が上がる。
「きさま…」
「さすがに疲れたな、って」
あはは、と笑う悠牙の言い分は、確かに私にも分かった。
確かに、この男は弥景などとは違って、1日中机の前に縛り付けられて、書類と睨めっこするような仕事は苦手そうだ。
けれど。
「それでもきさまは、国王となったのだ」
無理矢理担がれようが、流れだろうが。
私の父と母を討ち、この国の新リーダーとなったのはきさまなのだ。
「あぁ…」
だから、弱音などは吐かせない。
「おまえは厳しいな」
ふはは、と笑う悠牙の吐息が首筋にかかる。
その声は確かに隠しきれない疲労を含んでいて、私はくるりと悠牙の方へ寝返りを打った。
「だがな、悠牙」
だけど、孤独にもさせない。
孤高など、陽のように明るく朗らかなきさまには似合わないのだから。
「私が、すぐに。早く政を手伝えるようになって、きさまを助けてやる」
「へぇ?」
「それに、弥景もいるだろう?南雲だって」
そして何より、きさまには、きさまを慕う民が大勢いるではないか。
「桧央も」
きさまを慕い、きっときさまを全力で支えようとするだろう。
「だから、今は……」
「彩貴?」
「とりあえず眠れ。眠って、休んで、また明日から執務に励むがよい」
そうだ。寝て、疲れを取って、明日からまた立ち上がれ。
そっと伸び上がった身体の中に、きゅっ、と悠牙の頭を抱え込めば、スンスンと鼻を鳴らす悠牙がクスクスと笑った。
「何?俺を慰めて癒やしてくれるって?」
格好いいな、おまえ、と笑う悠牙が、けれども私の身体をズルズルと下へ引き戻してしまう。
「だけどやっぱりこっちだろ」
「ふ…私はきさまの抱き枕ではない」
けれど、すっぽりと収まる悠牙の腕の中は、悔しいがなんとも心地よくて。
「まったく……んっ?」
「ん〜?」
いや、ちょっと待て。
「き、さま…」
「んん〜?」
「ん、ではなくて…っ」
こ、これは…。
グリッと押し付けられた悠牙の身体の、その、私に当たっている中心部が…。
「何故硬い…」
「ん〜?」
「だからっ、ん〜ではなく!」
これは、その、勃起というやつでは…。
「あぁ、コレ?そりゃ、好きな子にこうしてくっついていれば、普通なるだろ」
「っ、好っ…」
「くくくくっ、心配するな。別におまえを無理矢理どうこうするつもりなんかないから」
安心していい、と頭をポンポン撫でられて、「ほら、寝よう」と目を閉じる悠牙の吐息は、安定していて静かだ。
「なっ、無理…って、いや、でも、悠牙っ?」
「いいから。大丈夫。放っておけばそのうち治まる」
だから気にせず眠れ、と言われてもな…。
「悠牙」
「ほら、俺の気が変わらないうちに」
「だが…。っ、私が、その…して、やろうか?」
きさまはいつも私にするし。
「え〜?何なに?フェラでもしてくれるって?」
くくくくくっ、と笑う悠牙の目が細められて、私をゆるりと見下ろしてくる。
「ふぇら…?」
何だそれは。
相手のモノを、その、擦って出させてやることをそう言うのか?
ぎゅっと眉を寄せて悠牙を見上げれば、ふははっ、と笑った悠牙が、ぎゅぅっと私の頭を胸に抱えてしまった。
「うぷっ…おい、きさまっ」
「うそうそ、冗談。知るわけないよなぁ、フェラなんて。ほら眠れ」
「悠牙?」
「くくくくっ、俺はな、おまえを大事にしたいんだ。大事に、大事に」
「きさま…」
「だから、言われた通りに、大人しく眠れ」
じゃじゃ馬さん?と笑われて、私はゴソリとその腕の中で身動いだ。
「きさま…」
「ふふふふ、彩貴…。俺は、おまえが好きなんだ…好き…グゥ」
「は?おい?きさま?」
いや、何か話しながら、落ちるでない!
「まったく、きさまは…」
このような、なんの柔らかさも面白味もない男の私の身体を抱いて幸せそうに寝落ちるなど、なんなのだ。
「なぁおい、悠牙。きさま。ふぇらとは何なのだ。きさまはそれを私に所望なのか?」
「ふがっ…」
のそりと腕を引き抜いて、悠牙の鼻をキュッとつまんでやれば、情け無い呼吸が漏れる。
「はぁっ。完全に寝ているか…。ったく。ならば明日にでも、南雲に尋ねるか…」
よし、そうしよう。と決めたところで、再びぎゅぅっと強く抱き込まれてしまった身体が、ぴったりと悠牙の身体にくっついてしまう。
「んっ……」
けれど、それはとても心地がいい場所で。
スゥスゥと、一定のリズムを刻む悠牙の吐息と、トクトクと感じる鼓動を聞きながら、いつの間にか私もウトウトと、眠りの世界に旅立っていた。
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