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「さぁて、それじゃぁ悠牙様。ここはいっちょ、宴会といくべきだろ」
「おっ、いいね」
ケロッと笑った悠牙が、1人の男の提案に乗っかり、弥景がそれはそれは盛大に嫌な顔をした。
「悠牙様」
「執務なら今日はもう終いだ、終い」
「悠牙様っ!そういうわけには…」
「あ〜、はいはい。明日倍お仕事するから、今日は、な?」
パチリとウインクなどしてみせて、軽やかに笑う悠牙に、弥景のこめかみがヒクヒクと引き攣っている。
「おい、きさま」
「ん〜?」
「これで本当に国王か」
飲み会優先で執務を放り出すなど、賢王が聞いて呆れる。
「王にも息抜きは必要だ」
「どうせ息抜きばかりだろう…」
いかにサボるかに全力を傾けていそうなこの男で、本当によかったのかと、思わず胡乱になってしまう。
「お〜い、桧央。料理長のところに行って、酒と、何かつまみになるものを用意してもらってきてくれ」
「悠牙様っっ!」
ドゴンと落ちた弥景の怒声もどこ吹く風と、悠牙は飄々と笑っている。
「よっしゃぁぁ。じゃぁ今から、悠牙様が婿を娶った祝いの宴だ〜」
「久しぶりの再会も祝して!」
「新王国の設立もついでに」
どんちゃん騒ぎだ、と、昼からまぁ派手なこと。
「これが、きさまの、家族か」
先ほど見直した私の感心を返せ。
だけど桧央が言っていたように、確かに明るくて騒がしくて滅茶苦茶で…。
「だけど温かい、か…」
きっと、悠牙の生い立ちしかり、桧央のそれしかり。他の一座の者たちも、楽しく楽なばかりの道を来たわけではないだろう。
それでもこの人たちは笑うのだ。
きっとどんな逆境さえも乗り越えて。
「悠牙」
「あぁ。おまえは俺の隣で俺にお酌な」
ほら、王妃様?なんて、悠牙が座した隣に導かれ、私はツンと顎を上げた。
「ふん。仕方がないから、乗ってやろう」
訪ねてきた客人をもてなすのも務めのうちだろうからな。
まだ酒も届いていないのに、すでに大騒ぎになっている室内を見回せば、弥景が1人、諦めたように深い溜息をついているのが見えた。
「ふふっ、あやつは苦労する」
桧央に教わった、ドSとやらが消沈している姿はなかなかにそそるものがある。
その面白さに思わずクックと笑いを漏らせば、ちょうどそこに、桧央が手配したらしい酒や簡単な料理が運び込まれてきた。
「さぁて、無礼講!今日はみんな、好きなだけ飲んで楽しめ!」
「うぉぉ〜っ」
どっ、とさらに沸いた室内に、盛大な酒宴が開幕した。
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