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「香さん…。」
久米は熱に浮かされた瞳で、年上の男を見据える。…ここが温泉でなければ、すぐさま大井と一つになって気持ちを、この熱量を伝えてやりたかった。
「…征久君は堪え性がないね。いけない子だ。」
大井の無骨な指先が年下の男の唇をたどる。久米も相手が同じ気持ちと知って、瞳を眇める。
直後だった。
空からふわふわとした白い小粒が舞い落ちてくる。それも、一つではなく、二つ三つ…。仕舞には、無数に落ちてきた。
「雪…??」
「そうみたいだ。…今日見たテレビの天気予報では、夜中降って大雪になると言っていた。」
大井の言葉を聞きながら、年下の男は片手を外に出してみる。手のひらに、雪がふわりと舞い落ちて、そっと溶けて消えていく。
「綺麗…。」
ふっと口にすると、自分に注がれている視線が気になった。視線の先をおずおずとたどっていくと、大井がいた。
「…君の方が、雪よりよっぽど綺麗で魅力的だ。…なんて、少し気障過ぎるかな。」
歯の浮くようなセリフをさらりと言ってのける大井に、年下の男は赤面し、少し俯く。身体中に纏わりつくようにねっとりと絡みつく視線が、自分でも恐ろしいほど愛おしかった。
大井と一刻も早く繋がりたいという浅ましい欲求が堰を切りそうなほどに膨らんでいた。これから夕食の時間なのだ、切り替えないと、と久米が湯舟から立ち上がる。羞恥心に苛まれながら露わにした裸身を、年上の男は今にも齧りつかん形相で見つめている。久米は顔を背け、そのまま温泉から上がろうとした。矢先だ。大井が口を開く。
「…夕食は七時からだろう??」
首だけ巡らせて振り返った久米の返事を待たず、人肌に飢えた年上の男は続ける。
「夕食が終わって、支度が整ったらオレのところに来なよ。」
行きついた先で何をするのか、野暮な質問をせずともわかる。久米は小さく頷いてから、度々縺れそうになる足で何とか温泉を後にする。湯で濡れた身体を柔らかなタオルで拭きながら、我ながら恥じ入ってしまう。二人っきりとはいえ、温泉で、あれほどはしたなく相手を求めてしまうなんて。大井を一目見た時から、組み敷かれたいという欲求は確かにあった。だが、あれほどあからさまに欲してしまうなんて…。すっかり火照りきった肉体は、冷まそうとしてもなかなか元には戻らなかった。
湯から上がり、浴衣に着替えても、久米の胸の鼓動はなかなか落ち着いてくれない。頬の熱もまだ冷めきってはいない。こんな状態で人と会うのは少し気が引けた。だから、久米は更衣室を出てすぐの待合室に留まり、そこにあった自販機でフルーツ牛乳を購入した。
近くにあったプラスチック製の椅子に腰を下ろし、開けたての牛乳を一気に呷る。ふぅ、と一息ついた時だった。ちょんちょん、と肩を叩かれる。
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