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箱根は相手の反応を伺いながら、まずは恭しく跪き、年下の男の裸足に口づけた。久米は、こくんと小さく頷いてみせた。
「…こっちは??」
訊き終えると、箱根は口づけた箇所から舌を這いずり、年下の男の片足を持ち上げてふくらはぎの裏を舐め上げた。久米は再び、頷いてみせる。
「…じゃあ、次。」
箱根は持ち上げた足を更に高く掲げて、ふくらはぎからツーと舌を伸ばし、太腿の内側から足の付け根までを一気に相手の感度を観察する。
「…っ」
官能を感じ取り、久米の細い肩がぴくっと小さく跳ねた。久米の機敏な反応に満足したのか。箱根が舌を口の中に仕舞い、獲物の豪奢な片足を浴室の床にそぅっと戻した。
「…今度は、手。」
床に傅いた箱根は、年下の男の片腕をとると、簡単な動きを幾つか確認する。観察を終えた箱根は、両腕の中に仕舞いこんだほっそりとした右手に自らの舌を絡ませた。
箱根の器用な舌は、指の一本一本を己が口腔に導いては深々と飲み込んではべったりと唾液を浸けて丹念に舐め尽くし、一瞬で嬲っていく。
指だけではない。箱根は、両腕にある手をまるで極上の食事の如くしゃぶりつくし、舌で一つ余さず愛撫していく。指の股はもちろん、手の甲に手のひら…。角度を変え、高さを変え…あの手この手で執拗なまでに愛でていく。
左の手も同様に、情熱的に箱根は可愛がる。年上の男は、久米を自身の半身だと捉えているかの如く。…否、自分より大切だと身体に直接教え込むが如く。
右の手首から溢れた一筋の雫が、肘まで垂れていく。箱根は涼しい顔で、相手の右腕をやんわりと握ると、頭上に掲げ…。今まさに肘先から滴ろうとしている自身の唾液を至上の甘露でも味わっているかの如き恍惚とした表情でじっくりと舐め上げていく…。
久米はどんどん堪え性がなくなっていく肉体をいやというほど自覚していた。箱根の舌が四肢に伸びる度に、身体は熱く火照り、頭はどうしようもない劣情で埋め尽くされる。腹の奥が…触れられてもいない後孔が疼き、仕方がない。久米ははしたなくも昂った分身を隠そうと股を内に寄せ、落ち着きなく腰を僅かに左右へと揺らした。
「今度は二の腕…。」
箱根の点検はまだ終わらない。相手の右の二の腕を口に含むと、箱根は目を閉じて甘く噛む。箱根の熱い口腔で年下の男の腕の肉は蕩けていく。箱根の顔を至近距離で眺めた年下の男の唇が、大きく戦慄いた。我慢できないとばかりに、物欲しげな吐息が真っ赤な唇から漏れ出ていく…。
左腕も同様に反応を試してから、箱根はスッと年下の男から身を離した。目を丸くしている久米に、年上の男は言う。
「…四肢の感覚は治っているみたいだな。よかった。だけど、万が一を考えて二人で病院に行こう。まあ、全ては朝食が終わってからだが。朝から茶以外、口にしていなかっただろう。…さぁ、アンタは一刻も早く腹に何か入れるべき…。」
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