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制服に身を包み「いってきます」と口にする。
バタン、と閉まる扉を背に学校へ行くのに下る階段の方ではなく上る階段へ
高校生になっても変わらない最早毎朝の日課みたいなものだ。
自分の住む部屋の一つ上の階
代わり映えしないドアを前に玄関のチャイムを鳴らそうとした時、まるでセンサーが反応した自動ドアのようにそれは開いた。
実際、自動ドアなわけがなく俺がドアを開ける前に誰かがドアを開けただけだ。
誰か、なんて思い当たるのは一人しかいない。
だってこの時間彼はまだきっと眠っているから。
中から出てきたのはスーツがよく似合う男の人
この家の家主であり、俺の幼馴染のお父さん
目が合うとその人は苦笑しながら「おはよう」と口を開いた。
「はよざいまーす」
「トオルくん、いつも悪いね。バカ息子を頼んだよ」
「はーい、任せてください」
おじさんと入れ違いに俺は慣れたように家の中に入る。
玄関に置かれた写真たてが倒されているのはいつものこと
きちんと並べられ、よく磨かれている靴の隣に
乱雑に脱ぎ捨てられたスニーカー
邪魔にならないように俺は脱いだ靴を端へ寄せて部屋に上がった。
玄関から真っ直ぐのびた廊下の左側の途中にある扉
それが俺の幼馴染み、ウミの部屋
「起きてる?」
「…」
起こしに来たはずなのにどうしてか声が小さくなる。
ベッド付近まで近づくも、大きく膨らんだ塊は規則正しく上下するだけで中の様子は伺えない。
いつも通りといえばいつも通りだけれど
高校生にもなってこうも朝が弱いのは如何なものか。
「うーみー」
「…」
ベッドサイドに腰掛けて、体重をわざとかけるように寄りかかり声をかける。
すると、ベッドの上の塊はピクリと動いた。
もう一声か、とさらに体重をかけて口を開く。
「うーみー、学校行くぞー」
「…」
そう呼びかけるとようやく固まりの中から返事のようなものが聞こえた。
ようなもの、と表したのはなんて言っているか聞き取れず呻き声にも似た低い声だったから。
「うみ?」
「起きるから、どけ」
モソモソと塊は動き出し、今度ははっきりと声が聞こえた。
俺は声に従うように体重をかけていた塊から退く。
ベッドの上の塊、もとい膨らんでいた布団の塊は崩れ端に追いやられ
中から眠そうに、そして眩しそうに目を細め眉間に濃く皺を寄せたウミが起き上がった。
目が覚めたばかりのウミはいつもより気だるげで無防備だ。
俺が腰掛けていたベッドの淵から腰を上げるとウミもワンテンポ遅れてゆっくりベッドから下り立ち上がった。
猫背でもわかる俺より高い身長はいつからだろう。
昔は同じくらいだったのにいつの間にかウミを見上げるようになっていた。
くあ、っとそれこそ猫みたいに欠伸をひとつして俺の横を通り過ぎたウミはそのままリビングへ足を運んだ。
俺はその背を追いかける。
いつもと変わらない光景
これが俺の1日の始まりだった。
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