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雨が降る。
雨が降るとどうなる?
くせっ毛である俺の髪は外気中の湿気を取り込んで
いつもに増してくるんっと跳ねる。
ついつい触れてしまう跳ねた毛先
気づけば梅雨だった。
しとしとと雨は降り、窓の外はカラフルな雨傘で飾り付けられているはずだ。
梅雨が来たら次は?
「もーわからん!」
「うるせえ」
「…うぁーい」
夏休みだ!なんて言っていられず
そうです。学生なので期末テストが待っています。
机の上には教科書とノート
本来であれば1ページにつきいくつかの線が引かれているはずの教科書は新品同様綺麗なまま。
そして蚯蚓みたいな何かが描かれた画伯、ではなくノートが開いてある。
期末テストまで一週間をきった今
俺はウミに勉強を教えて貰っていた。
ウミは黙々と自分のワークを解き進め俺は分からないところがあったらウミに聞くというのがいつもの流れなのだが
そもそも分からないところが分からず既にお手上げ状態
これもどれもウミのせいだ。
人のせいにするのは如何なものか、とかこの際置いておく。
"変なウミ"事件以来、俺はなんだか気持ちが落ち着かず授業に集中出来なかった。
いや正直1ヶ月くらい前のことをこんなにも引きずってる自分をどうかとは思うけれど仕方ない。
普段だったら分からないところがどこかくらいはわかる。
何とか授業に置いていかれないようにするため形だけでもと視線は黒板へ向けるから。
しかし、それも上の空で窓の外ばかり向いてしまっていて
授業の内容が頭に入っていないだけでなく
ノートや教科書も全く役に立たない状態だ。
「ウミ〜休憩、休憩しよ。な?」
「そう言ってさっきもしただろ」
「そうだけどさー」
放課後、教室に残っているのは俺とウミだけ
日が傾くにはまだ早い時間だけれど
皆テスト前と知ってか知らずか遊びに行ったりそれこそ家で勉強したりと誰も残りはしなかった。
俺はというと今日ウミに言われてテストの存在を思い出した。
本当だったら今頃ショッピングモールとかに夏服を見に行こうとしていたのにウミがテスト前はちゃんと勉強するのを忘れて誘ったら「お前テストは?」と言われて今に至る。
ウミ曰く
『人もいないし学校でやればいい。どうせ家でお前やらないだろ』
らしい。わからん。
家でやらないやつは学校でもやらない。
「うーみーみー」
「…」
「うーみーみーうみうみうみーみー」
「真面目にやれ」
一刀両断
構ってもらおうかとちょうちょの音程に合わせてウミを当てはめて歌ってみたら怒られた。
勉強が嫌いなやつに真面目にやれは酷だと思わない?
なんかご褒美でもあればなー
なんて考えているとさすがウミ
俺の扱いはお手の物って感じ
「期末テスト」
「ん?」
「全部平均以上とれたら好きな服、買ってやるよ」
「まじ!?」
俺は瞳を丸くさせウミをみる。
ウミの視線はノートのまま
とても魅力的な提案だった。
平均以上と言うあたりウミは本当に俺の実力を分かっている。
俺は良くて平均の男だ。
「一着な」
「一着でもなんでもいい!新しく出来たとこ行きたい!」
「ん」
買ってもらう、という提案が嬉しいんじゃない。
いや、もちろん嬉しいことには嬉しいけれど
ウミと出かけられることが俺にとって最高のご褒美だ。
俺が誘ってもウミは基本的についてきてくれるけれど
ウミが一緒になにかすることを提案するのは少ない。
一気にやる気が出てしまった俺は教科書のテスト範囲1ページ目を開いて手を挙げて言った。
「はい!ウミ先生!」
「うぜえ」
「全部分かりません!」
「…」
自分で言うのもなんだが晴れやかないい笑顔だったと思う。
まあウミにはめちゃくちゃ怒られたんだけど。
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