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小さな山を作っていたハンバーガーたちは
いつの間にか紙屑となっていた。
ジュースの入った大きい紙コップに刺さるストロー
喉は乾いてないはずなのに何度もそれに手が伸びるのはやはりどこか緊張のようなものを抱いてるからだろうか。
店内の喧騒はいいBGMとはいえず
ただただ俺たちの間に沈黙を知らしめる。
「…」
「行くぞ」
「え、行くって」
「服、見るんだろ」
「え、ああ、」
ウミは食べ終わった残骸をさっさと片付けて席を立った。
俺はその姿に呆気にとられながらウミの後を追う。
あんなに乗り気ではなかったというのに
一体どういう風の吹き回しか。
ウミが入った店は俺が最初に服を見ていたお気に入りのブランドの店だった。
すると迷うことなく元いた場所に戻って一着、一着と俺がどう?と聞いていた服に手を伸ばす。
「服の手触りはお前の好みだろうし似合わなくはないけどこれは地味すぎ」
「へ、」
「こっちはカッチリしすぎ。これだったらお前はもっとゆったりしたやつの方が似合う」
「あ、の」
パシッと手首を捕まれ引きづられるよう早々に店を後にする。
声をかけようと近くまでやってきていた店員もぽかんと口を開けていた。
すぐに次の店の中へ
ここもさっき俺がウミと入った店だ。
「お前、顔は可愛いから大人っぽくしたいのは分かるけど少し派手くらいのカーディガンにスラックスで十分だろ」
「…」
淡々と告げられた言葉に頭の処理が追いつかない。
一瞬聞き間違いかと思ったけれど、そうでは無いと記憶が伝える。
「は!?」
「あ?」
「な、んでもないです」
なんでもないことないけれど
ウミ、さっきなんて言った?
聞き間違いじゃなければ俺の事可愛いとか言ってなかったか??
その言葉に肯定するわけではないけれど
ウミに言われたということが重要で
俺は時間差で羞恥なのかそれとも他の感情なのか
頬に熱が集まる。
ぶわあって、首裏まで熱くなる。
「融」
「お、れ!トイレ!」
「…」
キャパオーバーした今の俺の頭ではこの頬の熱もおそらく赤いであろう頬の色についても上手いこと言い訳出来そうになかった。
逃げるように駆け込んだのはトイレ、ではなく試着室。
ご自由に使用下さいと書かれた看板を確認して早々に鍵のかかる個室に入ってしゃがみこむ。
なんだったんだ、さっきの
顔はやっぱり不機嫌そうではあるもののウミはちゃんと俺のご褒美について考えていてくれていたようで
さっきまで全く興味無さそうにしていたのに
俺が見せていた服に相槌しか返してくれなかったのに
あんなの、
「ずるいだろ」
「何が」
「っ!?」
扉の外からウミの声がする。
てっきり追いかけて来ないものと思っていたため
驚きでびくりと肩が跳ねた。
「う、み」
「腹痛じゃないんだろ、出てこい」
確かに腹痛だったらこんなとこ入らないよな
俺も咄嗟に出た嘘にしては小学生より馬鹿だと思う。
けれどここで引くわけにもいかず何とかこれで押し通せないかと試みるが
「はら、痛い気が、する」
「気合いで出てこい。それにむしろ腹痛いならちゃんとトイレに行け」
無理だった。まあそうだよな。
ごもっともです。
それにしても俺も俺だ。
なんで扉の鍵に手をかけているんだ。
扉が自動ドアのように開く。
視線は下にさがる。
形状記憶合金
この間テスト前にウミと勉強した範囲で出てきた金属
扉自体は金属でもなんでもないけれど
開いていく扉を見ていたら何故か咄嗟に頭に浮かんだ。
俺はウミの顔も見られなければ試着室から出ることも出来なかった。
なぜなら
本当に何を考えているのか、
ウミがこの狭い試着室に入ってきたからだ。
ぶつからないようにと後ろに下がると背中に冷たい鏡が当たる。
逃げ場をなくした袋の中の鼠とはこういう気持ちなのだろうか。
俺はウミの方へ視線を向けることが出来なかった。
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