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夏の18時は意外と明るくてこれなら大丈夫かな、と空を見上げる。
合コンなんていうのは本当に名ばかりだったけれど
新しい出会いには胸躍る。
悪くなかったな、って言うのが俺の感想で
隣を歩く彼女もそう思ってくれていたらと嬉しい、なんてね
カラオケを出て解散、かと思いきや
なかなかに盛り上がってしまった今回の集まりは
二次会という名のファミレスで締め括ることとなった。
ここで面倒なのが陽キャ特有のノリってやつ
俺自身はそういった括りはないと思うけれど
合コンなんてやろうという友人は根っからのそれなわけで
途中で帰ることは許されず
結局もう一度外の空気が吸えたのは
夕日なんてとっくに沈んだ時間
「じゃーなー気をつけて帰れよ」
「おー…」
ほとんど空返事
思い浮かぶあれこれを理由にファミレス前で解散した。
できることなら時間も時間だったし
俺も帰りくらい女の子たちを送るべきだったけれど
見栄を張るので精一杯な俺には難しかった。
結果的に友人らが近くまで送ると言っていたから心配ないだろうけれど
店の前は邪魔になるからと端に避ける。
その場でしゃがみ込んで顔を両手で覆った。
この時間どこか店に入って夜を明かそうにも
店側も学生は夏休み期間とわかっているせいか
普段はしないような場所でも年齢確認をされて追い出されるのが決まっている。
こんなところ誰にも見られたくない。
重く長い息を吐く。
幸いこのあたりは街灯が多いからある程度なら歩けるだろう。
「…あの」
「え、」
聞こえた声に顔をあげる。
そこには心配そうに眉を下げて俺を覗き込むナノカちゃんが立っていた。
「な、のかちゃん」
「大丈夫?さっき顔色悪かったから」
「っ」
伸ばされた手にびくり、肩が跳ねる。
俺はとっさに彼女の手を払った。
「ぁ、ごめ……大丈夫だから、先帰っていいよ。」
「楢崎くん?」
「ごめんね、送れなくて」
早口でそう告げる。
ナノカちゃんの瞳が見れない。
俺は、うまく笑えてるだろうか。
暗いってだけで大きい音にも敏感になって
いつもの見栄や虚勢も剥がされる。
全部が怖くて鼓動も早くなって、例えではなく息が詰まるようになる。
ナノカちゃんが俺に目線を合わそうとしゃがんだ時
「でも、」
「融」
視界を遮るように
横から、俺の腕を掴むゴツゴツした手のひら
一瞬見えたのは大きい瞳を丸くさせて驚いた顔をするナノカちゃん
あぁ、もうほらずるい。
こんなんで好きになるなって方おがおかしいだろ。
その声に、その熱に、触れるだけで安心できて
全部どうでもよくなって怖いものなんてなくなる。
何でここにいるんだ、とか
喧嘩してたのに、とか
言いたいことはたくさんあるけれど
それよりも先に俺の口から溢れたのは
「うみ」
どうしようもないほど好きになってしまった
君の名前だった。
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