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海の話をしてから30分くらい経った。
流石にもう無理かと、ぽつり一欠片の本音を零してしまった。
「…ウミと、行きたかったんだよなー」
「は?」
バッと音がしそうなほどの勢いと
驚いた声を出してこちらを向くウミ
その勢いに首大丈夫か?と的外れなことを思う。
ウミが何をそんなに驚いているのかわからず
自分の発言を振り返ってみる。
そこで一つ思い当たることが…
俺、いまの声に出てた?
「いや!ちが!」
「違う?」
「違くないです違くないです」
違う、と口にしかけた瞬間ウミがこれでもかというほど眉間に皺を刻むので気づけば俺はそう首を振って答えていた。
実際間違ってはいないのだけれど
それを認めるのは羞恥を煽るようで背中がむず痒くなる。
ウミは黙ったかと思うと何かを考え始める。
最近この絵面よくみるなー
ウミは黙っていても顔が綺麗だ。
何を考えているかわからないのが残念だけれど
暫くの沈黙の後、ウミが口を開く
俺はその髪についた寝癖を見ていた。
「海は、行きたくねえ」
「…そっか」
やっぱりダメだったかー、と二度目の落胆
まあ俺が勝手に期待しただけなんだけどさ
それでもやはり俺は自身で思っていたよりもウミと一緒に行きたかったらしく珍しく本気で落ち込んだ。
と、
「ただ、別の場所なら行ってもいい」
「別の場所?」
「おばさんに今日の夜は俺の家泊まるって言っとけ」
「?」
元々そのつもりだったからすでに母さんには連絡しておいてあった。
そのことを伝えるとウミは珍しく悪戯を仕掛ける前の子どものように口角をあげて俺に言った。
「出かけるぞ」
「……いまからどっか行くのか?」
「海、ではねーけど泳げて綺麗なとこ連れてってやるよ」
返事が遅くなったのは
その表情に見惚れていたから
ウミは人並みに笑うし怒る。
悲しそうな顔は見たことはないけれど
ただ、昔より笑う回数が減った。
だからウミの笑顔は貴重で
俺はずっとそれを見ていたいと思ってしまう。
ウミの言ってることは半分しか理解できなかった。
頭にはいくつかの疑問が浮かぶ。
しかし、楽しそうなウミを見ていたらどうでもよくなって
寝癖を直しに行ったウミの後を追いかけた。
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