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夏休みが明けて、学生という名の肩書きが戻ってくる。
学生の本分は、勉強・学びだと言うけれど
その中でも高校生らしくてとびきり楽しくて騒がしい行事がやってくる。
それがこの学校の秋の始まりだ。
、
まだ賑やかなホームルームが終わったばかりの教室
お邪魔しまーす、とウミのクラスへ足を運ぶのはいつものこと
黒板には先ほどまでの行われていたであろう話し合いの内容が書かれていた。
俺の通う高校は夏休み明けに大きな行事を二つ開催する。
教室に入るなりウミの担任に敵情視察か?と訝しげに見られたが内緒にすることを条件とし教室に入れてもらえた。
顔見知りの友人らに簡単に挨拶してウミの席へ
「ウミ〜!競技決まった?」
「あー…バスケ」
「へー…って、まじ?出んの?てっきりサボりかと思ってた」
「それは…」
「そりゃ河野はうちのクラスの貴重な高身長枠!勝つには出てもらわないと!」
「ユキミちゃん」
「やほー楢崎、久保っちが許しても敵情視察なんて聞こえちゃったらうちは許せないな〜?」
ドドンッ!て効果音がつきそうな勢いで俺たちの前に現れたのはウミのクラスの学級委員である佐藤由紀美ちゃん
ちなみに、久保っちって言うのはウミのクラス担任久保先生のことだ。
「違う違う!ウミんこと呼びに来ただけだから!」
「ほんとかな〜?」
「ほんとほんと!」
首を横に振ったり縦に振ったり俺は慌てて身振り手振りでそう伝える。
いたずらっ子のような顔をする彼女はならよし!と元気に笑う。
「それにしてもユキミちゃんよくウミを説得できたね」
「学級会で寝てたら勝手に決められたんだよ」
「寝てる河野が悪い」
ユキミちゃんの言葉に大きくため息をつくウミ
ウミは積極的にクラスの人と関わるわけではないから
こうして誰かと仲良さげに話している姿は初めて見た。
今もユキミちゃんに小言を言われてうるさ…と文句を言っては余計に怒らせてる。
ウミの周りの女の子って遠目からウミを見ていたり、噂していたりする大人しい子や派手な感じの女の子から話しかけられていても一方的にっていうのが多いから
こうやってウミと言い合える子は珍しい。
そもそもウミは基本無視だったり単語で会話するから
会話っていう会話はあんまり成立しないんだろうな
なんか、
「融?」
「…ぁ、俺カバン取ってくる!」
ウミの声にハッとして咄嗟に思いついたことを口にし
教室を飛び出した。
自分の教室とは反対の方向に出てこれじゃ嘘だって丸わかりだ。
それでも二人を見ていたくなくて
嫌な、感情が体の内側に渦巻く
ここ最近おかしい。
海と過ごす夏休みなんて初めてじゃなかった。
小学生の時も中学生の時だって一緒だった。
それでも、この夏を過ごしてから
ウミに対する気持ちが前よりもずっと、もっと大きくなっているようで
今までちゃんとできていたはずのコントロールが
うまくできなくなっていた。
俺は逃げるように1人になれる場所を探し走った。
、
楢崎が消えた方の教室の扉を眺めながら
その後を追うように立ち上がり机に下げていたカバンを手に取る男に浮かんだ疑問を投げかけた。
「楢崎今カバン肩にかけてなかった?」
「…」
「ていうか河野のこと呼びにきたんじゃなかったの?」
返事はない。
河野は何も言わずさっさと教室を出て行ってしまった。
一人残された私は何あいつ!といつものように腹を立てる、かと思いきやさっきまでの河野を思い出して少し拍子抜けしていた。
よく二人でいるなーくらいの認識だった。
楢崎はこの教室に来るのが多いことで時々話すけれど河野とは基本的には必要最低限しか話すことはなかったし二人の会話を盗み聞きする趣味もないから知らなかった。
いつもやる気がなさそうで
どこか達観してて仏頂面の河野の顔が
楢崎と話す時だけ少し和らぐの
でも、なんんだかそれって
「まさか、ね」
憶測で考えすぎるのはよくない。
いーんちょー、と間伸びした声に返事をしながら
なんとなしにもう教室にはいない二人の姿を頭に浮かべた。
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