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随分と自分勝手なことを言っているのはわかっている。
それでも、ウミと二人きりの時間は短い方がいいと思ったんだ。
「鍵、あんならいいけど」
「かぎ?そんなの…」
ウミに言われていつも鍵を入れてあるカバンのポケットを漁る。
しかし、そこに入っているはずの金属はどこにも見当たらなかった。
焦って鞄をひっくり返して中を探すけれどやはりどこにも見当たらない。
ハッと今朝のことを思い出した。
そういえば昨日帰りに使って、机の上に置きっぱなしじゃなかったけか。
そんでエレベーターで気づいたけど今日は母さんがいるからいいやと撮りに戻らなかった。
「…」
「どーすんだ」
呆れるような声色と退屈そうに未だスマホをいじるウミ
俺は恥ずかしさと自分の馬鹿さ加減に小さく震えながら
「……お邪魔させてください」
声を絞り出した。
その返事を聞くとウミはすぐに立ち上がり感情の見えない瞳を一度だけ俺に向けて階段のほうへ歩き出した。
リーチの差はそこまでないはずなのに
スタスタと歩くウミはすでに少し離れた場所を歩いていて
俺はウミのあとを小走り気味に追う。
その背中はいつもと変わらない光景のはずなのにどこか落ち着かない。
心当たり、以前に答えは明白だろう。
俺が海を避けているのが原因だ。
一つ上の階にあるウミの家
エレベーターを使うまでもない。
ウミは自宅の鍵を開けるとそのまま中へ入っていく。
どうぞ、も入ればもない。
言葉数は多い方ではないけれど
いつも以上に少ないと感じるのはウミの秘湯一つの行動に敏感になってしまっているからだろうか。
「おじゃましまーす…」
「…」
自分の声は思ったよりも小さくて不安げに揺れていた。
ウミはそのまま自室の方へ向かう。
俺がウミの家に来るときは寝る前でもない限り大体リビングで過ごすというのに
どうしたらいいかわからなくてウミの後を追う。
「なに」
「なにって…」
「……」
ウミは鞄を床に置くとすぐに部屋を出てします。
俺は迷子の子供のようにウミについて回ることしかできない。
そしてウミは洗面所へ向かったと思えば
「風呂、入んだけど」
「え、」
「みてェなら、そこにいれば」
「は!?」
「ならさっさと出てけ」
違和感を覚えるほど素っ気ないウミに俺は自分がウミを避けていたことを棚に上げ怒りのような感情を抱く。
なんなんだよ急に…
脱衣所を追い出された俺はどうすることもなくウミの部屋にいた。
慣れ親しんだウミの家とはいえ、1人の時にリビングにいるのもな、と思った次第だ。
と、
「…お前、こっちにいたのかよ」
「は、…っ!?」
部屋のドアが開いた、と思い振り返ると
そこにはタオルを腰に巻いただけのウミがいた。
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