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無防備すぎるその姿は目に毒だった。
ウミはどこか呆れた顔をしていた。
ただ、俺のことなんて眼中に無いみたいに横を通って
朝、畳んだのかベットの上にあった部屋着を手に取っていた。
俺はというとその姿に耐えきれず慌ててウミの部屋をで出る。
こんな自分嫌だと思うのに
脳裏に浮かぶウミの濡れた身体
扉の前でしゃがみ込んで目元を両腕で覆う。
自分の気持ちを自覚して以来、感じていなかった感情がブワッと湧き上がるようだ。
ウミに抱く気持ちと処理しきれない思考がぐらぐらと頭を揺らす。
やっぱり、こんな気持ちおかしいよな
込み上げて来るものに今度は口元を覆う。
ゆっくり鼻で息をして奥歯を噛み締め喉を締める。
大丈夫、大丈夫っだと心の中で何度もつぶやいて
部屋の中から音が聞こえないのを確認してから
もういいかなと海の部屋のド扉を叩いた。
深呼吸
「ウミ、着替え終わった?」
「…」
返事はない。
先ほど確認した通り音もしないのでゆっくりと扉を開けた。
と、
「え?」
「…」
ベッドの上にまーるいかまくらみたいな塊がひとつ
海は寝ていた。
無意識に音を立てないようにひっそりと足を踏み出す。
規則他正しくかまくらが上下するあたり本当にこの中に居るであろう住人は眠っているようだった。
なんて安直にも程がある思い込みで
俺はベッドの縁に腰掛けてひとりぽつりと呟いた。
「なんなんだよ、もう…」
俺って本当に馬鹿みたいだ。
そりゃすぐ寝る人はいるだろうけれどいくらウミがよく寝るやつだって
布団にはいいったら3秒、即寝落ちなんてことはない。
「それは俺のセリフだ」
「っ、起きて…」
「寝ようとしたのに入ってきたのはお前だろ」
そうだけど、うみが、へんだ。
じっと見つめる瞳は全然眠たそうではない。
寧ろ冴えているって方が近い気がする。
手が、伸ばされた。
指先は触れるか触れないかの距離で指先は止まる。
恐らく、俺の肩が大袈裟にも跳ねたから
「……お前さ、」
「なに」
「なんでもない」
ウミは自身の指先と俺へ交互に視線を向けると一度口を開いて
直ぐに閉じ、諦めた様にそういった。
俺はそれがどうしてか無性に気に食わなくて
ウミが逃してくれたなんて微塵にも思わず不機嫌に言葉を紡いだ。
「はあ?そこまで止めんなよ。教えてくれてもいいだろ」
「うるせえ、ねる」
「ちょ、うみ!」
くるりと身体を振り向かせて片膝をベッドの上へ。
乗り上げる様にして布団にくるまるウミを揺さぶった。
すると深い深いため息が聞こえた。
「あのさ、」
「へ」
「何考えてんの」
気づいた時には俺の身体は重力に従うようころんと転がり
背中にはマットレスの柔らかいような硬い感触
髪が乱れて散らばる感覚の後、ウミに包まれているような香りが鼻を燻った。
「ぁ、え、」
「…」
言葉にならないとはこのこと。
口から出る音は音なのかも怪しい程かぼそく小さい。
なに、なんで俺、海に押し倒されてんの
何考えてるかなんて、俺が知りたい
こくり、と固唾を飲んでゆっくり唇を動かして紡いだ音は掠れていた。
「う、み?」
「避けてんなと思ったらずっと引っ付いてくるし何がしたいわけ?」
「っ」
俺のことなんて、とネガティブに考えていた手前
気づいてあえて何も言わなかったウミのそれは優しさだったと
今更気付かされた。
実際に言葉にされた俺の行動はあまりにも自分が身勝手だ。
「な、にも」
だからといって言えるわけない。
「…本当になんにもないなら相当いい趣味してんな」
「っ」
「なに」
冷たい言葉が胸の内刺すようで
俺のせいだから当たり前なわけだけれど
泣きそうになる。
目頭が熱くなって鼻ガツンとするのを感じる。
泣くわけにはいかないと奥歯に力を入れ唇をきつく結んだ。
言い訳も、何も言葉にできない
言葉にしたら全部が終わる。
あと一歩のところでずっと線引きをしている。
ギリギリなんだよ、こっちだって
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