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食事のお誘い。
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ピッ、
「……はい。」
『あら~…や~っと出てくれたぁ~!そして相変わらず良い声ねぇ…
ねぇ…?斎賀 信さん?』
「…ッ!」
―――コイツ……何で俺の名前を…、
信は内心焦り…
思わず何で名前を知っているのかと聞き返しそうになったが――
そこをグッ…と堪えると、向こうから更に話しが続き…
『それにしてもホント……貴方って酷い人ね。』
「………はい?」
『だってそうでしょ~?貴方はあの日、私を散々その気にさせて――
お金を湯水のように使わせた癖に…
貴方はその翌日からまるで煙の様に私の前から姿を消してしまうんですもの…
あんまりだわ。
私の方はあの日以来……貴方の事が気になって気になって夜も眠れず…
あのホストクラブに毎日足繫(あししげ)く通っては――
ホスト達や従業員達から貴方の事を聞き出そうと
毎晩大枚はたいて豪遊してやったというのに
彼らは貴方の事を尋ねると、皆口を揃えて「知らない」なんて言うし…
…ホント……酷い話よねぇ…
知らないハズないじゃない。
現に貴方はあの日あの店で、私の為にホストの真似事までしてくれたのに…ねぇ?』
「………」
―――お前の為にじゃねーけどな。店の為にだけどな。
延いてはシノギ確保の為だけどな。
思わず漏れそうになる本音を堪え――
信は迷惑そうな顔をしながら溜息交じりに姫島の言葉に耳を傾ける…
すると受話口からンフフッ…という
聞くものを不安にさせる様な低い女性の笑い声が聞こえ…
『…まあいいわ。貴方を見つけるのに一年以上かかったけど…
こうしてまた貴方の事を見つける事が出来たんだから……Mには感謝しないとね…』
「M…?」
『…何でもないわ。コッチの話し…
ね~え~…?…ところで斎賀さん……明日にでも私と会って――
何処かでお食事でもしなぁい…?食事代は私が出すから…』
「お断りします。」
低くしゃがれた姫島の猫撫で声に…
信は全身に鳥肌が立つのを感じながら、間髪入れずにそう答えると
再び受話口から不快な笑い声が聞こえ…
『あらやだ…レディーからのお誘いを随分キッパリと断るのねぇ…斎賀さんったら…
でもいいの?私にそんな態度とって…
私――知っているのよ…?貴方の正体を…』
「――なに…!?」
―――俺の正体を知ってる…だと…?
それは俺が“World recovery”の社長を務めているって事をか?
それとも“昇竜会の若頭”である事…?
あるいはその両方…?一体どっちの事を言って…
信が眉間に深い皺を刻み……深刻な顔をして思わず考え込む…
するとそこに今の信を更に不快にする姫島のしゃがれた声が聞こえ…
『…随分と悩んでいる様ねぇ…斎賀さん…』
「ッ…」
『フフ…何もそんなに心配しなくても――
貴方が私の要求を呑んでくれさえするなら…貴方の正体は誰にも話さないわ。』
電話越しからでも伝わってくる姫島の勝ち誇ったかのような雰囲気に
信は忌々し気にスマホ画面を見つめた後…
気持ちを一旦落ち着かせるために目を瞑りながら軽く息を吐きだすと――
改めてスマホを耳に当て…
「……それで…?貴女は私に一体何をさせたいんです?」
『アラ!物分かりが良くって助かるわぁ~…
そ~ねぇ~……まずはさっき誘った食事かしら。
貴方の顔を見ながら食事がしたいわ~…勿論二人っきりで。』
ねっとりと耳に絡みついてくるようなその声色と物言いに…
信の表情には一瞬嫌悪の色が浮かぶが――
すぐにその表情を元に戻すと、小さな溜息と共にその口を開き…
「……分かりました。では時間と場所はどうされますか?
私が?それとも貴女がお決めになられますか?」
『私が決めるわ。決まったら明日の…っといってももう今日だけども
午後15時までにメールを送るから――楽しみに待っててね。
フフッ…貴方の情報を手に入れたのが嬉しくて――
ついこんな時間に電話をかけちゃったけど…
夜ももう遅いし…名残惜しいけどこれで電話を切るわね。
それじゃあ斎賀さん……明日会えるのを楽しみ待ってるわ。』
それだけ言うとプツッ…と、向こうからの通話は一方的に切れ…
信は険しい顔でスマホの画面を見つめながら暫く考え込む
『こうしてまた貴方の事を見つける事が出来たんだから……
Mには感謝しないとね…』
―――姫島のこの言葉から察するに…
俺の情報を姫島に渡したのは恐らくこの“M”って奴なんだろうが…
M……一体何者だ…?
いや、今はそれよりも姫島をどうするかを決める方が先決か。
信はおもむろに電話帳をタップすると
そこに表示されているある人物に電話をかけ始め――
プルルルル……プルルルル……プツ、
『…………信お前――ふざけんなよ?』
如何にも寝起きといった感じのその声に…信は思わず苦笑を漏らす
「…よお、河野……寝てたか?」
『…お前ソレ――午前二時に言う台詞か?』
「だよなぁ……悪い。
けど俺もお前に――どーしても聞きたい事があってだな…」
『ハァ~………で?その聞きたい事ってのは一体なんなんだよ…』
「!ああ…それなんだが――
俺が一年ほど前までシノギの徴収を行ってたホストクラブ…
名前は確か“Zeus”だったか…
そこでの徴収の仕事を、急遽お前に任せただろ?」
『ああ…確かにお前から任されたが――それで?』
「それで、だ……そのホストクラブに通ってた常連客の中に
俺についてしつこく聞きまわってた姫島 綾ってヤツが居たと思うんだが――
覚えてるか?」
『姫島……ああ!レイに入れ込んでいたあの…勿論覚えてるが――
ソイツがどうかしたのか?』
「…実はその姫島って奴に――俺の正体がバレたらしくてな。
それで俺も姫島について何か弱味として使えそうな情報はないかと
お前に連絡してみたんだが…
なにかあの女について知っている情報はないか…?」
『姫島か……だったらヤツのお気に入りだったレイに聞いてみるのが
一番手っ取り早いんだろうが――
生憎奴は一か月ほど前に辞めちまったしな…』
「…辞めた?また何で…」
『分からん。ただ奴は俺のメールに一言…
“辞めます”とだけ残してそれっきり姿を消しちまったからな。
しかもレイが辞めて以降……
姫島もパッタリとウチのホストクラブに姿を現さなくなったし…』
「……そうか…」
『すまない信…力になれなくて…』
「…いや。」
『それにしても姫島の奴は一体どうやってお前の正体を…』
「…多分だが――“M”ってヤツが俺の情報を姫島に渡したらしい…」
『Mッ!?』
「ッ!?」
突然の河野の大声に信は思わずスマホを耳から離し…
暫く訝し気にスマホを見つめてから、信は再び口を開いた
「……どーしたんだよ急に大声なんか上げて…
何かあったのか?」
『あ…、』
―――Mってだけじゃ……
まだ加納の兄貴の失踪に関わっている“M氏”と同一人物かどうかも分からないのに
何動揺して…
「…河野…?
お前ひょっとして――Mってヤツに何か心当たりが…」
『!?…ない。』
「…嘘つけ。じゃあ何であんな大声なんか…」
『ッ、それより信……俺の方でも姫島について探っとくから――
お前ももし姫島からMってヤツに関して何か聞き出せたら…
俺に――教えてくれないか…?』
「………やっぱMに関してなんか心当たりがあんだな?」
『…今は何とも言えん。
それよりも頼めるか?』
「…分かった。姫島に会うのは今から気が重いが…
どっちにしろ…姫島に弱みを握られている以上――俺に選択肢はないしな。
だったら出来るだけヤツから金と情報を搾り取ってやるさ。」
『流石信…頼もしいな。
それじゃあ俺はまず今姿を晦ませているレイの行方と――
姫島が他にも通っていたらしいホストクラブで何かないか探ってみるわ。』
「頼んだ。」
ピッ、と信は通話を切ると――
大きな溜息をつきながら、クシャリと前髪を掻き上げた…
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