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時刻はもうじき姫島がメールを寄越すと言った午後15時を回ろうとしていたが――
未だに信のスマホやパソコンにはそれらしいメールは届いておらず…
その事を確認すると、信は小さく「フゥ…」と安堵するかのような溜息を洩らした
―――なんだ…ひょっとして忘れてんのか…?俺との約束を…
だったら好都合……ってワケでもねーんだけどな…
信はデスクに片肘を突き…
頬杖を突きながら他のメールを確認していく
―――例え今日、姫島が俺との約束を忘れていたとしても…
ボールが常にあちら側にある以上
いずれまた今日と同じ要求を日にちを変えて要求してこないとも限らない。
だったら俺としては今日消化できる要求はさっさと消化して――
こちら側のタスクを少しでも前に進めておきたいんだが…
今になって俺に接触してきた姫島の狙いや――
俺の情報を姫島に売ったらしい“M”についての情報を得る為にも…
「大体……あちらの都合に合わせてコロコロと日程を変えられたんじゃ
堪ったもんじゃない…
今日だって……出来る事なら葵の傍に居てやりたかったていうのに
姫島のせいで…」
「ハァ…」と小さな溜息を吐きながら信はメール画面を閉じると
今度は稔に電話をかけ始め…
prrrr…prrrr…プツッ、
「――あ。おや――」
『…のぼる…?』
「――!?葵…?何でお前が親父のケータイに…」
予想外の人物の声に、信は少し面食らう
『あ……んとね?
信のお父さん――今、出かけてて…』
「はあっ?!」
―――あの野郎…っ!何葵残して勝手に出かけて…、
更に予想外の返答に信の蟀谷が一瞬ピキつき…思わず大声を上げるが――
今、電話の相手は葵だという事に気づき
信は慌てて口を押さえた
「っすまない…」
『ん…いいよ、だいじょぶ…
…でね?お父さん――
自分のケータイを俺に預けて今“あるモノ”を取りに自分の家に取りに戻ってる。
あ!ちなみにお父さんが俺にケータイを預けたのは
『信からの電話爆撃がウザイから。』だって。
信――なんかした…?』
「………いや。」
―――流石に――
空いた時間に何度も電話かけたのは不味かったか…?
いや、でも葵の事が心配だったし…
つか親父の奴…一体何を取りに家に…
「…葵。」
『…ん?』
「親父は一体何を取りに家に戻ったんだ…?」
『ん~?んー…っとねぇ~…うふふっ…知りたい…?』
「ッ、そりゃあ――まあ…?」
『ブブ~!はいダメ~!教えてあげないよ~!』
「…何…?」
『フフッ!だって何を取りに家に戻ったかを教えたら信――
怒るかもしれないって信のお父さんが…』
「ほう…?つまりは俺が怒りそうなもんを取りに親父は家に戻ったと…」
『あっ!』
葵は慌てて手で口を塞ぐが手遅れで…
「――葵…?」
『ッ、ダメ…!ダメだよ教えない!
だって俺だって楽しみなんだもん!』
「楽しみ…?」
『あ。えっとぉ~……
と、兎に角ダメ!絶対に教えてあげないんだから…』
「フッ…分かった。そこまで拒むのなら無理にとは聞かないさ。
まあとりあえず親父は家に帰ったらぶん殴るが…
それよりもお前が思いのほか元気そうでよかった。」
今朝よりも弾むような声で話す葵に信は少し安堵し――
その表情と声色は自ずと柔らかくなる
『でしょ?熱もさっき測ったら37・9度だったよ。』
「…まだ全然あるじゃねーか。」
『でも大分楽になったよ?お昼ご飯も半分以上食べられたし…』
「…そうか?なら良いんだが……
ところで――何か欲しい物とかあるか?あるのなら帰りに買って帰るが…」
『あ!だったらなんかさっぱりとした果物が食べたいな。
ミカンとか…』
「ミカンか……よし分かった。うんと甘いやつを一箱買って帰る。」
『一箱って…フフッ、そんなに食べきれないよ。』
「そんな事ないぞ?ミカンは色々と使い道があるからな。
一箱なんてあっという間に無くなる。
試しに明日――ミカンを使ったデザートとか作ってやるよ。」
『信……デザートも作れるの?!』
「まあな。作るのは久しぶりだが…
葵が何か作って欲しいデザートがあるのなら作って――」
「いい加減にしろよ…この野郎…っ!」
「!?」
突然信の居る部屋の外から秘書である梶(かじ)の怒声が聞こえ――
信はその事を不審に思い、葵に「後でかけ直すと。」と言って通話を切ると
眉を顰めた険しい顔で部屋のドアに視線を向ける…
すると部屋のドアはノックもなく乱暴に開かれ――
そこから珍しく怒った様子の梶が鼻息荒く部屋に姿を現し…
ドスドスと絨毯を力強く踏みしめながら信に歩み寄ると
怒りでワナワナと震える口を開いた
「社長!いい加減あの男を何とかして下さいっ!俺…もう嫌です!」
「俺って…」
普段どんな事があっても取り乱したりしない秘書の梶が
珍しく語気を荒げながらドアの方を指さすと…
そこには何時もの無表情で何事もなく突っ立つ仁の姿が見え…
「…信。この間の同居の件を聞きに来た。」
「…ケーサツって暇なのか?つか電話とかでいいだろう…そんな事…
なんでわざわざ俺んところに来るんだよ。」
「お前に会いたかった。」
「ああ……そう…」
顔色一つ変えずに平然とそんな事を言ってのける仁に信はほとほと呆れ――
正面で青筋立てて怒る梶を後目(しりめ)に信はデスクに片肘を突き
額を片手で押さえながら呆れ交じりの溜息を零すと…
信はスマホを持つ手をヒラヒラと振りながら口を開いた
「あー…何時もすまないね梶君…
ココはもういいから仕事に戻って…」
「っですが社長…!コイツ…、ッ、
真壁警部補の横暴っぷりにはもう我慢が出来ません!
彼の上司に抗議を入れるべきです!毎回毎回アポも取らずにこんな…、」
梶は自分の斜め後ろに何食わぬ顔で立つ仁を不信感を露わに睨みつけるが
仁はそんな梶に見向きもせずに信だけを見つめ…
「――で…返事は?」
「…お前なぁ……ちょっとは空気読めよ。
あ、梶君。コイツには後で私の方からキツク言い聞かせておくから
とりあえず今日の所は私に免じて許してはもらえないだろうか…?
上司への抗議も考えておくから…」
「…またそんな事言ってこの男を甘やかして…
社長がそんなんだからこの男は――」
「梶君…」
「ッ…、…分かりました。
ですが今日みたいな事があったら今度こそ…
真壁警部補には責任を取ってもらいますから!」
「分かったから!ほら…そんなにプリプリと怒ってないで…
折角の可愛い顔が台無しだよ?」
「…ッ!…社長のそういうところ――嫌いです。
それでは失礼します。」
そう言って梶は若干頬を赤く染めながら律義に信に頭を下げると社長室から出て行き…
信はニコニコと微笑みながら部屋を後にする梶に手を振って見送ると――
盛大に溜息を吐きながら仁に声をかけた
「…聞いたな?今度からウチに来る時はちゃんとアポを取れ。
俺だって暇じゃないんだから…」
「善処しよう…
ところで同居の件だが――」
「断る。」
「ッ、」
「―――と…言いたいところだが…
俺の答えはもう決まっててな。」
『もし仁を助けると約束をしてくれるのなら――
“その時”が来た時にお前に証拠の写真と俺が掴んだ情報をくれてやるよ。
タダで。』
―――まだ仁との同居に納得していない葵には申し訳ないが……
だが俺は――
どうしても椿さんを殺したヤツの手掛かりが欲しいんだ…!
「同居の件は許可する。」
「そうか……なら早速今日から――」
「だがちょっと待って欲しい…」
「…?」
仁がスマホ片手に早速何処かに電話をかけようとしていたが――
信の制止の声に仁はその手を止め、スマホから信に視線を向けると
訝し気にその口を開いた
「…何だ?」
「実は今日…葵が熱を出してな。暫くは安静にさせてやりたいんだ…
だからお前がウチに来るのはもう少し待って欲しいんだが…」
信が仁の様子を伺う様にして、上目遣いで仁の顔を見やる…
すると仁は口に手を当てながら考える素振(そぶ)りをみせ…
「――そうか……それは困ったな…」
「困ったって何が…?」
「実はもう…お前と同居する事を見込んで――
長期に家を空けるからと
マンションの電気・ガス・水道…それにインターネットも止めて来たんだ。
だから今日、お前の家に行けないとなると――
俺は真冬にも関わらず電気もガスも使えないマンションの部屋で一人…
凍えるような一夜を過ごさねばならなくなるのだが…」
仁がその端正な顔にわざとらしい…
悲し気な表情を貼り付けながらチラリと信に視線を送ると
信は微かにたじろぎ…
「ッじゃ…じゃあ!俺が数日分のホテル代を出すからそこで――」
「俺はホテルだと眠れない。」
「自分の家じゃないと眠れないってか?
だったら俺の家でも眠れないだろう…何で同居なんか…」
「お前の傍でなら眠れる。」
「…どーゆー理屈だそりゃ…」
「ハァ~…」と信が再度呆れ果てた溜息を吐きながら仁に目をやると…
まるで捨てられた子犬のような顔して信の事を見つめており…
―――ああ……クソッ、
「ッ分かった!今日ウチに来てくれて構わない!」
「…助かる。」
「だが今は俺の親父もウチに来ていて――
親父と一緒の客室を使ってもらう事になるが……それでも構わないか?」
「…一向に構わない。」
「そうか…なら――」
信が言いかけたその時…
手に持っていたスマホが震えだし――
信がスマホの画面に目を向けると
そこには姫島からのメールが届いていて…
―――ようやくか…
信が届いてメールを険しい表情で読み進め…
やがて険しい顔のままメールを読み終えると――
片手で軽く額を押さえながら、気の滅入るような気分で溜息を吐き…
「信。」
「…ん?」
「メール、なんだって?」
「…ディナーのお誘いだよ。」
「ディナー?」
「そ。今日のな。
それよりお前――俺と一緒じゃないと俺のマンション入れないけど…どうする?」
「そうだな…
だったらお前のディナーとやらが終わるまで――
俺は殺された加藤 修也と最後に会っていたらしい女…
姫島について調べているとするかな。」
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