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リードの先を奪う方法。
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「…それでは斎賀さん。今日はお話しできてとても楽しかったわ…
ここでお別れするのは非常に残念ですけど…
また日を改めて、コチラからご連絡さしあげますので
その時はどうぞよしなに…ではまた…」
「………」
そう告げると姫島は店の前に停めてたハイヤーつきの高級車に颯爽と乗り込み…
後部座席の窓を開け、信に一礼すると
姫島を乗せた車はそのままゆっくりと信の前を通り過ぎて行き…
後に残された信は綺麗な愛想笑いを浮かべながらその車を見送ると――
盛大に溜息を吐きながら自分も姫島の車の後に停まっていた車の後部座席に乗り込む
すると運転手がバックミラー越しに信に話しかけ…
「…お帰りなさい社長。ところで――例の頼まれてたミカンなのですが…
店で受け取った後、先にご自宅のマンションの方に届けておきました。」
「…ん。ありがとう。」
「いえ……それよりこのままご自宅に向われますか?」
「…ん?ああすまない…少し待ってもらえるかな?」
そう言うと信はスマホを取り出し、画面を何度かタップすると
何処かへ電話をかけ始め…
プツッ、
『信。』
「仁…」
『…終わったのか?』
「ああ。」
『随分と早かったな。』
「…なんか相手さんにトラブルがあったらしくてな。
それで予定より早く切り上げる事にしたんだ。」
『そうか…なら俺はこれからお前のマンションに向かうが――いいか?』
「ああ。玄関先で落ち合おう。」
『分かった。』
ピッ…と通話を切り…
信はスマホを胸ポケットにしまいながら運転手に行き先を伝えると――
信を乗せた車はゆっくりとその場を後にした…
※※※
『…私がMから聞いたのは――
貴方の携帯番号……それと貴方は“World recovery”の社長で――
“昇竜会との深い関りがある”って事だけ…
ああ!それと弟さんね。』
「………」
窓の外を流れる景色を眺めながら…
信は先程の和食レストラン内での姫島との会話を思い出す
『…それでその――“私と昇竜会との深い関り”とやらを示す何か証拠は…?』
『あらぁ…フフッ…その手には乗らないわよ斎賀さん…
「切り札は匂わせるだけで効果がある。」ってMが言ってたわ。
今は……貴方と昇竜会との間に深い関りがあるって事を
“私が知っている”という事を貴方が知っていればそれだけで十分のはず…
――でしょう…?』
『………』
窓に映る信の顔が一瞬その表情を険しく変え…
―――…あの女…俺の前では何でも答えるかと思ったらなかなかどうして…
伊達に歳は食ってないって事か…
俺を黙らせる方法をよく理解してやがる。悔しいが…
しかし“昇竜会との深い関り”――などとぼかした表現で
Mが俺と昇竜会との繋がりを姫島に伝えたところを見ると
どうやら俺が若頭だという事を直接姫島にバラしたワケではないらしい…
問題はそれが何故か…なんだが…
考えられるのはMが俺が昇竜会の若頭である事を知らなかったからなのか――
或いは知っててわざとぼかしたかの2択になる訳だが…
もし俺の見立て通りMが御手洗だとすると――
後者の可能性が非常に高い。
何故なら俺が昇竜会の若頭だと知る人物は“限られている”からな。
その事を踏まえたうえで…
“わざとぼかして俺の情報を売る”事で――
自分に疑いの目が向かないようにしたんだろう…
なにせ自分も俺が若頭だと知るその“限られた人物の一人”になるワケだし…
もし仮に俺が自分の情報を姫島に売ったヤツを探るとしたら
真っ先に御手洗に疑いの目を向けるだろうからな。
加納の兄貴の事もあるし…
「…小賢しい狸め…」
「…?なにか仰いましたか?」
「!いや…」
「…?」
「………」
―――いっその事――俺が昇竜会の若頭である事を姫島に暴露していたら
葵の事も含めて一発で特定できたのにな。
御手洗がMだと…
まあ…それはそれとして――今日の姫島との食事は無駄ではなかった。
『安心なさって?…貴方が私の要求を呑んでくれているウチは――
貴方と昇竜会が関わっているだなんて誰にも言いませんから…
尤(もっと)も…貴方がちょっとでも私の意にそぐわない事をしたら――
その時は…どうなるか分かりませんけど…』
「………」
舐める様に信の事を見つめ…
暗にリードの先は常に自分が持っていると言いたげに話す姫島を思い出し…
信は多少苦々しい気分になるが――
一度小さく息を吐き出すと、再び真剣な眼差しで窓の外を見つめ…
―――だが…そのリードの先を奪う糸口は既に2つほど見つけてある。
後はそれをどう生かすかだが…
『俺は殺された加藤 修也と最後に会っていたらしい女…
姫島について調べているとするかな。』
―――とりあえず仁から聞いたこの情報は保留だ。
一番武器に使えそうな気はするが――
この情報を使ったら…アイツの立場が危うくなるかもしれないからな。
まったく……それにしても何でアイツはそうホイホイと捜査状況を俺に話すかね…
一般市民への捜査情報の漏洩はマズイって事ぐらい
アイツにだって分かっているだろうに…
でもまあ…お陰でコチラの手札が増えたわけだが…
それはそれとしてあともう一つ…
糸口として使えそうな残りの情報だが――
『そう…実は私…数年前から“あるモノ”をコレクションしているのだけれど…
そのコレクションというのがまた中々リスキーな代物でね。
それでもっとリスクの少ない手段で手に入れる方法はないかと探っていたら
Mの存在を知ったのよ…』
―――姫島が集めているというリスキーなコレクション…
これはかかなり使えるんじゃないのか?
何しろMの手を借りる程だ…こいつを調べれば――
姫島からリードの先を奪えるかもしれん…
ずっと窓の外を見つめていた信の口元に微かな弧が浮かぶ…
そこに運転手が再びルームミラー越しに声をかけ――
「社長、もうすぐご自宅に到着します。」
「ん。分かった。」
そう言うと…
信を乗せた車はゆっくりとマンションの敷地内へと入っていった…
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