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納得できるかどうか…
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「…どーしたんだい?信…
慌た様子で僕をこんな所まで連れ出して…」
三人がいるリビングから離れ…
一階の貯蔵室兼、ワインセラーとして使っている部屋に
信は稔を引っ張って連れ込むと――
信は一呼吸置いてから稔の手を離し…
「…悪い。
ちょっと気が動転しちまって…」
「…動転って……ひょっとして僕がみんなの前で
葵君の事をお嫁さん呼ばわりしたのがマズかったのかな?
確かに信も葵君も男同士だし…
まだこういった事は周りに秘密にしておきたい気持ちが――」
「いや……そこじゃねんだわ…」
「…?じゃあ何がいけなかったんだい…?」
「あー……何て説明したらいいかその~…」
「…?」
怪訝な表情で自分を見つめてくる稔を前に…
信は時折宙を仰いたり、苛立った様子で頭を掻いたりして
暫く何かを考え込んでいたが――
やがて大きく息を吐き出し――
意を決ししてその視線を稔に移すと…
信は渋々その口を開いた
「…好きなんだとよ。」
「…ん?何が??」
信の言っている言葉の意図が分からず
稔は益々怪訝な表情を信に見せ…
信の方も実に言い辛そうにそんな稔に言葉を続け…
「ッだから…っ、
好きなんだとっ!
仁の奴がその…、ッ、
俺の…事を…、」
声を徐々に小さくしながら視線を逸らしていく信に
稔は益々呆気にとられ――
「……………………………ごめん、今何て…?」
「………もういい。」
信は盛大な溜息と共に貯蔵室を後にしようとするが――
それを稔が慌てて引き留め…
「っゴメンゴメン!
あまりにも唐突な告白だったもんだから遂、動転しちゃって…」
「な?動転するだろ?」
「ま…まあ……
――ん?ちょっと待て…
それじゃあお前が僕を此処に連れ出したのってひょっとして――
実は仁君とも付き合ってて…
仁君と葵君とで二股していたのがバレそうになったからそれで…」
「ちげーから。
断じてちげーから。」
見当違いな稔の誤解に
信は「ハァ~…」とやりきれない気持ちを吐き出すかの様な息を吐くと
前髪を掻き上げながら苛立った舌打ちをする
すると稔が不思議そうに首を傾げ――
「…だったら――何で信は僕を此処に?
仁君がお前の事好きだからと言って…
お前は別に仁君の事が好きってワケじゃないんだろ…?」
「ッ、それは――そーなんだが…」
「だったら別に僕があそこでお前と葵君との関係をバラしたところで
なんら問題なかったじゃないか…
むしろあそこでハッキリと葵君との関係を宣言しておいた方が…
お前と仁君の為にもなったんじゃないのか…?
これ以上……仁君に変な期待を持たせない為にも…」
「………」
稔の言葉に信は眉を顰め…
口に手を当てながら暫く無言で考え込む
―――確かに親父の言う通り…
仁にはこの際ハッキリと葵との事を伝え――
俺の事を諦めてもらうのも一つの手だとは思うんだが…
しかし……
『俺は…お前を諦める気はない。』
―――俺に対して面と向かってあんな宣言してきたヤツが…
果たして俺と葵との関係を改めて知ったからといって
素直に諦めてくれるかどうか…
そもそもアイツは元から俺と葵の関係を疑ったうえで
あの発言をしたワケだし…
今更俺と葵の関係をアイツに話したところで
ますます意固地になって話が拗れる気が…
「信…?」
「…あいつは今……意地になってるんだと思うんだ。」
「意地?」
「そう…意地。」
信は眉間に皺を寄せながら話を続け…
「…親父は――今もお袋の事を愛しているよな?」
「っなんだいいきなり…藪から棒に…」
「いいから答えろ。」
「っそりゃあ――愛してるさ…」
「その愛しているお袋が――実は今…別の人を愛しているって言ったら――
親父はすんなりとその事実を受け入れ……お袋の事を諦めきれるか?」
「ッ、それは――」
「諦めきれないだろ…?」
「ッ…」
信の言葉に稔は返す言葉もなくただ困ったように顔を顰めながら俯き…
信もそんな稔を横目にただ淡々と言葉を続ける
「…今の仁はまさにソレ。
俺が葵の事を好きだという事が分かったとしても――
納得できないっていうか……諦めきれないっていうか……」
信も自分で言ってて段々と気分が重くなっていき…
どうしたもんかと深い溜息を吐く…
そんな中、稔も暗い表情でその口を開き…
「…だったら――これからどうするんだい?
まさかこのまま仁君に片思いをさせ続ける訳にもいかないだろう…?」
「…それはそうなんだが……しかしこればかりはどうにも…
ただ――これから約一か月の間…
アイツを説得する機会はいくらでもあると思うから――
その間にアイツを…」
「………ん?これから一か月ってどういう意味だい…?
この一か月に何か特別な意味でも…」
「あ!親父に言い忘れていたが――
実は今日から約一か月の間…仁も此処で一緒に住むことになったから。
その間部屋も親父と一緒の客室を使う事になったんでヨロシクな!」
「………マジで言ってる?」
「マジマジ。」
「はぁ……ま、僕は丸々一か月ここに居る訳じゃないから別に構わないけど…
しかし実際問題――これからどうする気だい…?」
「まあ……結局なるようにしかならんとは思うが…
とりあえず仁にはもう一度俺から葵の事が好きだという事を話してみて――
もしそれでもダメだったらこの一か月でアイツをどう説得するか考えてみるさ…」
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