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火の粉。
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―――兄貴が電話で言ってたのはコレの事か…?
仁が背後の男達に意識を向けながら――
過去に信の退院祝いを兼ねたサプライズパーティーの為に
海沿いにある義人の経営するレストランへと向かう途中――
“斎賀 葵”からかかってきた電話の事を思い出し…
ピッ、
『…何故俺の携帯の番号を知っている。おとう――』
『よっ!お兄ちゃんだよ☆
元気してたか?』
『………』
『…こらこら。無言で通話を切ろうとしない。』
『…何の用だ。』
『相変わらず冷たいねぇ~…お前は…』
『…十年以上――俺と家族から逃げ回ってた犯罪者の分際で
一体どの口がそんな事を言うんだ?いいから要件を言え。』
『も~…お前ってヤツはホントせっかちだな…
もうちょっと久しぶりの兄貴との会話を楽しむとかさぁ~…』
『………切るぞ。』
『ッわーかった…分かったから!よーけん言うから切るなって!』
『………』
『ハァ…実はお前に――
謝っておかなきゃいけない事があってだな…』
『謝る…?なんだ……今更鑑別所を脱走し――
親父や家族に迷惑かけたことを謝る気にでもなったのか?
今更謝ったところで…どうにかなるものでもないと思うが…』
『……は?違う違う!
そもそも俺はあの時の行動を間違っていたなんて思ってねーし?
親父がそれで更迭された事もな。』
『ッアンタって人は…、』
『ま。それはさておき…
実は俺――ちょっとしたトラブルに巻き込まれたっつーか
自分からそのトラブルに首突っ込んだっつーか…
兎に角今、ヤバイ状況でな。』
『…それで?』
『それで、だ…
ひょっとしたら俺のせいでお前にも何かしらの火の粉が降りかかるかもしんねーから
先に謝っておこーと思って…』
『…火の粉?』
『あぁ……一応――俺の方でも信にお前の事を頼んだりして色々対処はしているが…
如何せん…あのタヌキオヤジはなかなかの強敵でな…
ま!そんなわけだから…お前も注意しろよって事で…』
『ッ!ちょっと待て兄貴……今信って――』
『じゃあな。』
「………」
―――あの時は何言ってるんだと思ってたが…
なる程火の粉か…
『気をつけろ真壁っ…罠だ!
コイツ等初めからお前を――がはッ、』
―――神崎さんからの電話から察するに…
今回の取引に関する情報は全て俺をおびき出すための罠だったという事か…
それにしても俺一人をおびき出す為にこんな罠を仕掛けるとは…
兄貴の奴……一体誰を敵に回したんだ…?
仁が背後の男達の様子を伺いながら隙を探る…
すると正面の葵が「ひっ…」と小さな悲鳴を上げた後
背後に視線だけを向けながら怯えた様子で口を開き…
「ッひとくん……後ろの人が俺の背中に何か…、」
見れば葵の背後にももう一人…
背の高い男が葵に密着する形で立っており
更にその男は葵にも自分と同じように背中に何かを突きつけている様子で――
「…妙な事は考えるなよ?真壁 仁…
お前の連れや――他の客に怪我をさせたくなかったらな…」
背後の男が脅す様に仁の背中に更に強く固い物を押し付けると
仁はその視線を鋭くしながら口を開き…
「……狙いは俺だけなのだろう…?
だったらコイツは必要ないハズだ…解放しろ。」
「ハッ……常套句だな。
残念だがそれは出来ん。
お前を大人しくさせる為の大事な人質だからな。
それに――下手に解放して警察を呼ばれでもしたらかなわん。」
「………」
「さてとそれじゃあ…そろそろ移動しようか…
まずはすぐそこの――園芸店横のバックヤードに続く扉まで進め。
くれぐれも――おかしな真似はするなよ…?」
男は固い物の先端で仁の背中を小突くように強く押すと
仁と葵は渋々その場から歩き出し…
「ッ…ひとくん…」
「…大丈夫だ。心配するな…」
「ッでも――」
「…今は黙って奴らに従うんだ。
他の客に奴らの矛先が向かわない為にも…」
「ッ!わかった…」
「…黙って歩け。」
「………」
「………」
二人は三人の男達に挟まれ…
促されるままにバックヤードの中に足を踏み入れると――
中で待ち構えていた別の男達に抵抗する間もなく
仁たちは頭に黒い麻布を被せられた…
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