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何と引き換えに…
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「ギャッ…」
腕を肘関節から折られた男の口から悲鳴が上がろうとした次の瞬間――
片瀬から白井と呼ばれた男性が間髪入れずに男の鳩尾に鋭い拳を突きを入れ…
「~~~ッ、がはッ、」
男は白井の拳が胸にめり込んだ状態でそのまま気絶したらしく…
ダラン…となった男の身体を、白井は興味なさげに足元に投げ捨てると
何も分からず…ただ呆然とその場に立ち尽くしている葵の身体を
素早く自分の方へと引き寄せながら、頭に被せられていた麻袋を取ってやり…
「わっ…っぷ…、え……え…?」
「お、お、お……お前ッ…、なんなんだよっ!」
困惑する葵を余所に…
事の成り行きを隣で仁たちに銃を向けながら見ていたもう一人の男が
狼狽えながらどうしたらいいのかが分からず…
へっぴり腰で銃を構えたまま、白井と仁たちに交互に視線を向けながら
ジリジリと後ろへと後ずさる…
しかしそんな男に片瀬がスタスタと近寄ると――
男の後ろを指さしながら平然と口を開き…
「あっ!おまわりさん。」
「っなに…っ?!」
男が後ろを振り向いた瞬間
片瀬が飛びつくようにして男の背後から男の首に自分の腕を回し…
チョークスリーパーを決めながら男の頸動脈をギリギリと締め上げ――
「がっ…あがッ、、あ…」
背をのけ反らせ…
何とか首を絞め上がる片瀬の腕を振りほどこうと男はもがくが――
やがて力尽き…男はそのままガクッと気を失うと
片瀬は優しく男の身体を床に横たえながらプッ…と吹き出し…
「おまわりさんなんて…こんなとこに居るワケわけないじゃん。
昭和のコントかっつーの!
まっ、それはさておき…」
片瀬はその場から立ち上がると、白井の方を向き…
「白井の兄貴……どーして此処へ?
偶然では――ないんでしょ…?」
「…え?偶然だよ?」
「またまたぁ~…」
「いや、ホントに偶然なんだって…、」
「あっ…あのっ、」
「ん?」
片瀬と白井がじゃれつき始めたその横で
葵がオドオドしながら白井に話しかけ…
「さっきは助けていただき…ありがとうございました…っ!」
「あ!いいっていいって!そんなにかしこまんなくても…
アタシはただ…ホントに偶然ココを通りかかっただけで…」
「バックヤードにっスか?そんなのあり得ないっす…」
「だったらそういう片瀬ちゃんだってなんで――」
ドサッ、、
「「ッ!?」」
「え…」
何か重い物が落ちる音がし…
三人が一斉に音のした方に視線を向けると
仁の足元にさっきまで仁に捕まってた男が転がってて――
「お前…」
「…?」
仁が目を細め…怪訝な顔で白井の姿をマジマジと見つめると――
仁はツカツカと白井に歩み寄り…
「ッな…なに?」
「お前――この間から俺の周りをウロチョロとしていたヤツか。」
「なっ…何の話?」
「とぼけるな。
2週間くらい前から俺の周りをうろついていただろうが。」
「さ…さぁ……人違いじゃ――」
「ほぅ……じゃあコレは?」
仁がポケットからスマホを取り出し
何度か画面をタップすると、ソレを白井に見せ…
「…ッ!」
「そこに映ってるの…全部お前だな。」
「いつの間にこんな…ッ、」
―――写真を撮ってる素振りなんて全然…、
仁が画面をスライドしながら白井に見せたのは何枚かの写真で――
その中に映っていたのは全部
上手く人混みや物陰に隠れながらコチラの様子を伺う白井の姿で…
「ッ嘘でしょ…?綺麗に撮れて――じゃなくって!
このアタシの尾行が――対象に気づかれていたなんて…っ!」
「今……尾行って言ったな?」
「あっ…」
―――しまったぁ~…
やってしまった感半端ない感じで白井は口に手を当て…
何とかその場を誤魔化すための言葉を宙に視線を彷徨わせながら必死に探すが
もう既に時遅しといった感じで…
「――で?…お前は一体誰の差し金で俺の事を見張ってたんだ?
信か?」
「ッなんでそこで若……ッ、」
「………」
「ッ、じゃなくってっ!…なんでそこで斎賀さんが出てくんのよ…っ、」
「なんだ……やはり信の知り合いか。」
「ッ~~~~」
―――もうやだぁ……アタシったら…
なんでこうも余計な事ばかり…
「…それで?
信がお前に――俺の事を見張るよう頼んだのか?」
「ッ、」
「…答えろ。」
「………そうよ。」
「何故。」
「知らないわよ!そんなの…
アタシはただ――斎賀さんから貴方を護るよう頼まれただけで…」
「…護る?」
「そうよ!」
「………」
『一応――俺の方でも信にお前の事を頼んだりして色々対処はしているが…
如何せん…あのタヌキオヤジはなかなかの強敵でな…』
―――なるほどな…
それで信が兄貴の言ってた火の粉から俺を護る為に
コイツに俺を見張らせていた、と…
だったらこの間信から貰ったコレにもやはり――
GPSか何かついているって事なのか…?
俺を……護る為に…
『仁…ちょっといいか?』
『何だ?』
『お前に――コレを渡そうと思って…』
『何だコレは……タイピン?』
『そうだ。』
『…何故いきなりこんな物を俺に…?』
『ッ、いや……お前に似合うかなと思って…』
『………』
『要らないのなら別に――』
『貰(もら)おう。
…着けてくれるか?』
『俺がか?!』
『あぁ……駄目か?』
『いや……ちょっと寄越せ。』
そう言って信は仁からさっき渡したネクタイピンを受け取ると
多少ぎこちなくではあるが
ワイシャツとネクタイを固定するようにネクタイピンを刺していき…
『ホラ…出来たぞ。コレでいいか?』
『ありがとう……なかなか洒落た品だな。』
『まあな。』
『大事にする。』
『そうしてくれ。
出来れば――スーツ着てない時でも肌身離さず持っててくれてると有難いんだが…』
『…タイピンをか?どういう意味だ?』
『ッ別に。…ホレ!さっさと行くぞ。途中まで一緒に乗ってくんだろ?車。』
『…?あぁ…』
―――その時はただの信からのプレゼントとして気にも留めていなかったが――
信の奴……一体何と引き換えに俺を護ると兄貴と約束したんだ…?
「………」
仁がコートのポケットに入れてあるネクタイピンにそっと触れ…
「それにしても何で――アタシと斎賀さんが知り合いだって気づいたの…?」
「…ん?あぁ…それはそこにいるちっこいのにお前の事を尋ねたら
“白井の兄貴”って答えたからな。それでピンときた。」
「ちょっと片瀬ちゃ~ん…」
「えぇっ?!何で俺が悪いみたいになってんスかっ!
兄貴の事情なんて俺知らねっスよ!
つか今ちっこいのって!」
「…ちっこいだろうが。」
「ちっこくねぇっす!アンタ方が無駄にバカデカイだけっす!
それに俺はこれからまだまだ背が伸びる予定なんで…
バカにしていられるのも今のうちっす!」
「…もう二十歳でしょ?無理よ。諦めな?」
「無理じゃねぇっす!!
今に見てやがれコノヤロウ…っ!」
「フッ…」
仁は二人のやり取りを見て微かな笑みを浮かべると
そのまま搬入専用の駐車場に向って歩き出し…
それに気づいた白井が慌てて仁に声をかけ――
「ッ!?ちょっと待ってよアンタ!どこ行く気?!」
「…神崎さんを助けに。」
「助けにって……無茶よ!
まだあとどれくらいの人数が外で待機してるか分からないのに…、」
「…人数ならそこに転がってる男に聞いた。
あと4人、バンで待機してるらしい。」
「4人…」
「…お前たちは葵を連れて早く此処から離れろ。
後は俺一人で何とかする。」
そう言いいながら仁は男達が落としたベレッタを一丁…床から拾い上げると――
弾倉を確認しながら再び搬入専用の駐車場に向け歩き出した…
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