アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
重なるアイコン。
-
「抜糸は済みました。
もう前を閉じてもらっても結構ですよ。斎賀さん。」
「あ、はい。」
診察台に座ってた信がグレーのワイシャツのボタンをプチプチと閉じていき…
男性医師がカルテに何か付け加えながらその口を開く
「傷口も綺麗に塞がっていますし…
これなら普段通りに過ごしてもらっても大丈夫でしょう。
ただし無理だけはしないようお願いします。」
「分かりました。
それじゃあ俺はこれで失礼します。」
そう言ってハンガーにかけて置いた上着を羽織り…
医師に軽く一礼をしてから信が診察室を出たその直後
信のスマホから緊張感を煽るような着信音が鳴り響き――
「ッ!?」
―――これは……ecが押された時の着信音…!
――葵っ!?
信は慌てて上着のポケットからスマホを取り出すと
スマホの画面上部には赤文字で点滅しながら『EMERGENCY』の文字が流れ…
それと同時に画面中央に表示されたマップには
葵の現在位置がリアルタイムで表示さていて――
―――ッこの速度…どうやら車で移動しているようだが…
だがちょっと待て……これは――
葵のアイコンと重なるように表示されたそのアイコンを見て
信は思わず絶句した
―――このアイコンは仁の…
まさか――仁と一緒にいるのか…!?だがどうして…
ecが押された事で焦る信の脳内で…様々な嫌な想像が駆け巡る…
『俺はお前を諦める気はない。』
『あんなポッとでの弟にお前を渡す気はない。』
―――ッまさか……まさかアイツが嫉妬に駆られて葵を…?
「………
……………
……………………いや。それだけはないな。」
一瞬でも過ったその考えに信は苦笑を漏らしながら改めてスマホに視線を落とす
―――下手したら俺よりも片思い歴の長いアイツの忍耐力の強さは
俺が一番よく知ってる…
しかも報われない寂しさを紛らわすために女遊びを繰り返してた俺とは違って――
修行僧かよってくらいアイツからはそんな噂、一切聞かなかったからな…
そんな忍耐力お化けのアイツが――
今更嫉妬ごときで葵に何かするとは考えられない。
だったらこれは――
画面を見つめる信の表情が硬くなっていく…
―――この間みたく……また葵を狙った連中が葵を連れ去ったのか…?
しかし仁まで一緒にっていうのは一体どういう…
――――ッ!?
いや…、もしかしてこれは――
てっきり葵が狙われ――
仁がソレに巻き込まれたものとばかり考えていたが…
信はある重要な事を思いだし…
―――これは葵が狙われたのではなく…
仁を狙っての誘拐…?
そしてそれに何故か葵は巻き込まれ――
仁と一緒に何者かによって連れ去られたと……そういう事か…?
「ッ、」
信がその表情を強張らせ…暫く無言で画面を見つめていると
ecに追加したペアリング機能が作動し…
恐らく葵の半径一m以内にあるであろう他のスマホの情報が
次々と信のスマホに送られてきて――
―――ッ…どうやら3台のスマホとのペアリングに成功したようだな…
1つ目のこれは――仁のスマホの情報か…?
って事は仁が葵のすぐ傍にいるのは確定か…
じゃあ残り2つは…
信が他二台のスマホから送られて来た情報に目を向けると
そこにはスマホの持ち主と思われる名前が表示されてて――
「上野に――坂上…?誰だコイツ等……知らないヤツ等だが…まあいい。
とりあえずこいつ等のスマホから何か得られる情報がないかを探って――」
信が先ずは上野の携帯からその情報を探ろうと
メールなどを見ようとしたその時…
丁度信の携帯に何者かの着信が入り――
「…ッ!」
―――白井…ッ!
ピッ、
「白井…っ、テメェ…」
『若ゴメ~ンッ!!』
受話口から信の言葉を遮るように聞こえて来た白井からの謝罪に
信は思わず声を荒げる
「ッ、ごめんじゃねーよ白井っ!お前ッ……仁はどーしたっ!」
『あ…それがですねぇ……って…アレ…?その様子だともう…
何が起こったのか気づいてらっしゃる感じ?』
「…全部じゃねーがな…
葵と一緒に――何者かに連れ去られたんだろ…?仁が…」
『ッそう!そうなんですよっ!
しかもその連れ去ったヤツっていうのがなんと……
黒狼会の若頭候補…
松本 啓一(まつもと たかいち)だったんですっ!』
「………なに…?」
急に出て来た予想外な名前に、流石の信も絶句する
―――松本 啓一っていったら確か…
何者かのタレコミで――御手洗と会ってったっていう…
『しかも…!――ッて…これ…言っちゃって大丈夫かな…』
「…なんだよ…言ってみろ。」
『あ!はい…え~っとですねぇ…多分同じ苗字ってだけかもしれませんけど
松本のヤツが――
「お前を御手洗さんに渡したら――」って言ってるのが聞こえちゃって…』
「ッ、御手洗に渡す…?仁をか…?」
『えぇ……けどまあ――偶然ですよね?
昇竜会(ウチ)の現理事長…
“御手洗 壮一”がこの件に関わってるハズないですもん!
アタシったらホント…同じ苗字ってだけで聞いた時は焦っちゃいましたよぉ~
アハハ…』
「………」
『若…?』
「!あ、すまない。」
『ところで若…これからどうしましょう…?』
「う~ん…そーだなぁ……あ!ところでお前――片瀬知らないか?
葵の護衛につけていたハズなんだが…」
『え…片瀬ちゃんですか?
片瀬ちゃんならアタシの横で気を失ってますけど…』
「ッなんだと!?」
『どーやら松本のヤツにスタンガンで気絶させられたみたいなんです。
それで――葵ちゃんが人質にされちゃって…
刑事さんが松本の言う事聞かざる負えなくなっちゃって…』
「ッ…そうだったのか…」
―――ほらな?やっぱり仁が嫉妬で葵に何かするなんてあり得なかっただろ?
それどころか葵を庇って…
アイツはそういう奴なんだよ。俺とは違って正義感強くて…清廉潔白で…
ったく……一瞬でもアイツを疑った俺が馬鹿みたいだぜ…
「フッ…」
心の片隅に少しだけ残っていた蟠(わだかま)りが一瞬で解け…
信からは安堵の笑みが零れる
そこに受話口からお伺いを立てる白井の言葉が続き…
『それで――これからどうしましょう…?』
「…ん?あぁ…そうだな…
とりあえず俺も今からそのショッピングモールに向う。そこで合流しよう。」
『分かりました。』
ピッ…と通話を切ると
信は鋭い視線で前を見据えながらその場から歩き出し…
―――御手洗の件も含め……あれこれ考えるのは後だ。
今は……どうやって葵と仁を助け出すべきかを考えないと…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
170 / 200