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ショーがあるとするなら…
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「あ~……ここでジャミングかぁ……なら。」
今まで監視カメラの映像で信を乗せた車の様子を追っていた稔(みのる)が
突然砂嵐に変わった中央のモニターを見ながら少し残念そうに呟くと
キーボードに何か打ち込みながら
ついでに信のスマホに表示されているマップも確認しだし…
「どーかしたんすか?」
「…ん?いやなに……
信を乗せた車を陽炎町にある工業地帯に入ったところで
ジャミングに邪魔されて見失っちゃってね…」
「え…」
「それで今――その工業地帯一帯で使える監視カメラを確認しながら
ジャミングの出どころと範囲を予測している所なんだけど…
なるほどなるほど…」
稔はモニターに映し出される映像と――
スマホのマップを見比べながら「ふぅ~ん…なるほどねぇ~…」と呟き…
暫くして何か所かの映像を巻き戻しながらそれらを確認すると
パッとその顔を上げ――
「よし分かった!
ジャミングの出どころと範囲は大体この辺…
川原建設が所有する第一から第五倉庫がある辺りだね。
しかもその周辺で使える監視カメラの映像を今ざっと巻き戻して見てみたけど――
信を乗せた車が工業地帯を出た映像が無い…
となると信は間違いなくこの川原第一から第五まである倉庫の
いずれかに連れ込まれたって事になる訳だけど…」
稔が少し難しい顔をしながら
スマホのマップに表示されている川原第一から第五倉庫があると思われる場所を
指先でトントンと叩き…
「川原倉庫周辺のジャミングはまあ――
ジャマーを見つけ出してハッキングする事でどうにかするとして…
問題は――
第一から第五まである倉庫の内…
一体どの倉庫に信が連れ込まれたのかって話しになるんだけど…
う~ん…」
稔は更に眉間に皺を寄せ…
スマホのマップを眺めながら頬杖を突く…
すると白井が時計を見ながらある事に気づき、稔に声をかけ――
「あのぉ~…すみません若のお父さん…」
「ん…?なに?」
「今お父さんが使ってらっしゃる若のスマホ――
少しの間だけアタシに貸していただけませんか?
そのスマホからじゃないとかけられない電話があって…」
「…このスマホからじゃないとかけられない電話?
まあ別に構わないけど……一体何処にかけるんだい?」
「若が言うには連れ去られた真壁警部補のお兄さんらしいんですけど…」
「仁君のお兄さんって事はひょっとして――
誠君の事かい?」
「!ご存じなんですか?!」
「そりゃ知ってるよぉ~…
昔彼はよく仁君と一緒にウチに遊びに来てたし…
それに何より僕と彼らの父親とは腐れ縁で――
誠君が高校の頃ある事件を起こしたんだけど…
その事で父親から“ある事”頼まれて勝治郎(しょうじろう)君に――って
これは今は関係ないね。はい、コレ…」
そう言って稔は白井にスマホを渡すと
白井は戸惑いながらもスマホを受け取り…
少し緊張した面持ちでスマホの電話帳を開き始め…
「…ところで誠君に電話をかけて…一体どうするんだい?」
「手を貸してもらうんです。」
「手を?」
「はい。」
白井は何度か深呼吸をし、スマホの画面にその視線を移すと
「お宅の弟さんが大変な事に…」「いや先ずは若の代理って事伝えるのが先か…」
などとブツブツと独り言を呟き始め…
稔はそんな白井を後目に
一人パソコン画面に何かを入力しながらその口を開く
「…誠君に手を借りるったって……何をどう借りるんだい?」
「あ……これも若の考えなのですが――
仮に葵ちゃん達の居場所を特定出来たところで、相手はあの御手洗…
突入するにしろ偵察するにしろ人手がなければ救出は困難と判断した若は
それなりの人手が見込める刑事さんのお兄さんに協力を求める事にしたんです。
なんでもお兄さんは何らかの組織を持っているらしいので…」
「へぇ~…そーいや誠君――
日本に帰って来てからは賞金稼ぎとかいろいろやってるって噂で聞いてたっけ…」
稔は川原倉庫周辺にあるであろうジャマーの場所を探りながら
ふとある事を考え…
―――人手――人手か……ん…?ちょっと待てよ…?
これは――使えるのでは?
「ねぇ…白井君…
そのスマホ――もう一回僕に貸して?」
「えっ…でも電話――」
「いいから!その電話――僕からかけたげるから。」
「え…」
「協力を頼むんだろう?だったら誠君を知らないキミがかけるよりかは――
知り合いである僕がかけたほうが話がスムーズに纏まると思うんだ。
だからホラ…」
そう言って稔は白井に手を差し出すと
白井は「そう…かな……そう――かも…」と呟きながら
躊躇いがちにスマホを稔に渡し…
「…ん。ありがと。
ところで――誠君の番号は何処に…」
「あ!それならココの――“葵(偽)”です。」
「………なんで葵(偽)?」
「それは――」
「まあ…いいよ。それより今は優先しない事があるからね。
さて…それじゃあ――」
稔は早速電話帳の葵(偽)をタップする…
すると3コール目で電話は繋がり――
『おう!どしたぁ~?信…
俺になんか用――』
「やあ、久しぶりだね誠君。元気してた?」
『………誰だテメェ…』
思っていた人物と違う人物が電話に出たことに
通話相手の声色が一気に強張るが――
稔は悪びれもせず話を続け…
「…あ!やっぱりもう忘れちゃった?
そりゃそうだよね~…なんたって誠君の偽装IDを作った日以来だもん…
何年ぶり?7,8年?いや、それよりももっとかな…」
『ッ!?まっ……まさか…?』
「いやぁ~…あの時は大変だったよねぇ~…
でも相手は死んでなかったんだし…そこまでする必要は――」
『ッもしかして……みのるさん――ですか…?』
「!そう!思い出してくれた!?良かったぁ~…」
『ッ稔さんが何故この電話に…』
「ん~…今はそんな事より――誠君に頼みがあって…」
『た…頼みたい事…?』
「そう…」
稔の声のトーンが一気に下がる…
「実はさぁ……仁君と葵君が御手洗ってヤツに連れ去られちゃって…」
『――――ッ!?』
「それでさぁ……
ウチの信が――二人を助ける為に単身で御手洗の元に向ったんだけど…
途中――ジャミングに邪魔されて信の行方を見失っちゃってさぁ…
そこでなんだけど…」
『………』
受話口からは微かに息を呑む音が聞こえ…
稔は相手の緊張感を感じながら静かに言葉を続ける…
「誠君に――今すぐ動かせる人員を10名ほど貸してもらいたいんだけど…
ダメかな…?」
『え……今すぐに…ですか…?』
「そう…」
『………』
「誠君?」
『…分かりました。
元はと言えば俺のせいですし……10名くらいなら何時でも貸せます。』
「!そいつは良かった…!」
『――で。その10名をどうすれば?』
「それじゃあ――早速なんだけどその10名を今すぐ
陽炎町にある川原第一から第五まである倉庫に
“偵察としてこっそり”と向わせて欲しい…」
『偵察……ですか?』
「そう…」
稔は未だジャミングで映像が見られない倉庫周辺の様子に顔を顰めると
そのもどかしさに微かに舌打ちをし…
「本当は――僕がジャマーをさっさとどうにか出来たのなら
君の手を煩わせることもなかったんだろうけど…
生憎――まだジャマーの位置すら特定できなくてね…
そこで今言った10名には直接川原倉庫に向ってもらい――
人の出入りを確認してもらいたいんだ。」
『人の出入りって……倉庫の?』
「そう。ねぇ白井君。」
「ッ!はい、なんでしょう…?」
「信は今日――御手洗の言いなりで“ショー”とやらに出るらしいね?」
「…アタシはそう聞きましたけど…それが何か…?」
「いや……ちょっと確認したくて…
今の聞いた?誠君…」
『…聞きました。』
「それでね?僕が言いたいのは…」
『いえ…今ので大体察しました。
要するに稔さんが言いたいのは――
仁と信が連れ去られたのは川原第一から第五まである倉庫のいずれかで…
ジャミングのせいで仁達が捕まっている倉庫がその“どれか”までは
特定出来ないから――
人の出入りを確認してもらい…
その“ショーとやらが行われる倉庫”がどれなのかを探って欲しいと…
つまりはそういう事ですね?』
「さっすが誠君!話が早い!」
『…一応――人探しのプロなんで…』
「じゃあもう――僕が言いたい事は分かるね?
ショーがあるとするなら当然――その倉庫の人の出入りも激しいハズ…
もう余り時間がない…
今すぐその10人を現地に送って――
僕に倉庫の様子を教えてもらいたいんだ。…やってくれるかい?」
『勿論。
ほかならぬ貴方の頼みとあらば…』
「…頼んだよ。」
そう言うと…
稔は険しい表情のまま通話を切った…
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