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離れ離れ…そして…
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バチバチバチバチィィーーッッ!!!
「ッ…、」
信が洗面器に投げ入れたドライヤーが凄まじい火花と共に洗面器の中で暴れ狂い…
その拍子に洗面器の中の水もボコボコと泡立ち…水飛沫を飛び散らしながら踊り狂う…
ものの数秒――
火花と水の狂乱の後に
バシュウゥゥゥウウゥゥ…ンン……
という音と共に辺りは暗闇に包まれ…
「ッの……のぼる…?
急に電気が――」
「…!葵か!?心配するな葵!すぐに元に戻るから…」
ドアの向こう側から葵の不安と心配が入り混じった声が聞こえ…
すぐに葵の元に駆け寄りたいのをグッと堪えながら信が暫く暗闇と静寂の中
辺りの様子を伺う…
すると電気が消えてから一分もしないうちにパッ!と
辺りの照明器具に再び明かりが灯り――
―――チッ…もう予備の電源が作動したか…
思ったより早かったな。
だがコレで――
「ッ信…っ!」
ガチャッ!と浴室のドアが勢いよく開き…
青い顔をした葵が半分涙目で浴室に飛び込むと――
そこには手にビチャビチャと水を滴らせるドライヤーを持った信が
申し訳なさそうな苦笑を浮かべながら洗面台の前に立っていて…
「ッ…何かあったの?信…
浴室から物凄い音がして――その後すぐ停電になったみたいだけど…」
「ああ……アレな?
アレは俺がちょっとしたヘマをして――」
信が何故か濡れている頭をポリポリと掻き…
未だ水の滴るドライヤーを洗面台の横に置いたその時
浴室のドアが再びバンッ!!という激しい音を立てて開き――
葵が驚きながら慌てて信の傍に駆け寄り、その背後に隠れると…
浴室に入ってきた男がパウダールームを見渡しながら、その口を開き…
「……何事ですか…?若頭…
この部屋から電圧の異常を検知したのですが…」
「…御手洗か……いやなに――
ちょっとイラついてたんで頭に水でも被って――んで。
ドライヤーで濡れた髪乾かそうとしてたら
誤って水張った洗面器の中にドライヤーを落っことしちまってな。
――で。ご覧のありさまってワケよ…」
信が洗面台横に置いたドライヤーのコードを指先で摘まみ上げ
ポタポタと水が滴り落ちるドライヤーを御手洗に見せつける…
すると御手洗はマスクで顔は見えないが――
呆れた様子でその口を開き…
「これはまた――随分と派手に水没させたみたいですね…」
「そりゃあもう――
落ちた瞬間を動画で撮ってたらインスタで映えそうなくらいにはな…」
信は悪びれる様子もなく
もうウンともスンとも言わなくなったドライヤーの電源をカチカチと押してみせ…
「悪ぃな御手洗…
ドライヤー…壊しちまって…」
「…いえ……お気になさらず。」
御手洗が微笑みを浮かべたまま、微かに「チッ、」と舌打ちをしたその時
黒服の男が御手洗の背後に近づき……御手洗に何かを耳打ちすると――
御手洗は少し驚いた素振りを見せ…
「ッなんだと…?それは本当か…?」
「…はい。数秒間ですが…
コチラ側の情報が外部に漏れた可能性が…」
「………」
「如何なさいましょう。」
「…数秒だけなら大した被害はないでしょうが――念の為…
一階の見張りと警備の数を増やし、不審者が現れたらすぐに報告を…
それとこれからショーを見にやって来るお客様には身分証の確認と
持ち物検査を徹底するよう、ゲートキーパーに伝えておくように…」
「…わかりました。」
「それにしても………やってくれましたねぇ……若頭…」
「…?何の事だ??」
「フッ……とぼける気ですか?まあいいでしょう…
貴方の狙いが何にせよ――
それが実を結ぶことはありませんから…
残念でしたね。若頭…」
「………」
御手洗はそのでっぷりとした顎肉を擦り…
パウダールームの惨状を見回しながら暫し何かを考え込む素振りを見せると――
不意にその口元を歪に歪ませながら笑みを浮かべ…
「しかし……こんな騒ぎを起こされてはコチラとしてもこれ以上――
若頭を甘やかしておくわけにはいきませんな…
…ですので―――おい。」
「ッ…!?」
御手洗の合図と共に…
後ろに控えていた4,5人の黒服たちが一斉に警棒を携え
御手洗の前に並び…
「…もう十分――感動の再開は味わったでしょう…?
ですのでお二人にはこれから別々の部屋に移動して頂き…
ショーが始まるまでの間――大人しくしていただきましょうか。」
「ッ!?俺達を引き離す気かっ?!そんな事俺が許すワケ――」
「…別に抵抗してもらっても構いませんよ?
この人数を相手に……
後ろのお姫様を守りながら戦う自信があるのでしたら――ですけど…」
「ッ…のぼる…、」
「くッ…」
御手洗の言葉に…
一瞬抵抗する素振りを見せようとしていた信だったが――
自分の後ろに立つ葵に目をやると…握りしめた拳を解き…
―――駄目だ……
流石にこの狭いパウダールームでこの人数相手に葵を守りながら戦うなんて
今の俺には…っ、
「ッ……分かった。お前に従う。」
「信!?ヤダよ俺…っ、
信と離れるなんて――」
「フフッ……随分と物分かりが良いようで安心しましたよ。若頭…」
「ッただし……葵に何かしたら――」
「そこは電話でも申し上げました通り、お約束しますよ。
貴方が私の言う事を聞いているうちは――
決して弟君(おとうとぎみ)には手を出さないと…」
「…本当だろうな。」
「ええ……勿論ですよ。
おい、お前達。彼らを丁重に別々の部屋にお連れしろ。」
「…分かりました。」
「ッヤダよ信っ!俺…離れたくない!!」
「ッ…すまない葵……今は大人しく従ってくれ…
必ず俺がお前を……助けに行くから…」
「っのぼる…」
「さあ!早く二人を別室へ…
あ!そうだ若頭…」
「…?」
御手洗が今丁度黒服の男から両手首に手錠をはめられた信に近づくと
その耳元で耳打ちをし…
「…今――ショーを盛り上げるための前座が行われているのですが…
ご覧になりますか…?」
「…何でそんな事を俺に聞く?」
「ンフフッ……いえ――
貴方は今日行われるショーの主役ですし…
ショーの趣旨を理解する為にも“前座”を見ておくのも悪くはないかと思いまして…」
御手洗の醜い笑みがより一層深くなる…
「…どうします…?
ご覧になられますか…?」
信は御手洗の笑みと言葉に多少の引っ掛かりを覚えるものの――
―――施設の構造をより知る為にも…
ここは一つ…御手洗の誘いに乗っておいた方が…
「…分かった。見せてもらおうじゃないか…
その“前座”ってやつを…」
「…そうですか…フフ…
ならまずは――準備をしないと…」
そう言うと御手洗は――
これ以上ない程の醜い笑みを信に見せた…
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