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宗旨替えするほどに…
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「!落としましたよ?!ペットボトル…」
「あっ…わりぃ…っ、」
加納が口元から垂れてしまった水を手の甲で拭いながら
もうほとんど水の入っていないペットボトルを拾い上げると
近くのサイドテーブルにソレを置き…
代わりにサイドテーブルに置かれていたティッシュを何枚か引き抜くと――
内心の動揺を押さえながらベッドに座ったまま
絨毯に浸みた水をティッシュにポンポンと吸わせ始め…
―――おいおいおいおいマジか…
ティッシュはすぐに水を吸い込んでベチョベチョになり…
加納は再びティッシュを何枚か引き抜くと、再び絨毯の水を吸わせ始める
―――アイツ――女が好きなんじゃなかったのかよっ?!
現に好きだった女殺されて……復讐するって息巻いてたし…
それに何より一時期自棄(やけ)になっていた時なんて
クラブで毎晩違う女たちと遊び明かしたりもしてたじゃねーか!
それなのにアイツ――
男もイケたとか……聞いてねーぞ…そんなの…
「………」
加納が妙な気分になりながらベチョベチョになったティッシュの代わりに
再び別のティッシュを引き抜こうとしたその時
いつの間にかベッドからいなくなっていた葵が
近くに設置したあったチェストを漁ったのか
2枚のタオルを手に、加納の元へと戻り――
「やっぱりティッシュじゃダメですよ。…はい、コレ。」
「お…おうっ!わざわざ気が利くな!サンキュー葵さん…」
「いえ…」
動揺を隠しきれない加納は、引きつった笑顔で葵からタオルを受け取ると――
再び葵と一緒にタオルで絨毯から水分を吸い取っていき…
―――少なくとも俺が御手洗に捕まる前は、女好きだと思ってたんだがな。
信の奴…
この数年で宗旨替えしたのか…?
そんな事って…
加納がチラリと葵の方に目をやる。
すると垂れてくる前髪の一房を
耳の所で片手で押さえながら下を向く葵の横顔が目に入り…
「………」
―――けどまあ…
こんだけ綺麗なら――
アイツが男に宗旨替えしちまうのも分かる気が…
加納が葵の横顔に見惚れていると
不意に加納の方を向いた葵とバッチリ目が合い…
「…?何か…」
「ッ!いやぁ~…その…
あっ!そうだ!お前さんに――俺の自己紹介をしていなかったな。
俺の名前は加納 輝彦(かのう てるひこ)っていうんだが――
お前さん――信の恋人なら俺について何か信から聞いた事は…」
「…ごめんなさい……聞いた事ないです…」
「………そうか。」
―――そりゃそうだよなぁ…
三年も前に行方不明になった男の事なんて
いちいち気にしてるワケねーもんな…
何を期待してたんだ?俺は…
葵の言葉に加納は少し自嘲気味な笑みを浮かべると
再びタオルで終端を拭い始める…
すると突然部屋のドアがガチャッと開き――
「!あっ…、」
「…御手洗さんがお呼びだ。
――おい、そいつを捕まえろ。」
「…アレ…?2人いますけど――どちらを?」
「…そのベビードールを着た方をだ。」
「…分かりました。」
「ッ、何なんだお前達は…!」
開いたドアから3人の黒いスーツを着た男達が部屋の中へと入って来ると
葵は慌ててその場から逃げようとするが一歩及ばず…
そのまま近づいてきた2人の男達によって、葵は腕を拘束されてしまい…
「ッ、嫌だっ!離してっ!!」
「ッ…止めろっ!」
その様子を見ていた加納が咄嗟に止めに入ろうと
ベッドから立ち上がろうとするが――
やはり足腰に力が入らず…
加納はそのままベッドから転がり落ちてしまい…
「くっ、」
「やだっ、、離して嫌だっ!」
「こらっ!暴れんなっ!」
「…何をぐずぐずしている。さっさとそいつを連れてこい。」
「嫌だ…っ、加納さん…!」
2人の男に引きずられるようにして歩かされている葵が
助けを求める様に加納の名を呼ぶ…
すると何とかその場からヨロヨロと立ち上がった加納が
3人の男達を睨みつけながらその口を開き…
「ッ止めろテメェら…!その子をどうする気だ!?」
「…さあ…?我々はショーが始めるまでに…
御手洗さんからコイツをコロシアムに連れて来るよう――頼まれただけだ。
ホラ、さっさと行くぞ。」
「ッ、嫌だッ…行きたくない…!加納さん…っ!」
「待て…っ!」
加納が男達に連れて行かれようとする葵を追おうとするが――
力の入らない足はもつれ…
葵を追うどころか、そこから一歩も動く事が出来ないまま
加納はその場で膝をついてしまい…
無情にも葵は加納が見ている目の前で、男達によって部屋から連れていかれ――
「ッ、クソッ…!」
加納は何もできなかった自分に腹が立ち…
苛立ち紛れに床を拳で殴ると――
虚無感に苛まれながら、震える自分の拳を見つめ…
―――ッ、惨めすぎんだろ自分…
あの子をみすみす連れて行かれるだなんて…!
加納はギリッ…と奥歯を噛みしめながら、拳を握り締める
―――それにしても御手洗のヤツ…
あの子を一体どうする気――
「――ッ!そうか…!」
加納はある事に気がつくと、ハッとしたようにその顔を上げ――
―――そんな事……考えるまでもないじゃないか!
あの子は信に言う事を聞かせるために御手洗が連れて来た人質…
そして今晩行われるショーの主演は信…
ショーが行われるコロシアムに御手洗があの子を呼んだという事は――
ショーで信に言う事を聞かせるために、あの子を利用する気だ…!
「不味いな…」
加納は再び気力を振り絞り、その場から立ち上がると
部屋の中を見回し始め…
―――あの子が御手洗に捕まっているうちは――
信は御手洗の言いなりになっちまう…!
何とかして――
あの子を御手洗から助け出さないと…!
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