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破れない約束。
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―――右腕……逝ったかもしれん…
熱を持ちながらドクドクと脈打ち…
微かに腫れた右前腕部分を確かめる様に擦りながら信は仁を見据え…
―――この感じ……骨は折れてないにしろヒビは入ってる。
学生の頃二度ほど経験したからな……間違いない。
しかしどうする…
これじゃ右腕は使い物にはならないし…
かといって左腕一本で相手するには余りにも分が――
「のぼるぅ~…」
「ッ…!」
信が右腕に気を取られていたほんの僅かな時間…
仁がその顔に不気味な笑みを貼り付けながら
ゆっくりと信の方に迫って来ていて…
「くッ…」
―――マズイ…
焦る信が後退りながら辺りにその視線を向ける…
すると檻の外で二人の男達に押さえつけられながらも
信の方に駆け寄ろうとしてるのか
その場から身を捩って立ち上がろうとしている葵の姿が目に入り…
―――ッ葵……そうだ…
信は押さえていた右腕から手を離し…
再びその視線を仁に戻すと
気持ちを落ち着かせるためにフゥー…と小さく息を吐き…
―――今の俺に出来る事……それは――
葵の為の時間稼ぎ。
「う”うぅ…、おれの……
おま、えは…、俺の…っ、」
「………」
ジリジリと近づき…
いつ飛びかかって来るかも分からない仁を前に
信は左手のみで身構えながら仁を見据える…
―――その為なら俺はどうなっても構わない…
いや、むしろその為に此処に来たんだ。
例え今日助けが来なかったとしても…
俺がショーをやり遂げる事で葵を守る事が出来るのなら
俺は――
「の”ぉぼるぅう”ううぅう”うッッ!!!」
「ッ!」
自分に向って手を伸ばしながら再び掴みかかって来た仁を
信はその身をサッと横に逸らしてかわし…
そのまま勢い余って自分の横を通り過ぎて行く仁の背中に
信は振り向きざま思い切り左肘を突き入れ――
「なんだってやってやるッ!」
「う”ぐうぅ”ッ、」
信の突きを食らい…
普通ならそのまま床に倒れてもおかしくないハズなのに――
仁はそれに耐えると、再びゆっくりと信の方を振り向き…
「ッ…タフ過ぎんだろ…」
―――そう……なんだってやってやるさ…
お前の為ならなんだって…
葵…!
「ッ…」
信は振り向いた仁に追撃の一撃を加える為に
その横っ面目掛けパンチを繰り出す
しかし…
「ッ!?」
仁の鋭い視線が信を捉えた次の瞬間――
仁はその繰り出されたパンチを片手でパシィッ!と払いのけると
凄まじい速さで今日抜糸をし終えたばかりの信の脇腹にある手術痕目掛け…
思い切りその拳を叩き込み――
「がッ、、はっ、」
―――やっ……べ、
殴られた脇腹を押さえ…
信がヨロヨロと数歩後ずさった後に、脇腹を押さえていた掌を見てみると
そこにはベッタリと血で濡れる掌が見え…
「チッ…」
―――傷口が…っ、
信は再び脇腹を押さえ…その視線を仁に向けようとしたその時
伸びて来た仁の手が信の首を掴むと
そのまま信を後ろへと引き倒し――
「がはッ…、ぐッ、」
その衝撃で後頭部を床に強く打ち付け…
信は呼吸がままならない状態で
それでも必死に自分の首を掴む仁の腕を左手で掴むと――
揺れてぼやける視界の中で…
信はその視線を檻の外にいる葵に向け…
「ッ…あ…おい…、」
「………ッ!」
信と葵の視線が交わり…
葵はその涙で濡れる瞳を大きく見開きながらただ信のみを見つめ――
信はそんな葵を見つめながら微かに震える唇を噛みしめる…
―――別に……抱かれるのは何とも思わない…
ただ…
そんなみっともない俺の姿を
葵に見られるのだけは――
「み…るなっ……あおい…っ、
見ないでくれ…っ!」
―――頼むから…
「――ッ!!
う”ーうっ…、ん”うン”ーーーッッ!!!」
そんな信の呟きなど…この大歓声の中では葵に届く筈もなく…
それよりも葵はただ自分の目の前で弱っていく信を何とかしたくて
より一層暴れ始め――
「うヴぅーっ!ん”ぅうーーッ!!」
「…さっきから騒がしいですねぇ…
ちょっと猿轡を外してやりなさい。」
「はっ、」
「プハッ、、のぼるッ……信ぅーーッ!!」
「…煩いですよ?少し黙ったらどうです?」
御手洗が冷めた目で床に押さえつけられている葵を見下ろす…
すると葵は男二人に押さえつけられながらも
縋るような眼差しで御手洗を見つめながら哀願し始め…
「ッお願い…止めさせてっ!
信…お腹から血が出てる…!これ以上やったら信が死んじゃう…っ!
今すぐ止めさせてっ!!」
「フッ…あのくらいでは死にはしませんよ。
むしろこれくらいの流血があった方がショーが盛り上がるというものです。
わかったらそこで大人しくしていなさい。」
「っそんな…、お願い止めさせてっ!ショーなら俺が代わりに出るから!
俺が信の代わりにひとくんに殴られるなり何なりするから…っ!
だからお願い…!止めさせてよ…!」
御手洗の足に縋りつき…
葵は恥も外聞もなく泣きながら哀願するが――
そんな葵を御手洗は興味なさげに一瞥すると…
一つ溜息を吐きながら口を開き…
「駄目だと言ってるでしょう…?
大体――貴方みたいな華奢な子がショーに出たところで…
あの刑事のパンチに耐えられるワケがないでしょう…?
せいぜい一発食らってそのままお陀仏か――
運が良くて気絶してその場を白けさせるのがオチです。諦めなさい。」
「ッでも――」
「それにどのみち若頭との約束もありますし…
貴方を危険な目に遭わせる訳にはいかないんですよ。分かりましたか?」
「ッ…わかんないよっ……そんなの…
だったらそんな約束なんて破れば――」
「…馬鹿言っちゃいけねぇよ…?お嬢さん…」
「…ッ!?」
突然声色と口調が変わった御手洗に驚き、葵が御手洗を見上げると
仮面から覗く御手洗の瞳はより一層冷たさが増していて…
「おっと失礼……意外と思われるかもしれませんが――
私は約束を守る男なんでね…
相手が私と交わした約束を破らない限り、私も破らないんです…
今までそうやって私は“この世界”を生きて来たんでね…
ですので――
今こうして若頭が私(わたくし)との約束を守っている以上…
私も守らざる負えないんですよ。理解して下さい。」
「ッそんな…」
―――俺の事を盾に信を脅しておいてよく言うよ…っ!
「そんな事より………御覧なさい?」
「ッ…?」
御手洗に促されるまま――葵がコロシアムに目を向けると…
そこには暴れる信を組み敷きながら
仁が信の唇を無理矢理奪っている最中で――
「ッ、信…ッ!」
「さぁ……いよいよ――
若頭もその処女を散らす時が来たようですね…」
御手洗はそう言うと…
オペラグラスを目元に運びながらニンマリとその口元を歪めた…
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