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正体。
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「~~~ッ!~~、~~…ッ!?」
「……、……」
―――…?なんだ…?
真っ暗闇の中…
誰かの話し声が近くで聞こえ――
判然としない信の意識はそちらに向う…
「、し…がめざ…ったら、ひとくんの…いだからねっ!」
「そ…事に関し…は、…ていしない。」
「ひて…しないっ…なにっ?!
大体ひとくんが――」
「………うるせえなぁ…」
「――ッ!?信ッ!!」
まだぼんやりとする意識の中で…
信が薄っすらとその目蓋を開けると
目の前には泣きそうな顔をした葵が、心配そうに信の顔を覗き込んでいて…
「………あおい…?」
「っそう……そうだよ!
良かった…っ、信が目を覚ましてくれて…ッ!」
そう言って葵は信が横になるベッドの傍で膝をつくと
心底ホっとした様子で微笑みながら、信の左手を両手で握りしめ…
「ッ本当に良かった…」
「葵…」
信が無意識に右手で葵の頭に触ろうとするが――
右腕はギブスで固定されていて、触る事が出来なくて…
―――あぁ…そうか……俺――
「…信。」
「!仁…」
信が横になったまま視線だけを動かし
葵の一歩後ろにいる仁の方に目を向けると
水色の病衣(びょうい)を着た仁が
少し眉尻を下げた情けない顔をして信の事を見つめていて…
―――…ま~た困ったときのコタローみたいな顔しやがって…
「…そんな顔すんな。卑怯だぞ…」
「すまない…」
「――で…?俺はあれからどれくらい眠ってた?」
「そうだな……お前が倒れてから丸一日と言ったところか。」
「そんなに…」
信は小さくそう呟くと、呆然とした様子で天井を見つめる…
するとそこでふとある事を思いだし――
「ッ!そうだ御手洗――
い”ッ…、つつ…、」
「ッ!?まだ起きちゃ駄目だよ信っ!
また傷口が開いちゃう…!」
慌てる葵の制止を聞かず――
信は不自由な身体でベッドから飛び起きるが、左脇腹に鋭い痛みを覚え…
堪らず脇腹を押さえながらその場で蹲るも
それでも険しい表情で視線を仁に向けながら言葉を続け…
「ッ…どうなった…?アイツ…」
「…逃げられた。」
「チッ…」
「だが兄貴が後を追っているらしい。」
「兄貴って……誠さんが?」
「ああ……どうやら例の脱出路は川原第四倉庫から
他の第一から第三ある全ての倉庫に繋がっていたらしく…
念のため全ての倉庫に見張りをつけていた兄貴の部下が
第一倉庫から車で逃げだす御手洗達を見つけ――
それで今、ヤツの後を追っているんだとか。」
「ッそうか…
賞金稼ぎやってる誠さんなら――
まず奴を逃がすことはないだろう…」
信は蹲っていた上体を起こし
ベッドの背もたれに寄りかかりながら安心したようにフゥ~…っと一息つく…
すると仁か若干言い辛そうに口を開き…
「…信。」
「何だよ…」
「今ちょっと話せるか…?
二人っきりで…」
「…?別に構わないが――」
「ッ!?駄目っ!そんなの絶対にダメだよ信っ!!」
「葵…?」
「だってひとくんのせいで信が大怪我したんだよッ?!
そんなの許せるワケ――」
「葵。」
「ッ……なに…?信…」
「あの時俺に怪我させた仁が正気じゃなかったことくらい……
お前にも解るだろう…?」
「ッそれは――
わかるけどさ…」
「それに俺も仁に話があるし……ダメか…?」
「っダメかって…
そんな事信に言われたら…、」
葵が自分の背後にいる仁にじっとりとした眼差しを向け…
やがて諦めたかのように小さく溜息を吐くと
渋々言葉を続ける
「ハァ~……わかったよ。
俺、席外すから……ひとくんと二人で話しなよ。」
「!ありがとう。葵…」
「っその代わり!後で俺のお願い……聞いてくれる?」
「お願い…?」
「そう!………ダメ?」
「別に構わんが…」
「ホントに!?やったぁ~!
それじゃあ俺…病室の外にいるね?
ひとくん……信に変な事しないでよ…?じゃあね。」
そう言って仁に釘を刺すと、葵は上機嫌で部屋を後にし…
それを見送った信がドアの方を見つめたまま静かに口を開いた
「………で?話ってのは何だ?」
「ッそれより……怪我の具合はどうだ…?」
「…あ?んなもん大したこたねーよ。
また縫い直した傷口が引きつってチクチクするくらいで…
あ、あとそれと――」
「…?」
信がガーゼの貼られた首筋を左手で押さえ…
「お前に噛まれたところがまだ少し……ズキズキと疼くくらいか…」
「ッ!」
「まさかお前に――
噛み癖があったとはな。」
「ッ、それは――」
仁の脳裏にあの時の事が過り…
信の肩に噛みついた時の、あの硬くて男らしい…しなやかな筋肉に――
それでいて舌先で感じた滑らかな肌の感触や汗の味…
首筋に噛みついた時の信の荒い息遣いや呻き声に興奮してしまってた事を
思い出してしまい…
「ッ…、」
「仁…?」
「――あ!?いや、その…ッ、
…悪かったな。噛みついたりして…」
「フッ…別に良いって。
どうせこの噛み痕も――すぐに消えるだろうし…」
「ッ!消えてしまうのか…」
「あったりまえだろ~?
…ってか何お前…残念がってんだよ…」
「ッ…別に。」
「ふぅ~ん……まあいいさ…
それより話ってのは何だ?」
「…それなんだが――」
仁が今は病衣の下で隠れて見えない信の左肩にチラリとその視線を向け…
やがて一瞬その瞳を切な気に揺らすと――
意を決したようにその表情を険しくしながら重々しくその口を開いた…
「…信。」
「…何だよ。」
「お前だったんだな。」
「だから何が――」
「…今まで警察がいくら躍起になって探っても
中々尻尾を掴むことの出来なかった昇竜会の№2…
“隠匿された若頭”ってのはお前の事だったんだな。
―――信。」
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