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(13)勇サイド
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俺はあいつのことが気に入らなかった。
会長として学園を束ねる気がないんじゃないかと思うような態度。
毎日授業が終わればすぐ帰宅するところ。
仕事をしてないんじゃないかと言う疑問はしぜんとこたえとなっていく。
本人には聞いたことはなかったがあいつの態度からして何もかも仲間に任せているのだろうと勝手に思っていたのだ
だから生徒会のメンバーが転校生と問題を起こした事はかなりいい誤算だった。
今まで決定的なものがなく中々生徒会に強く発言することができなかったがこれがきっかけで問い詰めることができる。
そう思っていた。
あいつに散々酷い言葉を吐いた。
けれどあいつは何も言い返さなかった。
俺はあいつに吐いた言葉を後悔した。
赤峰の弟が来た時はとても驚いた。
あいつに弟なんているとは思わなかったし世話を焼けるような性格にも見えなかったからだ。
赤峰の弟は赤峰が忘れてしまった書類を届けに来たのだ。
それを聞いた時にサッと血の気が引いた。
赤峰は俺らが見たことのないような優しい顔で弟を宥めていた。
普段のあいつからは想像できないような口調。
今までのあいつの姿が崩れていく。
優しく弟を抱きしめて撫でている。
笑って弟に手を振るあいつ。
知らない。
あいつのあんな顔知らない。
あんなふうに可愛らしく笑うあいつを俺は見たことがなかった。
俺は。
俺は。
あいつのことを何も知らなかった。
寝ずに書類を片付けていたことなんて知らない。
真面目にこいつが働いていたことも知らなかった。
罪悪感で胸が押しつぶされそうになる。
俺があいつに謝罪をしても文句を言われることなく別にいいの一言で終わってしまった。
文句や嫌味を言われた方が楽だった。
初めてこんな気持ちになる。
赤峰は忘れろと言った。
だがあの口調本あの優しそうな声も笑うと可愛いところも何より弟を見つめているときのあいつのあの顔を忘れることなんでできない。
「忘れることなんでできるか」
俺はポツリと呟いた。
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